• ホーム
  • 入会案内
  • 規約
  • 運営委員構成
  • 関連企業団体
  • お問い合わせ

投稿記事

ぶんせき誌への活動紹介の投稿記事

第24回ガスクロマトグラフィー研究懇談会「キャピラリーガスクロマトグラフィー講習会」開催報告

GC研究懇談会では年次活動の一つとして、キャピラリーGC分析に携わられる方に対し分析技術を習得いただくための基礎講習である「キャピラリーガスクロマトグラフィー講習会(以下CGC講習会)」を実施しております。今年も麻布大学のご厚意で実習会場を提供いただき、8月1日(水)~3日(金)に開催いたしました。

CGC講習会は、「基礎と応用(アプリケーション)」をテーマにキャピラリーガスクロマトグラフィーの基礎項目についての講義と、基礎技術及び実際のアプリケーション実習で構成されます。今回のアプリケーション実習では、近年様々な業界で関心の高まっている「匂い・異臭」をテーマとし、前処理から試料導入、分離、検出と体得いただけるプログラムで開催いたしました。

24回目となる今年は、初日の講義のみに参加された方が5名、実習もあわせて3日間参加された方が19名と、総数24名に受講いただきました。昨年から始めた学生が参加しやすい仕組みも効果を発揮して参加者が増加いたしました。 初日の講義では、保母先生による基礎理論に続き、各委員より分離、試料導入、検出器、GC/MSおよびマススペクトル解析について講演いただきました。副読本として配布いたしました「役に立つガスクロ分析」も参考に、二日目以降の実習に即した内容で行われました。

二日目からは4グループに分かれ、試料注入法、分離の最適化、異なる検出器での異臭成分測定、およびGC/MSによる異臭成分測定について実習を行いました。最近では機器の自動化も進み、注入操作の経験のない方も多数いらっしゃいましたが、基本操作を体験いただくことで一層理解も深まると考え、マイクロシリンジおよびガスタイトシリンジによるマニュアル注入にもトライしていただきました。「自動化」や「省力化」は、これまでも、これからもニーズが高まることは間違いありませんが、機器を正しく取り扱う上で装置がブラックボックス化してしまうのは必ずしも好ましいことではないと考えます。きちんと仕組みを理解した上でより的確な分析を行っていただく意味でも、参加者各位には貴重な経験となったかと思います。

GC懇としては、今後もこの講習会を継続し、GC分析技術の展開と発展を目指したいと考えております。 今回も定期試験中でご多忙の中、麻布大学の高木先生、杉田先生、久松先生には会場準備から各種手配、実施までご尽力いただき、誠にありがとうございました。また、講習会のアレンジをしていただいた杉田先生、講義と実習を担当して頂いた運営委員並びに講師派遣と機材提供頂いた企業の方々の協力に感謝いたします。今回は異常ともいえる猛暑の中、遠方からも多数参加いただけたことに感謝申し上げます。

ガスクロマトグラフィー研究懇談会副委員長
アジレント・テクノロジー(株) 川上 肇

 

 

第358回ガスクロマトグラフィー研究会 講演会・見学会開催報告ー(一社) 日本海事検定協会ー

 今年の研究会/見学会は,一般社団法人日本海事検定協会で開催された。梅雨明けの猛暑にも関わらず,およそ60名の方の参加があった。今回、見学させていただいた一般社団法人日本海事検定協会 分析センターは、横浜市の南端である金沢区に位置し,協会創立100周年記念事業の一環として2014年に新築され,輸出入に係る通関分析をはじめとする検査検定,異物分析,科学的手法を用いたトラブル原因調査,食品中の残留農薬試験や遺伝子検査,衛生ロスプリベンション(衛生管理によるリスクの排除)まで幅広く行っており,普段経験できないような話を聞くことができた。

 講演の部では,藤井健二氏から「ガソリン成分の分析における国内・海外規格の比較」の発表があった。日本は燃料の多くを海外に依存するため,成分の分析は非常に重要であり、ガソリンは200種類以上の炭化水素の混合物であることから,全成分分析に100mの無極性カラムを用いて,1検体3時間かけて分離分析していることに感銘を受けた。軽油中のオレフィンや芳香族炭化水素の分析には,移動相として二酸化炭素を用いた超臨界流体クロマトグラフィーを用いており、最先端のクロマトグラフ手法ルーチンワークに取り入れている高い技術力を感じた。

 引き続き山口範章氏より,「燃料電池自動車の水素燃料規格分析」の講演があった。すでに燃料電池自動車は販売されており,水素はクリーンで環境に優しいガスとして近年注目されている。燃料電池自動車は一回の充填で750kmの航続距離があり、ガソリン車に匹敵する。水素を充填するステーションは現在100ヶ所ほどが日本各地に設置されており,今後さらに多くの充填所の建設が予定されているということであった。水素は様々な方法から工業的に生産されており,99.97%という非常に高い純度が要求されている。このような水素規格を満たしていることを証明するためにも,ガスクロマトグラフィーが役に立っていることもわかった。

 三題目の講演は池谷千栄子氏から,「ガスクロマトグラフィー/安定同位体質量分析計の利用例」と題して,安定同位体分析の食品への応用に関する講演があった。植物の種類により光合成の代謝系において炭素の安定同位体比に違いが生じることから,日本酒に米以外の原料から醸造されたアルコールが添加されたかを同位体分析で判別することができる。この方法を用いると落花生の産地判別などにも応用することができるため,私たちの身近な食品の産地偽装の解明にも一役買っているとの報告があった。

 最後は人見朋子氏による,「GCxGCの分析事例,科学的手法によるトラブル原因調査」の講演であった。スラッジを生成し易い燃料油に含まれる高分子化合物の分子量分布を電界脱離イオン化法によるGCxGC-TOF/MSで測定することで,燃料油によるスラッジ生成特性を明らかにし,さらに原油の分析にも応用していた。また様々なトラブルに対する受託分析も行っており,例えば脱税目的の不正軽油の鑑定,あるいは食品の異物分析による食の安心安全にも大きく貢献されていることが判った。

 講演の後は,安全と利便性を第一に設計された最新の施設を各班に分かれて見学させていただいた。廊下からガラス窓を通して実験室を常時見学することができる構造になっており,開かれた試験所であることがわかった。また,廊下は大型装置の搬入を考慮し幅広く設計され,実験室は自然光を取り込み閉鎖的で暗くなりがちな空間を開放的で明るいデザインにしているなど、環境にも配慮した未来設計をしていることがとても印象的であった。

 ガスクロマトグラフは分析項目毎に整理整頓されて設置されており,分析後のガスは局所排気口に吸引されて外部に排出するなど安全に配慮した設計であった。また、ドラフトチャンバーは異常といってもいいほど多く設置されており,しかも,それぞれに高精度かつ高速で応答できる可変風量制御装置が接続され,室内に導入される空気量とドラフトから排出される空気量を常にコントロールしてバランスを維持しており,安全性の向上,あるいは実験環境の保護を高い次元で実現していることを感じた。ガスを安全に使用するという視点から,特殊ガスの配管は実験室廊下の天井にあえて露出配管させて,配管経路を視覚化することでメンテナンス等の簡便化を図り,さらに必要に応じて配管の延長も簡単に行うことができるという特徴もあり,常に変化に対応できる試験所を目指していることが伺えた。

3時間におよんだ講演会と見学会は瞬く間に終了し,参加者は非常に有意義な時間を過ごすことができた。最後になりましたが,このようなすばらしい機会をご提供して頂いた,(一社)日本海事検定協会様に心より御礼を申し上げます。

[エア・リキードラボラトリーズ 園部 淳]

 

第350回 ガスクロマトグラフィー研究会講演会報告

 2017年5月26日の午後に、第350回GC研究懇談会講演会が北とぴあ15Fペガサスホール、にて開催されました。主題は「いまさら聞けないトラブル解決法 -GCの基礎をもう一度考える-」というもので、GC分析の基礎についての講演でした。様々なトラブル事例等を盛り込まれた実践的な内容で、参加者は約90名と非常に盛況でした。

  最初の講演は「無機ガス分析の基礎」という題で、(株)エア・リキード・ラボラトリーズの園部様に講演いただきました。標準ガスについて詳細に説明、ガス分析の信頼度向上のノウハウを解説いただき、大変有用な講演でした。

 2題目は「前処理装置の基礎」という題でアジレントテクノロジー㈱の中村様に講演いただいた。GCに使用される前処理装置(HS、P&T等)についてわかりやすく解説いただきました。

  3題目は「試料準備(液体)と注入口の基礎)という題で報告者(㈱島津製作所)和田)が講演しました。固体、液体の標準試料調製と、試料注入時にスプリット/スプリットレス注入口で起きている事象を解説、トラブル事例等についてもお話ししました。

  4題目は「分離とクロマトグラムの基礎」という題で、レステックの内海様の講演いただきました。分離に関係する要因からカラムの種類、選択等について、トラブルシューティングを多く紹介いただきわかりやすく、有用な講演でした。

  5題目は「検出器の基礎」という題で西川計測㈱の山上様に講演いただきました。主にFID,ECDおよびMSについて原理から不具合の要因等にも言及いただき非常にためになった講演でした。

  6題目は「定量計算の基礎、分析値の信頼性を確保する不確かさ算出」という題で産総研の渡邉様に講演いただきました。不確かさの見積もり方法について、詳細でわかりやすく解説されました。正確な定量のためには、できる限り不確かさを意識し、試料調製することの大切さがよく理解できました。

  講演会場入り口近くでは関連企業によるカタログ展示も行われ、休憩時間に多くのお客様が来訪されていました。

  講演後の意見交換会は、関係者を含め約40名が参加されました。活発な議論、意見交換がかわされ、あっという間に終了の時間になってしまいました。 今回の講演は年に一度のGCの基礎的な講演でした。トラブルシューテイングを多く紹介いただいた実践的な内容で満足度が高い講演会だったと思います。

(株)島津製作所 和田豊仁

講演の様子 

展示会場の様子

 
第348回 ガスクロマトグラフィー研究会特別講演会開催報告

2016年11月25日(金),北とぴあ(東京都北区)13階飛鳥ホールにおいて,第348回 ガスクロマトグラフィー研究会特別講演会が開催されました。「社会の安全・安心を守るガスクロマトグラフィー」を講演主題とし,薬物関連分析で活躍するGC,GC/MSを副題とした3題の招待講演と5題の技術講演が行われました。日常気づかない様々な分野でGCやGC-MSは利用され,社会の安全・安心を守り豊かな生活を支えています。今回のテーマとして選ばれた分野はとても幅広いものではありましたが,様々な分野で活躍されている第一線の研究者の皆様から興味ある話題を提供頂きました。例年より早い開催となりましたが,100名以上の参加者があり大盛況のうちに講演会が終了しました。

特別講演1題目は山田 雅之先生((公財)競走馬理化学研究所)より「競走馬における薬物検査の現状」と題してご講演を頂きました。競馬レースにおいてレースの公正確保は重要な課題であるため,禁止薬物を検査する業務は大変重要な業務であることが分かりました。薬物検査では,主にGC-MSやLC-MS等が用いられており,同定基準はAORC(Association of Official Racing Chemists)で決められており,多様化する違反薬物の同定基準をAORCで定めているとのことです。また,近年注目されている薬物や分析法のご紹介もあり,測定方法だけではなく,前処理方法についてもご紹介頂きました。

特別講演2題目は辻川 健治先生(科学警察研究所法科学第三部化学第一研究室)より「法薬毒物分野における違法薬物検査の現状」と題してご講演を頂きました。違法薬物についての法規制や取り締まりの現状などの総論を初め,様々な薬物検査の方法についてのご紹介を頂きました。さらに,実際に検査を行う立場からの分析法の弱点や装置についての注意点を教えて頂き,現場に戻ってすぐに活用できると思いました。最後に薬物プロファイリング分析についてのご講演を頂き,今後の課題についても実例を持って紹介して頂きました。

招待講演は植木 真琴先生 (カタールアンチドーピングラボラトリー)より「ドーピング検査の現状」と題してご講演を頂きました。ステロイド薬トゥリナボール®のGC-NPD測定例を初めに,薬物測定のGC,GC-MSへの係わりをお話しいただいてから,世界アンチ・ドーピング機構(WADA)で常時禁止されている化学物質のご紹介を頂きました。新しい測定方法としては,ステロイド由来の薬物を調べるGC燃焼安定同位体比質量分析計の紹介がありました。また,リオデジャネイロ五輪の直前に話題となりましたロシアチームの組織的なドーピング手法の紹介もあり,ドーピングについて様々な側面からのお話しは大変興味深く感じました。

技術講演1題目は佐々野僚一氏((株)アイスティサイエンス)より「固相誘導体化によるメタボローム分析」と題して,アミノ酸を保持させる陽イオン交換樹脂と有機酸を保持させる陰イオン交換樹脂の新しい積層固相カートリッジによるメタボロームの迅速分析とオンライン固相抽出GC-MSのご紹介を頂きました。

技術講演2題目は小笠原亮氏(アジレントテクノロジー(株))より「GC/Q-TOFによる薬物分析」と題して,同社のGC/Q-TOFによる薬物分析のアプリケーションを中心にご紹介を頂きました。 

技術講演3題目は坂井健朗氏((株)島津製作所)より「GC-MSによる生体試料中の短鎖脂肪酸の分析」と題して,生体試料において揮発しやすい短鎖脂肪酸を新しい誘導体化を用いた前処理からGC-MSの測定までのご紹介を頂きました。

技術講演4題目は渡辺壱氏(フロンティア・ラボ(株))より「前処理装置を用いたGC/MS法の法科学への応用例」と題して,前処理装置パイロライザーを用いた法科学分野に対応したGC-MS測定のご紹介を頂きました。
技術講演5題目は土屋文彦氏(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株))より「高分解能GC-MSを用いた検体間比較の有効性とワークフロー」と題して,同社の取り扱っている高分解GC-MSのご紹介と今後のGC-MS分析の展望についてご講演を頂きました。

昼食や技術講演の間にありました休憩時間では,関連企業の製品やカタログ展示があり,新製品の情報やアプリケーションの紹介もあり多くの方々が情報収集を行っておりました。

最後に前田恒昭委員長により閉会のご挨拶があり,その後,17階にあるレストラン山海亭に場を移して意見交換会が行われました。大勢の方が意見交換会に参加されて活発な意見が飛び交わされ,参加者の親睦も深められて大変有意義な時間を過ごすことが出来ました。

 (株式会社日立ハイテクサイエンス) 大川 真

 

 

第344回ガスクロマトグラフィー研究会・見学会開催報告

 第344回ガスクロマトグラフィー研究会・見学会は、(株)伊藤園様の御協力を得て、同社の静岡相良工場および併設される中央研究所にお伺いし開催させていただきました。御講演を頂いたあとに研究所と工場の見学をさせて頂きました。

 (株)伊藤園の静岡相良工場と中央研究所は茶処の静岡県牧之原市の茶畑に囲まれた約61000m2の敷地内に立地し、製造部門と研究開発部門を合わせて、約400名の方が勤務されています。1974年に同工場(リーフ茶包装工場)が完成し、その後、2001年に麦茶ティーバッグ工場が完成、2006年に粉末茶包装ラインを導入、2009年にリーフ包装新ラインを導入、2013年にはコーヒー焙煎加工新工場を建設、2016年には抹茶工房の建設と、拡大を続けています。お客様の安心と安全に応えるために2000年にはISO14001認証、2002年にISO9001認証、2013年にFSSC22000認証を取得されています。敷地内に併設される中央研究所は1986年に完成し、2001年には中央研究所第二研究棟が建設されています。

  当日の研究会では、まず(株)伊藤園の中央研究所の岡野谷和則様より「緑茶のおいしさと品質について」という演題で御講演をいただきました。茶の歴史のお話から、茶のおいしさに関わる呈味成分や香気成分、それらの加工工程中での変化、オリなどの品質に関わる物質、官能検査方法について大変興味深い御講演いただきました。 お茶のおいしさの奥深さと、その難解な課題に果敢に挑戦される取組みを学びました。引き続いて品質管理二部の 荒川正人様より「伊藤園の残留農薬分析への取り組み」について御講演をいただきました。年間5000検体の農薬分析に対応するために取り組まれたQuEChERS法や超臨界抽出法についてのお話、感度向上と測定時間短縮のために導入されたLC-MS/MS分析についての御報告があり、同社の製品の安心と安全を守る品質管理体制を学びました。

  中央研究所の見学では、同社の香気分析、味成分、栄養成分、農産物原料を分析するための最先端の分析装置を見学しました。実験室、建物全体の隅々まで非常に整理整頓、清潔感が行き届き、安全と環境にも極めて高い配慮をされていることに大変感銘を受けました。 廊下から大きなガラス越しに実験室内全体を見渡せるようになっており、見学に来られたお客様が、同社の研究開発と品質管理体制に高い信頼を寄せられるであろうと実感いたしました。 その後の工場見学では、心休まるお茶の香りが漂うリーフ茶の包装工場、粉末茶の包装工場を見学させて頂きました。最先端の機械を導入された工場で、衛生面に細心の気配りをし、最高の品質、安心と安全を追求された工場は印象深く感動いたしました。そして「タリーズ」で使用するコーヒー豆の焙煎加工工場を、コーヒー豆の香しさを感じながら見学させて頂き、同社のこだわりの絶品コーヒーが出来上がる所以を知ることができたと思います。

  最後のお茶の試飲では、ミルクを連想させるような甘い香りが特徴の「かなやみどり」を試飲しました。抽出温度、抽出時間、茶葉の量、湯量によってお茶の味が変化することを教わり、特に低い閾値の渋味成分が抽出温度によって大きく異なることを試飲で実感いたしました。

  3時間に渡る講演会・見学会は瞬く間に終了し、第344回ガスクロマトグラフィー研究会・見学会を終えました。今回訪問させていただいた(株)伊藤園の静岡相良工場と中央研究所は,同社の開発と生産の中枢を担う組織であり、同社の商品開発への挑戦、衛生や品質管理に強い責任をもった取り組みに、同じ食品会社に勤務する者として強く感銘を受けました。この地に見学に訪れた方々がより一層益々、伊藤園のファンになって行かれることを感じ、伊藤園の商品が愛される理由を知ることができる訪問でありました。

  最後になりましたが,岡野谷和則様 (ガスクロマトグラフィー研究懇談会運営委員)をはじめ、このような心に残る素晴らしい研究会・見学会を企画してくださりました(株)伊藤園の皆様に心より御礼を申し上げます。

〔アサヒビール株式会社 酒類技術研究所 岸本 徹〕

 

 

第341回ガスクロマトグラフィー研究会特別講演会開催報告

 2015年12月11日北とぴあ(東京都北区)13階飛鳥ホールにおいて、標記講演会が開催されました。「健康で豊かな生活を支えるガスクロマトグラフィー」の講演主題で、5演題の招待講演と6演題の技術講演が行われました。年末という繁忙な時期、また当日の朝は雨模様でしたが、約150名の参加者があり大盛況のうちに終了いたしました。

 招待講演1題目は神戸大学大学院医学研究科の吉田優先生より「メタボロミクスによるがんバイオマーカー探索」と題してご講演頂きました。メタボロミクスとは、生体試料に含まれる分子量1000以下の低分子代謝物群を、網羅的に定性・定量解析するものです。近年では、高分解能・高速かつ高感度な誘導体化後ガスクロマトグラフィー質量分析計を用いた測定とデータ解析の技術が進み、医学研究分野等においてバイオマーカー候補の検索に有用とされています。これは、様々な病態において、その疾患特有の代謝の変動が起こり、それが血液・尿中にも反映することが予想されるためです。消化器がんを中心としたがんバイオマーカー探索、早期疾患診断システム開発についての最新の研究成果をお話しいただきました。

 技術講演1題目はジーエルサイエンス株式会社の宮川浩美氏より「GC・GCMSによる代謝産物の一斉分析-定量に向けた情報共有-」と題してご講演頂きました。代謝産物の一斉分析で一般的に用いられている、オキシム化後にトリメチルシリル化を行ってGC/MSで測定する方法について、落とし穴に落ちないための情報共有を目的として、有機酸、アミノ酸、糖などの親水性化合物に関して得られた知見をご紹介いただきました。

 技術講演2題目は株式会社島津製作所の坂井健朗氏より「安定同位体と超高速GC-MS/MSを使用したヒト血漿中の代謝物の分析」と題してご講演頂きました。GC/MSを用いたヒト標準血漿中の代謝成分を高速で測定する方法を新たに検討し、各測定化合物の安定同位体を用いたピーク面積値の補正による再現性の大幅な向上、二つの分離カラムを直列に接続した系の採用による高速昇温分析で分析時間を約1/4に短縮する事が可能となりました。このメソッドの採用により、多検体実験における代謝分析のスループットの飛躍的向上ができると考えているとのことでデータベースと共に紹介されました。

 招待講演2題目は有限会社ピコデバイスの津田孝雄氏より「皮膚ガスから収得できる体の情報:香りと健康」と題してご講演頂きました。皮膚ガスは皮膚組織を経由して身体から放出されるため、体の変化を緩やかに全身的に反映します。また皮膚ガスは自律神経支配であるため、被験者の工夫により大きく変化することができないという特徴を有しています。皮膚ガスや呼気についての疾病との関連、採集器具、測定装置などについての現状、健康と疾病について幅広くお話しいただきました。

 招待講演3題目は株式会社伊藤園の小林誠氏より「LDL-コレステロールを減らすトクホ緑茶開発~カテキンによるコレステロール低下作用とその機構~」と題してご講演頂きました。緑茶カテキンは様々な健康機能性について研究されており、血清コレステロール低下作用についても多数報告されています。高コレステロール血症やLDL-コレステロールの上昇は、動脈硬化症疾患の重要なリスクファクターとなっています。同社はカテキンの血清コレステロール低下作用に着目し、ヒトにおいて効果を検証するとともに、特定保健用食品を開発し申請した知見を基に、ヒト試験結果及び血清コレステロール低下作用機構を中心にお話しいただきました。

 招待講演4題目は東北薬科大学の藤村務先生より「GC/MSによる呼気分析」と題してご講演頂きました。非侵襲的な食道扁平上皮がんの臨床マーカーの開発を目的として、食道扁平上皮がんにおける呼気中の臭気測定をSPMEファイバーで捕集しGC/MSを用いて分析を行い、食道癌に特異的な揮発性有機化合物を特定しました。患者群の臭気成分が健常者と明確に区別できることを確認し、特に4成分については食道がん患者で優位に上昇している事を見出し特許申請されました。非侵襲的で食道扁平上皮がんに特異的な診断法となる可能性を示しており、今後は検体数を増やすとともに、食道がんの深達度や進行度の比較を行うことで、より早期の食道がん診断についての利用を検討されるとのことでした。

 技術講演3題目は日本写真印刷株式会社の花田真理子氏より「半導体センサーGCを用いたアセトアルデヒド測定による食道がん高危険群スクリーニング」と題してご講演頂きました。飲酒によって摂取したアルコールの代謝産生物であるアセトアルデヒドは発がん物質であると認定されています。体内にアセトアルデヒドが滞留する時間が長くなると、食道がんの発症リスクが高くなります。少量のアルコール負荷後の呼気中アセトアルデヒド及びエタノールの濃度測定することにより、アルデヒド分解酵素ALDH2遺伝子型を持つ被験者を非侵襲に高精度に判定し、食道がん高危険群をスクリーニングする検査方法及び測定器についてご紹介いただきました。

 技術講演4題目はサーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社の榎本好宏氏より「高分解能・精密質量測定GCMS装置のご紹介」と題して、同社の新製品のオービトラップ検出器を搭載した高分解能で高感度なGC-MS/MSシステムと応用例についてご紹介いただきました。

 技術講演5題目はアジレント・テクノロジー株式会社の杉立久仁代氏より「マトリックス成分から見た食品中残留物分析」と題してご講演頂きました。食品中の残留農薬分析において、"汚い"検液といった言葉が使われていますが、それは検液の色が濃い、分析したクロマトグラムの対象化合物に夾雑成分が被って見えない、リテンションタイムが大きくずれた、などから判断しています。検液中にどのような夾雑成分が含まれているのかについては、分析対象とされていませんでした。これは、食品は多岐に渡るためその成分を調べるのが難しい、とされてきたためです。サンプルを誘導体化することで、検液中に入っている夾雑成分を詳細に調べることができ、この手法を用いると、精製度の比較や精製工程の見直しができるなど、有用な情報が得られることが明らかとなった、とご紹介いただきました。

 技術講演6題目は日本電子株式会社の奥田晃史氏より「エネルギー分野における質量分析計を用いたガス分析」と題して、水素、一酸化炭素、メタンなどを測定対象成分として同社の3つの異なるGC/MSを用いたガス分析事例や、ガス分析専用の多重周回飛行時間型質量分析計についてご紹介いただきました。

 招待講演5題目は株式会社ツムラの三枝弘和氏より「ツムラのガスクロマトグラフを用いた残留農薬に対する取り組みについて」と題してご講演頂きました。漢方薬は天然物由来である生薬を組み合わせて作られており、日本薬局方などの公定書においては残留農薬など安全性に関わる様々な基準が定められています。さらに同社では、独自の基準を設定し検査を実施することで、原料となる生薬、エキス末及び製剤の品質管理を徹底し、安全性を担保しています。GC-MS/MSにより農薬を正確に定量する残留農薬試験方法の開発における検討事例について、6種類の生薬に対するマトリックス効果抑制剤の抑制作用の評価結果をお話しいただきました。

 講演会終了後は17階の山海亭に場を移して意見交換会が行われました。数十年のキャリアを有する大ベテランから今後を担う新しい方まで大勢の参加者があり、活発な意見交換が行われました。参加者の親睦も深められ、大変有意義な時間を過ごすことができました。

〔国立研究開発法人産業技術総合研究所 渡邉卓朗〕

第341回GC懇会場風景

 

2015日中韓分析研究交流会シンポジウム参加報告

 今年のシンポジウムは韓国食品研究所が中心となり、韓国分析科学会、日中韓研究交流会が共同で運営にあたり韓国の釜山、グランドホテルで10月13日から15日に開催されました。昨年、11回目を東北大学(瀋陽、中国)のJuan-Hua Wang教授が大会会長として取りまとめ、今回の第12回目は韓国食品研究所(KFRI)のJae-Ho Ha博士が大会会長、副会長としてJin-Ming Lin教授(清華大、中国)、佐藤博教授(長崎国際大、日本)、日本側事務局はガスクロマトグラフィー研究懇談会の佐藤委員と前田委員長が務め、LC、FIA、IC、環境分析各研究懇談会の協力を得ました。参加者は韓国48名、日本18名、中国42名と韓国が協力しているモンゴルから3名と多数の方の参加を得て盛会でした。毎年参加者が増えており、学生や若手研究者の参加も多くなってきました。韓国も大学の研究者の発表が増加してきました。研究発表件数はプレナリー講演4件、キーノート講演23件、一般発表16件、ポスター発表34件で発表件数の多さと研究発表内容の広がりを感じました。発表件数が多かったので14日は1会場で朝8時から10時30分までプレナリー講演の後2部屋に別れて18時まで、翌15日は2会場で9時から11時まで発表が続きました。発表時間はプレナリーで30分、キーノートで20分、一般で15分とメリハリをつけ、質問も活発で進行は遅れ気味でしたが実りある研究発表会になりました。突然のプログラム変更や発表者が来ないなども無く、各国の研究レベルも高くオリジナルのアイデア紹介や最先端の研究が続きました。  会期中は晴天に恵まれ、会場の窓越しに対馬が望める絶好の天気でした。釜山は古くから大陸と日本との交流の窓口であり、この地で日中韓シンポジウムが開催された事は特別な意味があるように思いました。14日夜の意見交換会では各国の研究者がほぼ全員参加して意見交換と懇親を深めました。

 今回も学生の参加が多く、当初から変わらない会の主旨である友好と交流の目的が達成されたと思います。今回も、本研究交流会開催に対して(公社)日本分析化学会のご理解を得て国際交流の後援を頂きました。変わらぬご支援に対し深謝いたします。  次回は中国の武夷大学で開催を予定しており、福建省のいくつかの大学が協力するとの紹介がありました。時期は9月か10月頃との事なので決まり次第紹介いたしますので是非ともご予定ください。

国立研究開発法人 産業技術総合研究所 前田恒昭

2015日中韓シンポジウム Jae- ho Ha大会会長挨拶

2015日中韓シンポジウム会場風景

 

ガスクロマトグラフィー研究懇談会
キャピラリーガスクロマトグラフィー講習会開催報告

 麻布大学のご厚意で実習会場を提供頂き、首都大学から会場を移してから4回目、通算で第21回CGC講習会も無事終了いたしました。今回は、実習17名、講義のみ5名で総数22名、これに学生の聴講を加えて26名でした。講習会初日は実習のテキストとして使われている「役に立つガスクロ分析」の内容に沿った講義を行い、2,3日目は4組にわかれて実習を行いました。実習は、テキストで学んだ事を実際の分析を通じて理解を深める内容でしたが、応用では欧州連合のROHS指令,REACH規制に関わる材料分析の話題を取り上げフタル酸エステル類、臭素系難燃剤のGC/MS分析の実習を行いました。また、GCの前処理法として適用範囲を拡大する誘導体化では有機スズを誘導体化して分析する実習を行いました。誘導体化した後、ガスクロマトグラフの選択性検出器としてスズのフィルターを付けた炎光光度検出器(FPD)を用いました。今回の講習会では前回の反省を基に保母先生にお話し頂いた基礎理論の講義を少し延長して理解を深めるよう工夫しました。各講師が講義内容をいろいろと工夫して短時間の講義で理解を深めるよう考えましたが、1日の座学でGCの全てを説明することは容易ではありませんでした。実習に関わる誘導体化の実習部分で実際の前処理に時間がかかるので処理済試料を用いましたが誘導体化反応と選択性検出器を用いるGC分析の有用性を確認できる良い機会となりました。しかし、応用面が限定されることで参加者も材料分析関係の方に限定されるなど、実習テーマの選び方の難しさを実感いたしました。運営委員の間ではこれ等の点を反省し、来年はより良い実習にしていきたいとの声があがっております。

 講習会2日目にはガスクロマトグラフィー研究懇談会恒例の講師と参加者、運営委員を交えての意見交換があり、今後の活動の助けとなるコミニケーションの機会が設けられ、活発な意見交換が行われました。実習参加者からは、参加してよかった、応用ばかりやっていたがガスクロマトグラフ分析の基礎が理解できた等の感想が寄せられました。反省点も含めて参加者の方の意見を取り入れてより良い講習会にしていきたいと思います。

 試験中にもかかわらず麻布大学の高木先生、杉田先生、久松先生、兼島先生には大変お世話になり、また、講習会のアレンジをしていただいた代島副委員長、杉田先生、講義と実習を担当して頂いた運営委員並びに講師派遣と機材提供頂いた企業の方々の協力に感謝いたします。

ガスクロマトグラフィー研究懇談会委員長
(国立研究開発法人 産業技術総合研究所)前田恒昭

 

 

第335回ガスクロマトグラフィー研究会、総会と研究会開催報告
「ガスクロマトグラフ分析に用いる純度管理技術と極微量分析への応用」

2015年2月20日(金)に北とぴあのペガサスホールで,ガスクロマトグラフィー(GC)研究懇談会主催の第335回GC研究会が百名ほどの参加で開催された。

13時からは総会が行われ,2014年度の会計報告と2015年度の予算案,2015年度の実施計画が承認された。 研究会は,大きく二つの主題に分かれており,前半に応用例として安定同位体比関連の講演2件と,後半はガスの純度管理に関する講演という構成であった。

招待講演の一題目は「食物連鎖網は可視化できるのか? ~GC/IRMSを用いたアミノ酸の安定同位体分析でみる生物と生物のつながり~」というタイトルで(独)海洋研究開発機構の力石嘉人氏にご講演いただいた。動植物のアミノ酸を構成する窒素の安定同位体比の計測結果から食物連鎖のカテゴリーを推定する手法の紹介であった.食物連鎖のどの段階にいるかがアミノ酸分析で数値化できるという試みであり,通常の微生物から小魚,大型魚類などへと移行する食物連鎖の紹介から始まり,食虫植物と虫の比較や,その食虫植物を食べる青虫の連鎖カテゴリー分けなど興味深いデータをご紹介いただけた。さらに,綺麗なピークを得ることが難しい安定同位体比計測時のクロマトグラムの美しさにも驚かされた。招待講演の二題目は「環境保全分野のGC/IRMS利用の可能性」を山梨大学の風間ふたば先生と米山由紀先生お二人による,国際流域環境研究センター設立の経緯と,水の安定同位体比計測による起源推定の試みをご講演いただいた。

その後,ガスの純度管理に関する講演に移った。主題講演の一題目は「超高純度ガスの純度の考え方と微量不純物の測定方法」というタイトルで住友精化株式会社の安達 富士夫氏にご講演いただいた。標準ガスのカタログスペックの見方や,各社での表示方法の違いをユーザーの立場でどう判断すべきかなど有益な情報をいただいた。主題講演の二題目は「マイクロGCを活用した各種標準ガスの開発」を産総研の松本信洋氏にご講演いただいた。マイクロGCのような簡易なシステムでもノウハウの積み上げを元に世界水準のデータ取得が可能であるとの趣旨であった。

その後,技術講演として五題の講演があった。一題目は「PDD検出器の直線性」というタイトルでジーエルサイエンスの菅野了一氏にご講演いただいた。検出器の直線性や低濃度の不純物を高い信頼性で測定するためのノウハウが公開された。次に,同様の検出原理のBID検出器を用いた「BIDを用いたガス中不純物の高感度測定」を島津製作所の久保田諒氏にご講演いただいた。燃料電池用の水素燃料の品質規格に即した不純物の高感度測定に関する話で,通常当研究会に縁が無い方々にご参加いただくきっかけとなった講演であった。三題目は「標準ガスの安定化におけるシリンダー内面処理の影響」をエア・リキード・ラボラトリーズの園部淳氏にご講演いただいた。ユーザーが通常目にすることができない標準ガスの安定性など貴重なデータを公開していただき目からうろこであった。ユーザーとしては「標準ガス」という単語に安定性など大きな期待をしてしまうが,現実はそうでも無い場合があることを実感させられる有益な情報公開であった。四題目は「GC用ガスの純度維持に関する減圧弁の機能と影響」というタイトルでユタカの平野耕一氏にお話いただいた。減圧弁の構造から,信頼性を得るための使用方法のノウハウなどなかなか聞けない情報であった。最後は,「GC分析におけるキャリヤーガス純度の重要性とキャリヤーガス精製について」をリキッドガスの重富徹氏にご講演いただいた。純度の低いガスをキャリヤーとして用いたときの具体的な問題点をデータを元に示して,ガス精製器使用の重要性を示していただけた。

今回の講演は自らも講師を務めた園部委員が担当し取りまとめた。キャリヤーガスや標準ガス,そしてガス中不純物の管理など,実際に使用する現場ではその品質のばらつきなどで困っている現状があり,それに対する基本的な知見が得られる貴重な講演会であり,参加者からは好評をいただいた。

今回,初めて講演資料を事前にホームページ上にアップして必要なもののみ印刷して持参していただく方式をとった。準備が大変なこともあり,継続に関しては今後も検討を続けることになりそうである。

((一財)日本自動車研究所、運営委員 秋山 賢一)

 
第334回 ガスクロマトグラフィー研究懇談会

 2014年12月12日(金)、大田区産業プラザ、コンベンションホールにて「安全・安心な生活と豊かな文化を支えるガスクロマトグラフィー」を主題とした講演会が開催され、130名以上の方にご参加頂き、大盛況のうちに終了しました。

開会の挨拶として最初に、前田恒昭委員長((独)産業技術総合研究所)より、ガスクロマトグラフィー誕生60年の歴史と今年度の活動についてご説明がありました。

招待講演1題目は、「室内空気中の有機リン系難燃剤の分析」で、杉嵜佑樹先生(オーヤラックスクリーンサービス㈱)より講演がありました。我々の生活に欠かすことの出来ない難燃剤の話で、室内の空気・ハウスダストを捕集して、その中の有機リン系難燃剤を分析するまでの手法を分かりやすくご説明頂きました。

主題講演1題目は、「GCと農薬分析」で、山上仰先生(西川計測㈱)よりご講演がありました。農薬分析の歴史・基礎から始まり、クールオンカラム注入法、大量注入法やGCで分析困難な農薬を誘導体化して分析する例等ご説明頂き、農薬分析に関する基本から応用までを非常にわかりやすくお話いただきました。

技術講演1題目は、「GC/QTOFが支える安全・安心な生活」で小笠原亮先生(アジレント・テクノロジー㈱ )よりご説明がありました。危険度ドラッグ分析の近況と、標準品は一握りしか入手出来ず、マススペクトルのライブラリ登録されている物質も限られている難しい状況で、EPIC理論を用いた分子構造推定についてご紹介いただきました。

続いて、「QuEChERS法(クエッチャーズ法)を用いるGCによる食品中の残留農薬の分析」が、北見秀明先生(Restek Corporation)よりご説明がありました。QuEChERS法の紹介をされた後、サツマイモをQuEChERS法で前処理したサンプルと未処理のサンプルをGC-TOFMSで分析・比較し、QuEChERS法により綺麗なピークが得られ、同定性能(定性)が向上していることが分かりやすく説明されました。

昼休みを挟み午後より、招待講演2題目として、「清酒の品質と香気成分」が磯谷敦子先生((独)酒類総合研究所)よりご講演がありました。清酒の構成する味と香りの検討、カビ臭、老香(酸化劣化した匂い)についてのご説明がありました。更に、清酒中のカビ臭の原因となる、TCAを測定すると17点中、12点が閾値を越えているという分析結果をご報告されました。また麹菌がTCPからTCAに変換しているという非常に興味深いご説明がありました。

主題講演2題目は、「ビールに特徴的な香りを付与するホップ由来香気成分の解析」で岸本徹先生(アサヒビール㈱酒類技術研究所 )よりご説明がありました。ホップについて、マスカット様香気への寄与成分を特定し、4-mercapto-4-methylpentan-2-one(4MMP)が寄与していることを発見されました。pptレベルの分析をGCMSで分析する必要があり、当初は前処理に非常にご苦労されましたが、試行錯誤の末、簡易前処理法を確立され、高い精度で、容易に定量することが可能なったとのことです。

技術講演2題目は、「ダイナミックヘッドスペースを用いたMulti-volatile Method (MVM)による飲料中香気成分の網羅的分析」で、角川淳先生(ゲステル㈱)よりご紹介がありました。香気成分をそれぞれの性質に合わせて複数の捕集管に分けて連続的に捕集する、 Multi-volatile Method (MVM)を説明され、MVMによるコーヒー中の香気成分分析例について紹介されました。

続いて、「GC/MSによる食品分析手法のご紹介! 産地特定編」が、西村泰央先生(LECOジャパン合同会社)よりご説明がありました。コーヒー豆をGC×GC―TOFMSで分析し産地判別手法の開発例をご紹介されました。このような多変量解析を通じ官能試験や化学分析結果と総合的に評価することで、応用範囲はさらに高まると期待されるとのことです。

続いて、「スローフードとその網羅的分析法」が、宮川浩美先生(ジーエルサイエンス㈱)よりご紹介されました。GCによる代謝物の網羅的分析法、味噌の分析例、糖の含有量の多いサンプルの注意点、前処理法、容器の課題等、幅広くご紹介いただきました。

招待講演3題目は、「ニオイ分析による文化財保存のためのカビ種推定ソフトウェア研究」で、竹内孝江先生(奈良女子大学)よりご講演がありました。土壌由来のカビの揮発性代謝物のGC/MS分析について説明いただきました。更に、Ion Mobility Spectrometer (IMS)でのオンサイト分析および、GC/MS測定スペクトルからのカビ種を推定するソフトウェアMVOC Finderを構築された結果をご紹介いただきました。

技術講演3題目は、「GC/IRMSの基礎」で、秋山賢一郎様(サーモフィッシャーサイエンティフィック㈱)によりご説明いただきました。同位体の基礎を分かりやすくご説明頂き、GC/IRMSによる、メキシコでのテキーラの酸素・炭素の同位体比の例、ウオッカの分析例、覚せい剤の産地判別、バイアグラ偽造品の特定例等を紹介いただきました。

主題講演3題目は、「GC/IRMSによる酒や燃料中エタノールの炭素と酸素安定同位体比の測定による原料植物の分類」で、秋山賢一先生((一財) 日本自動車研究所)よりご講演いただきました。醸造用アルコール、サトウキビから作られたエタノールの炭素安定同位体比分析の比較結果、ビール・ウイスキー・ワインで炭素同位体比を比較しこの結果より、醸造用アルコールを混ぜているかが確認できる大変興味深い分析例を紹介頂きました。

最後に閉会のご挨拶として、前田恒昭委員長((独)産業技術総合研究所)より、会員の募集と、2015年2月20日(金)に研究会開催につての案内があり、講演会は終了いたしました。

 講演会の終了後、意見交換会が開催されました。大勢の参加者があり、活発な意見交換がおこなわれました。参加者の親睦も図られ、有意義な時間を過ごせました。

武守佑典(㈱島津製作所)


 
第20回キャピラリーガスクロマトグラフィー講習会

 麻布大学のご厚意で実習会場を提供頂き、首都大学から会場を移してから3回目、通算で第20回CGC講習会も無事終了いたしました。今回は、実習26名、講義のみ8名で総数34名、これに学生の聴講を加えて昨年より参加者が増えました。講習会初日は実習のテキストとして使われている「役に立つガスクロ分析」の内容に沿った講義を行い、2,3日目は4組にわかれて実習を行いました。実習は、テキストで学んだ事を実際の分析を通じて理解を深める内容でしたが、応用ではトランス脂肪酸を誘導体化して分析する方法、食品関連農薬と食品の匂い分析など最新の話題も取り入れました。講義内容には変更はありませんが、講師も少し入れ替わり世代交代が徐々に進んでおります。今回の講習会では、残念な事に保母先生にお話し頂いた基礎理論の部分の時間が少し短かった事と、誘導体化の実習部分で実際の分析ができなかった事があげられました。運営委員の間ではこれ等の点を反省し、来年はより良い実習にしていきたいとの声があがっており反省をふまえて変更したいと思います。

講習会2日目にはガスクロマトグラフィー研究懇談会恒例の講師と参加者、運営委員を交えての意見交換があり、今後の活動の助けとなるコミニケーションの機会が設けられ、活発な意見交換が行われました。実習参加者からは、参加してよかった、今まで使っていたが何をしているかよくわからなかったが実習がとても役に立ったなどの感想が寄せられました。反省点も含めて参加者の方の意見を取り入れてより良い講習会にしていきたいと思います。

試験中にもかかわらず麻布大学の高木先生、久松先生、兼島先生には大変お世話になり、また、講習会のアレンジをしていただいた代島さん、杉田さん、講義と実習を担当して頂いた運営委員並びに講師派遣と機材提供頂いた企業の方々の協力に感謝いたします。また、杉田委員が10月より麻布大学獣医学部の高木先生の研究室の講師となって着任されることになりました。CGC講習会の継続も含め、GC懇にとり大変うれしいニュースとなった講習会でした。

ガスクロマトグラフィー研究懇談会委員長
((独)産業技術総合研究所)前田恒昭

 



2013年度報告書

2012年度報告書

2011年度報告書

2010年度報告書

2009年度報告書