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ぶんせき誌への活動紹介の投稿記事

第385回ガスクロマトグラフィー研究懇談会特別講演会 開催報告

 2023年11月30日(木)北とぴあ飛鳥ホール(東京都北区)において、第385回ガスクロマトグラフィー研究懇談会特別講演会が開催された。本研究懇談会では毎年年末の近くなった時期に特別講演会を開催しており、今年度は「工業製品の発展と共に活躍するガスクロマトグラフィー-関連材料の管理や調査におけるGCの役割と展望-」というテーマのもと、この分野で活躍する講師による5題の主題講演のほか、メーカー各社による5題の技術講演からプログラムが構成された。現地では80名を超える参加者が集い、10時開始から17時を超えるまでと長丁場であったものの、聴衆から高い関心が寄せられていた。


 冒頭の2題の主題講演では食品包装に関連したテーマが並び、カデラ薬品金子様(前・東京都健康安全研究センター)による「食品用器具・容器包装の試験検査について」では、GC以外の範囲を含め数多くの具体例を挙げながら規格に基づいた試験方法が示され、イメージしやすく実際的な進め方の紹介がなされた。化学研究評価機構 食品接触材料安全センター梶原様による「食品用器具・容器包装ポジティブリスト制度について」では、関連法の動向やポジティブリスト制度施行後の実際的な状況が示され、事業者と連携しつつ見直しをはかりながら進められていることを窺い知ることができた。


 日産アーク沼田様による「臭気分析におけるGC-MSと多変量解析の活用」では、臭気分析の基本的な考え方から評価方法までの全体像や材料由来の異臭測定の具体例が提示されたほか、多変量解析を適用した取り組みについて紹介がなされ、多変量解析の臭気成分の要因調査への有用性が認識された。


 講演会最後の2題ではブラスチック材料の使用後の挙動に関連して、マイクロプラスチックやケミカルリサイクルについての講演が続いた。徳島大学水口様による「熱分解GC/MSによる大気マイクロプラスチックの分析」では、本分野における分析手法として熱分解GC/MSの有用性、実際的な分析条件の検討や測定例が紹介されたほか、サンプリングにおける微小サイズゆえの難しさやより一層の注意深さの必要性が認識された。また、研究分野として今後ナノサイズへ移行していくとの予測が示された。東北大学熊谷様による「プラスチックのケミカルリサイクルプロセス開発への熱分解ガスクロマトグラフィーの応用」では、プラスチックリサイクルの背景や今後の見通しとしてリサイクル対象が増えていく展望に加え、熱分解反応を利用したケミカルリサイクルプロセスとして、PETからベンゼン、ポリカーボネートからビスフェノールAやフェノール、ポリウレタンからイソシアネートの回収といった開発事例が紹介された。熱分解反応機構は複雑であり、反応解析には熱分解GC/MSによる分析的なアプローチが適用されていた。


 その他に技術講演においては、アジレントテクノロジー 風間様による「食品用器具・容器包装添加剤分析用データベースの紹介」、日本分析工業 大栗様による「工業製品分析のための加熱脱着装置の開発」、島津製作所 内山様による「GC/MS異臭分析システムの紹介」、日本電子 生方様による「GC-TOFMS専用自動構造解析ソフトウェアを用いた製品中異物の差異分析・構造解析」、フロンティア・ラボ 松枝様による「窒素キャリヤーを用いるGCと熱分解GC/MSの基礎検討」という多岐にわたるトピックが紹介された。その他に、講演の合間には14団体から資料提供頂き、スペースを設け、会場での意見交換も行われた。なお、当日の講演は後日参加登録者へ向け録画配信がなされる。


 以上のようにガスクロマトグラフィーが様々な形で実社会へ関与、貢献していることを改めて認識することができる講演会であった。また、講演会後には数年ぶりに講演者を含めた意見交換会・懇親会が行われ、親睦を深めつつ有意義な情報交換がなされた。最後に、本講演会の開催にあたり、ご講演をご快諾していただきました講師の皆様、ご来場いただきました皆様に心より御礼を申し上げます。

〔(地独)東京都立産業技術研究センター〕 木下健司

 


 

第383回ガスクロマトグラフィー研究懇談会講演会・見学会 開催報告

 第383回ガスクロマトグラフィー研究懇談会講演会・見学会は、2023年8月25日(金)、国立研究開発法人理化学研究所放射光科学研究センターの「SPring-8/SACLA」(兵庫県佐用郡佐用町)にて開催いたしました。分析化学分野においても活用されている放射光技術に関して、SPring-8/SACLAの現状と可能性を御紹介頂きました。SPring-8は1997年に運転を開始した周長1436メートルの施設で世界最大のエネルギーを持つ放射光発生装置でその名前はSuper Photon ring-8 GeV(80億電子ボルト)に由来します。SPring-8内では47本の放射光が出され、それらの放射光を使って実験できる場所(ビームライン)が58カ所あり、ナノテクノロジーやバイオテクノロジー、産業利用まで多様な研究が進められています。

 当日は13:00より施設内のSACLAホールにて、講演会を開催いたしました。講演会と見学会には24名が参加いたしました。講演会では、まずGC研究懇談会の佐藤委員長からの挨拶の後、今回の講演会と見学会の開催に全面的に御協力を頂きました、理化学研究所 放射光科学研究センター 法科学研究グループリーダーの 瀬戸康雄先生より「SPring-8と理研RSC法科学研究グループの研究開発」について御講演を頂きました。SPring-8の沿革や法科学研究グループにて瀬戸先生がリーダを務められているグループでの研究事例を踏まえ、日本の法科学を支える微細分析の研究を御紹介いただきました。続いて理化学研究所 放射光科学研究センター SACLAビームライン基盤グループの菅原道泰先生より「SACLAと構造生物学」について御講演を頂きました。菅原先生がこれまで取り組まれてきましたX線解析装置への結晶の注入方法の開発を中心とした結晶構造解析の最先端の取り組みについて御紹介を頂きました。そして、私、岸本徹(酒類総合研究所)より「ビールの香りに寄与するチオール化合物の新規前駆体型の発見」という内容について発表をさせて頂きました。ここでは新たに発見した前駆体である「ジスルフィド結合型の低分子チオール」について報告をさせて頂きました。

 15:30より見学会として、まず全長700mのSACLAを見学いたしました。SACLAは、原子や分子の瞬間的な動きをストロボ写真のように観察することができるX線のレーザーで、2021年からは、波長1Å以下の世界最高性能の光を生み出すSACLAの加速器から、高品質な電子ビームをSPring-8に入射しています。ここでは壮大な加速器棟、電子からX線レーザーを生成するアンジュレーターを見学いたしました。精密な装置をこれほどにまで長距離に渡って精緻に並べて、強力なX線レーザーを生成する設備とそれを完成させた技術に圧倒されました。続いて、SPring-8内のビームラインを用いた実験設備を見学いたしました。分光分析を行うBL(ビームライン)37XUでは、瀬戸先生らのグループが毛髪中の元素を検出されている事例を御紹介いただきました。マイクロCTとして使用されているBL47XUでは、はやぶさ2サンプルのX線CTを用いた分析、放射光ナノCTによる小惑星リュウグウ微細粒子の内部構造解析の研究を紹介いただき、このSPring-8が世界の研究をリードしていることを実感いたしました。その後、物理棟3階の法科学研究グループを見学いたしました。こちらでは、レーザーラマン分光光度計、ICP発光分光分析装置、偏光傾向顕微鏡、GC-TOF装置など日本の警察捜査を支える最先端設備を紹介いただきました。

 その後、18:00からの懇親会には17名が参加し、さらにそのうち14名がSPring-8内にあるゲストハウスに宿泊いたしました。深夜までお酒を交わし、交流を深めることができました。  今回の見学会を通じ、日本が国力を掲げて完成させた壮大な研究施設に感銘を受けると共に、それらを完成させ、研究を支えているのは高いレベルの日本の人材であると改めて感じました。精緻な世界最高の研究施設から今後発表される、多くの研究結果は世界をリードして行くと確信いたしました。

(酒類総合研究所) 岸本 徹

SPring-8 SACLA見学会の集合写真


 

第382回ガスクロマトグラフィー研究懇談会講演会

 2023年6月23日(金)に北とぴあペガサスホール(東京都北区)にて第382回ガスクロマトグラフィー研究懇談会講演会が実施された.本研究懇談会は例年,新年度の最初の講演会では基礎的な内容を主体とした講演会を実施しており,今回は「試料前処理と試料導入」に関する基礎と最新技術について講演会を行った.講演会は対面形式で開催し,当日の発表内容は後日動画配信も行った.当日に会場で聴講した参加者は約70名であり,多くの参加登録者が会場に足を運んだようである.会場ではGCに関連する企業が資料の展示を行い,休憩時間に活発な意見交換が行われた.当日のプラグラムは以下の通りである.


 

第382回GC懇講演会プログラム13:00~17:00

開会あいさつ (GC懇委員長・長崎国際大)佐藤 博

【基礎講座】
「試料前処理の基礎」
(麻生大学)杉田 和俊
 まず,今回のテーマである試料前処理について,その目的や重要性,手法等について,基礎から講演をしていただいた.GCで複雑な試料や希薄な試料を正確に定性・定量するためには,適切な試料前処理が必要であり,目的や試料の状態に応じて様々な手法が選択可能であることや、基本的な試料前処理法の原理や注意点などが紹介された.

【招待講演】
「阿蘇草地高原大気の観測からBVOCsのオゾン生成ポテンシャルを探る: TD-GC-CMFID/MS,化学発光検出,マイクロガス分析システム,SIFT-MSの活用」
(熊本大学)戸田 敬
 大気中の微量ガス状成分をその場で分析するための分析システムの開発やその利用,さらに生物由来の揮発性有機化合物であるBVOCが大気環境に与えている影響など,大気分析に関する幅広い研究成果についてご講演をいただいた.最新の研究成果に触れて勉強になったのは無論のこと,戸田先生の知的探求心や問題解決能力を知る機会にもなった.最後に,今年の9月に開催予定の日本分析化学会第72年会(熊本)についても案内があった.

【技術講演】
 下記8件の技術講演を行っていただいた.固相抽出(SPE),固相マイクロ抽出(SPME),加熱脱着や熱分解など,幅広い試料前処理法について基礎から最新の動向まで幅広く講演していただいた.

  1. 「「GC分析分野におけるSPE(固相抽出)法の基礎と事例」
    (GLサイエンス)高柳 学
  2. 「SPME(固相マイクロ抽出)の概要と新製品について」
     (メルク・シグマアルドリッチ)佐々木 豊
  3. 「Agilent 7693Aオートサンプラが最高のサンプル前処理・注入パフォーマンスを提供」_
    (アジレントテクノロジー)風間 春奈
  4. 「微量ポリマー分析を可能としたF-スプリットレス熱分解法」
    (フロンティアラボ)太田 惇貴
  5. 「GERSTEL DHS(ダイナミックヘッドスペース)の特徴と食品香気分析への応用『マルチモードによる感度/網羅性の向上』」
    (ゲステル)神田 広興
  6. 「Entech 7200A 自動濃縮装置による微量低沸点化合物の測定」
    (西川計測)小野 由紀子
  7. 「低温濃縮装置の技術と皮膚ガス及び電池空間における微量ガス測定への応用」
    (ピコデバイス)津田 孝雄
  8. 「固相誘導体化によるメタボローム分析の前処理とその自動化に関する最新情報」
    (アイエスティサイエンス)松尾 俊介

閉会の挨拶 (GC懇委員長・長崎国際大)佐藤 博

山梨大学 植田郁生

 


 

第381回ガスクロマトグラフィー研究懇談会講演会開催報告

2023年2月17日(金)に、標記講演会を開催しました。当初は対面形式での開催を模索していましたが、準備段階での1月中において、新型コロナウィルス第8波による感染者数および季節性インフルエンザによる感染者数がどちらも増加しており、同時流行への対策の観点からオンライン開催形式となりました。講演主題は「持続可能な社会に役立つガスクロマトグラフィー第3回」で、近年注目されているSDGsをテーマとした講演会をシリーズ化しており、実験室の効率よい運営、多彩なデータ処理機能やデータ処理ソフトウェアの理解と使い方を話題として取り上げられました。2013年から引き続き課題となっているヘリウムガスの供給に関連したガスクロマトグラフィー分野での取り組みなども交え、1件の招待講演と6件の主題講演にて広く話題提供されました。当日は、50名以上の方に講演会へ参加していただきました。

招待講演では、国立研究開発法人産業技術総合研究所の羽成修康様より「短鎖塩素化パラフィン分析におけるガスクロマトグラフ質量分析計の分解能差の影響」と題して講演をいただきました。塩素化パラフィン類の定量に係る国際規格がすでに制定されていますが、実際の定量操作にはさまざまな困難があるとのことです。共同分析の結果を例に用いて、質量分析計の分解能差で比較した結果が紹介されました。妨害物質の影響を排除するためには高分解能が必要といわれており、共同分析の結果もこのことを示していました。また、高分解能測定機器を使用すれば十分というわけではなく、分析結果は試料組成の影響も受けるので、高分解能測定機器分析法の妥当性確認も必要ということでした。
主題講演は、テーマが2つに大きく分けられ、合わせて6件の講演が行われました。主題講演の1テーマ目は「GC、GC/MS分析におけるデータ解析について」と題して、4題の講演が行われました。1題目は、日本電子株式会社の生方正章様より「GC-TOFMS及び機械学習を用いた構造解析手法の開発と応用」と題して講演いただきました。GC/MSでの定性分析において、データベース(ライブラリ)に非掲載の物質の構造解析には、多くの知見と経験、時間が必要です。同社はAIを活用してこの作業を自動化するためのシステムを開発し、このシステムを用いて材料中の未知物質の構造解析を迅速に行った例が示されました。
2題目は、株式会社島津製作所の中村元哉様より「最新のクロマトグラムの波形処理について」と題して講演いただきました。分析者の取り扱う解析データ数が増加、また解析対象ピーク数も増加することで、波形処理パラメータ変更時の管理コストが増加し、波形処理の自動化・簡素化が求められています。同社はAIを活用した波形処理アルゴリズムを開発し、熟練技術者の波形処理を再現いたしました。従来では波形処理・同定処理に113分を要していた作業時間が、このアルゴリズムを活用することで同定処理のみの32分に低減した例が示されました。
3題目は、アジレント・テクノロジー株式会社の風間春奈様より「快適なラボワークを支えるAgilent OpenLab CDS 2ソフトウェアのご提案」と題して講演いただきました。複数の分析機器の使用環境下では、分析機器毎にソフトウェアの操作性などが異なっています。このような環境下での、データ解析とレポーティングに要する時間の低減を実現する一つの解として、同社のソフトウェアが紹介されました。ユーザーインターフェースデザインを工夫するとともに、GCやLCからシングルMSまでの装置管理を可能とし、他社製分析機器の制御を可能とすることで、ソフトウェア操作法習得のハードル、習得に要する時間の低減を目指したとのことです。使用時においても、必要時に必要な情報のみを表示することで、ユーザーの負担軽減に貢献できるとのことです。
4題目は、西川計測株式会社の山上仰様より「マルチベンダーGC/MSデータ解析用ソフトウェアAXELのご紹介」と題して講演をいただきました。複数メーカーの装置運用時では、装置間の互換性、操作性の違いの問題があります。また、同一PC上でのデータ解析の場合には、動作安定性の問題もあります。このような問題を解決する一つの解として、同社のソフトウェアが紹介されました。AIA形式のデータを活用して、装置によらないデータ解析を実現しています。また、MSスペクトルの結果とRetention Indexを組み合わせたデータベース、文献値掲載のRetention Indexを収蔵したデータベースを提供しており、これを活用することで定性分析の確度を上げることが可能とのことです。
主題講演の2テーマ目は「ヘリウム供給問題への対策」と題して、2題の講演が行われました。1題目は、ムラタ計測器サービス株式会社の大塚克弘様より「窒素をキャリヤーガスとしたLPGC/MSとその応用」と題して講演をいただきました。常圧条件時における窒素キャリヤーガスでの最適線速度は、ヘリウムキャリヤーガスでのものの二分の一から三分の一程度です。低圧(真空)下では、最適線速度は常圧条件時の2倍から3倍となります。カラム入口側に抵抗管を付けたメガボアカラムでカラム出口を質量分析計に接続してそのメガボアカラム内を真空にし、これを活用することで、窒素をキャリヤーガスとした場合であっても適切な分離を行いつつ測定時間の短縮も実現できたとのことです。ヘリウムキャリヤーガスと比べると、質量分析計のイオン化が阻害され感度は落ちてしまうものの、メガボアカラムを用いるので試料導入量が増やせるとのことです。また、検量線の直線性やピーク形状は問題ないとのことです。なお、公定法でのGC/MS測定ではヘリウム以外のキャリヤーガスを認めていないので、それを認めていただけるよう活動を行っていくとのことです。
2題目は、ジーエルサイエンス株式会社の伊藤深雪様より「代替キャリヤーガス使用上のポイント、節ガス対策、分析への応用例」と題して講演いただきました。ガスクロマトグラフィーのキャリヤーガスとして使用されるヘリウムの代替ガスとして、主に窒素や水素を取り上げて、各ガス種の特徴を説明いただきました。そして、分析装置での代替ガスへの切り替え手順と、実際の測定操作に係る注意点を説明いただきました。代替キャリヤーガスが使用できない場合には、スプリットガスでのガス使用量の低減方法などについて紹介いただきました。合わせて、マイクロGCといったガス使用量が小さい測定装置の使用も提案いただきました。

今回は、多彩なデータ処理機能やデータ処理のソフトウェアの理解と使い方についての話題が提供されました。ガスクロマトグラフィーの世界にもAIが応用され、データ解析に係る省力化が進みつつあります。ソフトウェア技術の進歩に驚くとともに、ソフトウェアを正しく活用するための技術習得が、分析者に対する新たな課題になるものと感じております。合わせて、昨今のヘリウム供給不足に関連した発表もありましたので、ヘリウム供給問題に悩まれている参加者にとっては、参考になったのではないでしょうか。
最後に、講演会の開催運営にあたり、事務委託とオンライン開催を支えて頂いた一般財団法人大気環境総合センターの皆様に、この場を借りて感謝いたします。

(国立研究開発法人産業技術総合研究所 渡邉卓朗)


 

 

第380回ガスクロマトグラフィー研究懇談会特別講演会 開催報告

2022年11月18日(金)に北とぴあの飛鳥ホールにおいて、標記講演会を現地とオンラインのハイブリット形式にて開催しました。講演主題は「持続可能な社会に役立つガスクロマトグラフィー第2回」で、エア・リキードの園部委員と産総研の渡邉委員が幹事を務め2013年から課題となっているヘリウムガスの供給に関連した話題とガスクロマトグラフィー分野での取り組みを中心に2件の主題講演、1演題の招待講演と10演題の技術講演が行われ多くの情報が提供されました。参加者は、現地58名、オンライン41名の合計99名と大盛況のうちに終了いたしました。また、今回初めての試みとして休憩時間と講演終了後に意見交換の時間を取り、過去に研究会で展示して頂いた約50社に連絡して企業からのカタログなどの配布場所を設け資料提供頂き、参加者間での意見交換が活発に行われました。オンラインでの参加者にも幕間を利用して情報提供しました。


主題講演1題目は、日本エア・リキード合同会社の水澤芽衣様より「ヘリウム供給の現状」と題してご講演をいただきました。近年のヘリウム供給の状況やコスト上昇に関する背景、そして、今後の供給の展望について、紹介いただきました。たくさんお金を払う所に優先的に供給される仕組みのため、どこまで負担増に耐えられるかという厳しい現実もあるようです。2題目は、株式会社ジェイ・サイエンス・ラボの川村祥太郎様より「熱伝導度検出器を用いた液体水素中のオルト/パラ水素の分析」と題してご講演をいただきました。水素には核スピン異性体の存在により、オルト水素とパラ水素が存在するため、液化水素の貯蔵や輸送時にはそれら水素の比率の分析が求められています。比率を分析する目的や概要に加えて、熱伝導度型検出器を用いた応用分析例について、紹介いただきました。


招待講演では、一般社団法人日本環境測定分析協会・一般社団法人日本環境化学会の松村徹様より「ヘリウム代替ガス研究委員会の目的と活動」と題してご講演をいただきました。ヘリウム供給不足の現状に対応した、環境計量に係る公定法を改正するための枠組み作りと、現在取り組まれてる内容について紹介いただきました。公定法改正の難しさ、枠組みを作る大切さ、そして参加機関にとっても有益な仕組み作りと、異なる分野での公定法改正でも非常に参考になるお話でした。


技術講演の1題目は、金陵電機株式会社の上田透様より「オーブン内の水素漏洩検知と遮断切り替え機能を兼ね備えたガスクロマトグラフ」と題して講演いただきました。近年ヘリウムの供給が逼迫しているため、代替キャリヤーガスとして水素が検討されています。水素を使用する際の安全・安心対策機能を備えたガスクロマトグラフシステムについて具体的な対策が示されました。2題目は、日本電子株式会社の生方正章様より「GC/MSからはじめるSDGs~定量分析における生産性の向上と代替キャリヤーガスについて」と題してご講演をいただきました。窒素キャリヤーガスを使用した水質基準・環境基準項目の測定および水素キャリヤーガスを使用した食品中残留農薬の測定を事例にとりヘリウムから転換する事例が紹介されました。3題目は、ミッシェルジャパン株式会社の松木洋介様より「キャリヤーガスにアルゴンを使用した検出限界<50ppbを達成するコンパクトオンラインガスクロマトグラフ」と題してご講演をいただきました。プラズマ中での発光検出器を用いた高感度オンラインガスクロマトグラフと応用例についてご紹介いただきました。無機ガスが高感度で検出可能で、一台の検出器で4つの検出波長を同時測定する事ができ、分離が難しい成分の測定に適用可との事です。4題目は、株式会社堀場エステックの小坂明正様より「質量分析法とポストカラム反応GC-FID法を組み合わせた香気成分の同時定性・定量技術のご提案」と題してご講演をいただきました。MSで定性し、成分が確定しても標準物質が無いため定量できない成分について、ポストカラム反応GC-FID法で値付けし、なおかつトレーサビリティを確保する方法が1回の分析で可能となる、という内容でした。5題目は、大阪ガスリキッド株式会社の河内拓哉様より「ガスクロマトグラフ分析におけるガス精製器の役割について」と題してご講演をいただきました。ガス精製の原理や仕組みに加えて、キャリヤーガス中の不純物を取り除くインライン精製器について紹介いただきました。キャリヤーガスの純度がガスクロマトグラフ分析に及ぼす影響や、純度が悪いHeをゲッター材を用いた精製器で高純度にするなどの役立つ情報が提供されました。6題目は、NISSHAエフアイエス株式会社の森郁子様より「金属酸化物半導体センサーを搭載したポータブルGCによる金属中拡散性水素分析」と題してご講演をいただきました。水素に高感度な検出器を用いる事で、来る水素社会で起こりうる水素脆性破壊の解決に寄与する新たな手法が紹介されました。7題目は、株式会社島津製作所の中筋悠斗様より「最新GC機能を一挙公開!ラボの自動化/省力化」と題してご講演をいただきました。自動運転のメリットに加え、異常発生時に安全に装置を停止する機能など生産性向上に寄与するシステムが紹介されました。8題目は、ドレーゲルジャパン株式会社の福留健司様より「VOC検知用ポータブルガスクロのご紹介」と題してご講演をいただきました。PIDを検出器とした携帯形GCで、連続測定でVOCの総量を検出し、漏洩ヵ所や安全確保が必要な個所でガスクロマトグラフによる個別成分分析に切り替えて現場で結果を出す事の利便性が紹介されました。9題目は、アジレント・テクノロジー株式会社の加賀美智史様より「水素キャリヤーガスに特化したGC/MSイオン源と水素利用上の注意点」と題してご講演をいただきました。水素をキャリヤーガスとしたときに生じるMSのイオン源での反応を抑制するイオン源の紹介と、水素をキャリヤーガスとして使用する際の留意事項などが紹介されました。10題目は、大塚製薬株式会社の藤峰慶徳様より「ゴマ汚染の評価に至適:エチレンオキシド、2-クロロエタノールの標準物質ならびに内部標準(安定同位体標識化合物)」と題してご講演をいただきました。新たな食品汚染の規制対象になる物質を測定する為の標準物質提供開始の最新の話題でした。


今回は、昨今のヘリウム供給不足に関連した発表が中心であったため、ヘリウムガスの節約法や代替キャリヤーガスを探している参加者にとっては、実務に役立つ有意義な講演会であったと感じます。開催運営にあたり事務委託とオンラインでの講演を支えて頂いた(一財)大気環境総合センターの皆様にこの場借りて感謝いたします。

(フロンティア・ラボ株式会社)渡辺壱

会場風景


 

第379回ガスクロマトグラフィー研究懇談会 講演会・見学会開催報告

 2022年10月28日(金),東京都立産業技術センター(以下,都産技研)において,標題の講演会・見学会が開催された.2019年以来,コロナ禍で延期となっていたが,この度,参加人数を約30名に限定して開催された.今回の会場となった都産技研の本部は,ゆりかもめテレコムセンター駅からすぐのところにあり,道路を挟んで隣にフジテレビ湾岸スタジオがある.見学会当日は爽やかな秋晴れで,都産技研の建物前ではテレビ撮影が行われ,参加者はそれを横目に見ながら,都産技研に集うこととなった.

 GC懇委員長の佐藤先生(長崎国際大)の開会挨拶後,都産技研・計測分析技術グループ長 林 英男氏から都産技研について,ご紹介いただいた.都産技研は東京都が設立した公設試験研究機関ということで,中小企業の振興を図るため,企業から多くの技術相談や依頼試験などを受けているとのことであった.参加者から東京都以外の企業でも技術相談等が出来るのかとのご質問があり,都産技研では東京都以外の企業からも相談等を受けていること,また,その際の料金は企業の規模に応じて設定されているため,東京都以外の企業でも都内の企業と変わらない金額で利用できる旨,ご回答があった.

 都産技研のご紹介の後,都産技研・計測分析技術グループ 木下 健司氏から「熱分解装置を応用したGCによる技術支援~異物分析、成分調査、不具合調査~」というタイトルでご講演いただいた.木下氏が前年度,企業等から受けてGCを活用した相談案件の約9割で熱分解装置が利用されていたとのことで,工夫した点を交え,様々な活用例についてご紹介があった.特に混合物など複雑な組成の試料で,熱分解装置が実用的で強力な手法になるということで,熱分解生成物とその由来との関連付けが重要になるとのことであった.折り良く「ぶんせき」誌の2022年10月号の<解説>に木下氏が「異物分析における熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析法の活用」というテーマでご執筆されており,本講演内で紹介された.

 続いて,都産技研・墨田支所 佐々木 直里氏から「におい嗅ぎGC/MSによる技術支援~異臭分析、クレーム解析、研究事例の紹介~」というタイトルでご講演いただいた.都産技研では異臭に関する相談は,佐々木氏が所属する墨田支所で対応しており,担当者は皆,臭気判定士の資格を有しているとのことであった.相談内容としては,カビ臭の相談が多いとのことであったが,カビ臭原因物質は木製パレット等からの汚染事例が多く報告されていることから,関連業者に対してこのような事例についてもう少し周知する必要があると強調されていた.また,実際にはカビ臭が原因ではないにも関わらず,いつもと違うにおいがするとカビ臭と思い込んでしまう事例も多いとのことであった.講演内では依頼試験以外にも,セミナーの開催や共同研究により企業を技術支援している事例が紹介された.

 休憩を挟んだ後,都産技研・材料技術グループ 染川 正一氏から「触媒開発支援におけるマイクロGCの活用」というテーマでご講演いただいた.触媒開発は設備や試験にお金や人手がかかるため,大手の企業が中心となっているが,都産技研では,なるべく簡便かつ確実な方法で触媒の活性を評価し,中小企業を支援しているとのことであった.講演内で触媒評価にマイクロGCを用いる利点が紹介され,少ない分析量でも感度良く測定できる点,2~3分程度で分析可能である点,長時間の反応でも自動化により容易に追従できる点が挙げられていた.活用例としては,熱では1000℃以上が必要な水の分解について,光触媒を用いて室温で分解を評価した事例等が紹介された.

 講演会終了後,4グループに分かれて所内を見学した.今回の会場となった都産技研本部は2011年3月に臨海副都心青海地区に開設されたとのことであったが,10年以上が経過しているとは思えない程,綺麗な施設であった.講演会で異物分析についてご講演いただいた木下氏が所属される有機機器分析室では,実際の異物試料を見せていただいたが,目を凝らさないと分からない程,小さい異物もあり,このような異物分析は苦労が多いのではないかと思われた.また,放射線応用の研究室では,大型のX線透過試験室があり,試験室に入れば,大型の試料や重量物試料でも撮影可能とのことであった.ユニークな測定試料としては刀剣があり,「継ぎ茎(つぎなかご)」という作刀者の銘が切ってある茎にそれとは異なる刀身を継ぎ合わせる偽装手法の調査で使用されるとのことであった.見学に行く先々で機器や設備が非常に充実しており,東京都以外の企業等からも多くの相談が寄せられるというのも納得であった.

 見学会終了後,GC懇委員長の佐藤先生からの閉会挨拶があり,解散となったが,その後も会場内で講師と熱心な参加者との間で活発な情報交換が行われた.参加人数を限定して久しぶりに開催された見学会であったが,対面で開催されるイベントの良さが感じられた会であった.最後に,本見学会・講演会にご協力及びご参加いただいた皆様に心より感謝申し上げます.

(東京都健康安全研究センター)坂本 美穂

 

都産技研センター紹介時の講演会場の様子

 


 

日本分析化学会第71年会 ガスクロマトグラフィー研究懇談会講演会開催報告

 日本分析化学会第71年会は岡山大学津島キャンパスにて2022年9月14日(水)~ 9月16日(金)にて開催されました。ガスクロマトグラフィー研究懇談会の講演会においては、国立文化財機構奈良文化財研究所・BioArCh, University of Yorkの庄田慎矢先生に御講演をいただきました。コロナ禍での開催で密を避けた座席配置ではありましたが、会場は満席となり約60名が聴講され、大盛況のうちに終了いたしました。

 庄田先生には「ガスクロマトグラフィーを用いて食の過去を探る:近年の成果から」というタイトルで、近年飛躍的な進展を見せている、GCを用いた「考古生化学的研究」についてご紹介いただきました。

  方法としては、土器などの考古遺物の内部にわずかに残存する土器片試料から胎土、付着物を採取・粉体化して脂質を抽出し、GC-MSを用いて残存脂質濃度の評価、生物指標化合物の検出、異性体比の測定、またGC-c-IRMSを用いて個別脂質の炭素安定同位体比を測定し、その地域に存在した土器の伝統、食生活習慣を解き明かされた研究内容について御紹介いただきました。具体的な成果として、日本や朝鮮半島、ロシアアムール河下流域、中流域、中国長江流域などで新石器時代の土器を分析され、それぞれの地域で異なる土器使用の伝統が存在したことを示された成果、キビPanicum Miliaceumの生物指標を土器胎土から検出された成果、素焼き土器に限られていた分析対象を窯焼き土器に応用された成果について紹介いただきました。御発表の時間は限られていましたが、聴衆からも「土器の保存状態などによっては物質が残っていないこともあるのか?」「土器の分析はバラツキも出てくるのか?」などの多くの質問があり、その関心の高さが伺えました。

  GCにて分析を進められた研究内容でありましたが、検出された物質から描かれ膨らむ当時の生活様式描写には、同じ研究者として大きな夢とロマンを感じました。今後さらに様々なことが明らかになっていくことが期待される研究でありますとともに、今後の展開が大変楽しみになる御講演でありました。  

(酒類総合研究所 岸本徹)


 

第377回ガスクロマトグラフィー研究懇談会講演会
開催報告「主題:検出器の最新技術と基礎を学ぶ」

 2022年6月24日(金)、北とぴあ飛鳥ホール(東京都北区)にて第377回ガスクロマトグラフィー研究懇談会特別講演会が開催された。本研究懇談会では毎年度初回の時期に基礎的な内容を主体とした講演会を催しており、今年度は「検出器の最新技術と基礎を学ぶ」というテーマのもと、運営委員の和田、木下、坂本が幹事を務め、プログラムは以下に示すようにGC検出器に因んで主題講演2題のほか、基礎講座1題と技術講演3題から構成された。また、本講演会は会場聴講ならびにオンライン聴講のハイブリッド形式で実施され、合計で約70名が参加した。全面的ではないものの、会場対面形式の実施は2019年11月以来であった。会場では講師や関係者が会場に資料を並べ、本会の佐藤委員長も2年半ぶりに長崎から東京に来て会場で開催挨拶して久々に参加者・講演者等との情報交換も行えた。

 

プログラム(13:30~16:40)
【主題講演】
1. 超小型質量分析計MX908の技術と化学剤検知 (エス・ティ・ジャパン)小林 恒夫 化学兵器の現場探知など危機管理製品として利用される装置として、高速GCとトロイダル型イオントラップ質量分析装置を一体化したポータブルGC-MSやターボポンプ不要な低真空質量分析法を活用した検出器が紹介された。現場利用で求められる要素である、電池利用や大気圧イオン化法、短時間測定を適えており、極微量レベルの検出も可能としていた。

2. ボールSAW(弾性表面波)センサの原理と超小型GCへの応用 (ボールウェーブ、東北大名誉教授)山中 一司  球状素子の多重周回する弾性表面波(SAW)を利用したボールSAWセンサが開発され、ボール表面にターゲットに合わせた感応薄膜をコートすることで、超微量な水分や水素の検知が実現されており、その技術をGC検出器へ発展させた装置について解説がなされた。MEMS技術が活用されたカラムと組み合わせることで手のひらサイズのGCが造られ、ppbオーダーの定量分析も達成している。適用例として、日本酒の香気成分の分析が紹介された。

【基礎講座】
3. GCの検出器と質量分析計の基礎 (アジレント・テクノロジー)中村 貞夫 選択性、感度、ダイナミックレンジ、応答感度など検出器としての基本的な特徴や主な検出器の原理のほか、質量分析計について基礎的な事項についての解説がなされた。

【技術講演】
4. 硫黄化学発光検出器(SCD)の原理と応用例 (島津製作所)長尾 優 硫黄に特異的な検出器であるSCDについて、装置の概要や他の特異的検出器と比較して、定量分析時の優位性などについて解説がなされた。

5. MS用キャピラリーカラムについて (レステック)内海 貝 低ブリードのMS用キャピラリーカラムについて、高分子量化、架橋、silarylene構造といった液相における特徴の解説のほか、PLOTカラムをMSにつなぐ際の注意点が紹介された。

6. 検出器特性を利用した同定法(PID、DELCD、RGD) (テクノインターナショナル)野口 政明 SRI社による検出器である光イオン化検出器(PID)、塩素および臭素に選択性をもつ乾式電気誘導検出器(DELCD)、還元性のガスを対象とした還元ガス検出器(RGD)について、各検出器の特徴ならびにクロマトグラムの違いが示された。

本講演会を通じて、GC検出器について再認識や新たな知見が得られたほか、最新技術を駆使した装置の小型化が進んでおり、新たな形でガスクロマトグラフィーが社会に活用される姿を感じ取ることができた。講演を予定していたSpectra Analysis社製GC-IR(DiscovIR)の紹介(ケン商品開発)高橋 慶氏のオンラインでの講演はweb接続のトラブルがありスライド切替が不調であったため、後日、録画した講演を参加者に聴講して頂くこととなった。最後に、本講演会の開催にあたり、ご講演をご快諾していただきました講師の皆様、ご来場ならびにオンラインにて聴講していただきました皆様に深く御礼を申し上げます。

〔(地独)東京都立産業技術研究センター 木下健司〕

 

 


 

第376回ガスクロマトグラフィー研究懇談会特別講演会
開催報告 「主題:持続可能な社会に役立つガスクロマトグラフィー 第1回」

第376回ガスクロマトグラフィー研究懇談会特別講演会 開催報告 「主題:持続可能な社会に役立つガスクロマトグラフィー 第1回」 2022年2月18日(金)に第376回特別講演会を開催しました。例年、特別講演会は11月末~12月初旬の開催ですが、2020年は開催を中止しており、この度、会期をずらしての2021年度最後にしてようやく実施することができました。

  11月にWEB委員会を実施し2022年の計画を立てた結果、近年注目されているSDGsをテーマとした講演会のシリーズ化/過去に分析化学会年会や討論会で人気のあったリクエスト講演/ポスター発表/会場とオンラインのハイブリッド形式で開催、などを試みることとなりました。しかしながら、この2月の特別講演会は現在のコロナ禍の状況から当初予定しておりましたハイブリッド形式を断念してオンラインのみの開催とし、ポスター発表はショートプレゼンテーションに変更となりました。

  さて、本講演会はSDGs第1回目として2.飢餓、3.保健、6.水/衛生、12.持続可能な消費と生産、13.気候変動、15.陸上資源 を中心とした講演を各分野の研究を行っている研究者の方々を講師としてお招きしました。また、運営委員所属団体によるショートプレゼンテーションでは、技術的な内容だけでなく、新しい製品紹介、施設紹介などの内容も含まれました。総合司会は、トレイジャンの大森委員が、各講演の座長は山上委員、内海委員、木下委員、そして日本電子の西島委員と生方氏が務めました。北とぴあの会場を使ったハイブリッド形式の試みと進行調整は前田副委員長他が行いました。

  WEB配信は、2021年と同様の一般財団法人大気環境総合センター様のシステムを利用し、北とぴあに来ていただける講師が集まって会場から行いました。参加者は定員の100名に達し、大変盛況でした。

〔主題講演〕
 1題目の講演は、シャトー・メルシャン椀子ワイナリー 小林弘憲先生でした。小林先生には2015年5月に山梨大学で開催された「分析化学討論会特別講演会セパレーションサイエンス特別講演」でワイン香気についてお話をいただいており、そのリクエスト講演となりました。前半は、ワインの香り(フレーバー、アロマ、ブーケ等)のコントロールのお話を、後半は現在携わられている椀子ワイナリー建設について紹介いただきました。 ワインの香りは、甲州ワインのネガティブ/ポジティブアロマについて説明がありましたが、その中でもやはりチオール化合物の重要性や扱いの難しさを再認識させられました。2000年当時から「良いワインは、良いブドウから」、「まずブドウありき」を合言葉に取り組んできたワイナリー建設、そして椀子ワイナリーの3つの使命である「地域との共生」「自然との共生」「未来との共生」については、ぶどうや酒類関係者だけでなく、わたしたち地球に生きるすべてのヒトが見つめなおすべきテーマであると感じました。

  2題目は、大阪大学生物工学の古野正浩先生の食品メタボロミクスのお話で、2021年9月にオンライン開催された「分析化学会年会」のリクエスト講演でした。古野先生は、そのセパレーションサイエンスの広く深い知識と、現在の研究職の両方の観点から、市販の捕集剤や極性カラムについて製造メーカーへの改善点などについてお話しくださいました。参加していたラボ製品メーカーにとっては耳の痛い話もありましたが、このようなご講演ができるのも古野先生ならでは、です。聴講者にとって、参考になる話題が詰め込まれた40分でした。

  3題目の森林総合研究所の松原恵理先生のご講演は「香りでつなぐ人の生活と森の循環」という魅力的な演題でした。松原先生は、ヒトの身体やココロをはかるのがお仕事ということで、木材の香りの分析と人への効果などについて、森林総合研究所の紹介と併せてご説明いただきました。間伐作業の重要さやその再利用、また、スギ材やヒノキ材また、クロモジ茶の香りの人への生理心理学的な効果に関する研究は、働き方が大きな変化を遂げた昨今、間違いなく新たに再注目するべき重要なテーマであると実感しました。更に、近年、森林総合研究所で取り組まれている蒸留酒と醸造酒の消費者テストを毎年11~12月に開催しておられ、どなたでも参加可能とのことでした。

  最後の講演は東海大学理学部の関根嘉香教授のヒト皮膚からの発生ガスのご講演でした。関根先生には2019年の日本分析化学年会で御講演後、反響があったため今回の講演会のトリをお願いしました。皮膚から出るガスが、生活環境、精神状態、その他によってかわるということで、中年男性のジアセチルやノネナール、ダイエットによるアセトン、アルコール代謝のアセトアルデヒド、喫煙者のニコチン、アンモニアはメンタルや体が疲れた時、など家族や周囲の大切な人の変化に気づくためのヒントについてレクチャーいただきました。「皮膚ガスは心と体の静かなる声」とは関根先生のお言葉ですが、身近な人のにおいが変わった際には「くさい」などと言わずに相手を気遣うべきなのかもしれません。

〔ショートプレゼンテーション〕
  招待ショートプレゼンテーションでは、2018年の日本分析化学年会で御講演頂いた山中先生が設立したボールウェーブ社/東北大学ベンチャーの赤尾慎吾先生による手のひらサイズのGCを用いた日本酒香気成分分析について紹介いただきました。検出器には革新的なボールSAWセンサの技術を用いており、更に香気成分の濃縮システムと分離カラムを内蔵した、全く新しいタイプの小型GCでした。日本酒の醸造工程の品質管理や酵母育成開発における生成物質の現場での分析の適用が期待されます。講演会終了後にデモンストレーションも行ってくださり、オンライン研究会であるにもかかわらずライブ感を楽しむことができました。

  運営委員所属団体によるショートプレゼンテーションは9演題あり、1.アイスティサイエンスの松尾委員からはオンラインSPE-GCを用いたメタボローム用前処理自動化技術、2.フロンティア・ラボの渡辺委員から極性におい成分分析用固相抽出素子、3.玄川リサーチは羽田からハチミツ分析例、4.Restekの内海委員より高速GCカラムキット、5.ジーエルサイエンスの武田氏からは皮膚ガス簡易捕集法の紹介、6.トレイジャンの大森委員による新製品カラム、7.西川計測の小野氏からはSDGsに向けた香気分析について、8.佐々木氏からは東京都立産業技術研究センターで実施している匂い分析例、9.日本電子の生方氏によるGC-TOFMSの紹介がありました。

  今回の特別講演会は、初の試みずくめで幹事を務めさせていただいた大森委員はじめとする古野委員、私他運営委員も戸惑いながら準備を進めてまいりました。申込時点から当日のWEB開催まで、スタッフが不慣れな中、講演中チャットやメールでアドバイスをくださった参加者の皆様に心よりお礼申し上げます。また、運営にご協力いただいた(一財)大気環境総合センター様にこの場を借りて御礼申し上げます。今後、会員の皆様のポスター発表も検討していく所存です。多くの研究者がガスクロマトグラフィー研究懇談会を通じて、今までより一層活発な討論を行い交流できることを願っております。

ガスクロマトグラフィー研究懇談会 運営委員
(玄川リサーチ)羽田三奈子


 

第375回ガスクロマトグラフィー研究懇談会研究会
開催報告 「主題:コロナ禍のもとでの研究活動」

本研究懇談会では、コロナ禍のなかで、新たな試みとしてWebセミナーを行う事で活動を継続し、普段研究会に参加できない地方の会員の参加を得る等一定の成果を上げつつあります。昨年度の2021年2月に開催したオンライン形式での研究会をはじめ、6月開催の第373回研究会では運営委員の役割を忘れないよう、運営委員の紹介があれば学生も参加できるようにしました。初回は録画の配信のみ、2回目は配信元からライブ配信を加え、3回目になる今回は録画配信に加えてリモートでの講師参加も試みました。参加者も、運営委員の紹介があれば学生と(公社)日本分析化学会会員の参加もできるようにしました。また、直接会う事が難しい中で、コミュニケーションを図る事ができるよう、講演毎に質疑応答や情報交換する事も試しました。

今回の研究会の主題として、貴重な記録としてコロナ禍での運営委員の研究、研究活動、研究室運営等を紹介する企画とし、企業の方からはコロナ禍でのラボワークやワークスタイルの変化に関連した話題を提供いただき、会員の方に情報提供しました。3時間にわたる研究会は3部にわかれ、研究活動紹介1として3題が提供されました。講演題目と演者は、「長崎国際大薬学部 佐藤研究室の研究と研究活動紹介(長崎国際大)佐藤博」で、研究室での学生の研究状況や現在すすめている研究・研究室の機器紹介等盛りだくさんの内容でした。「コロナ禍におけるガスクロマトグラフィーに関連した取り組み ―都産技の技術相談を中心に紹介―(都産技)木下健司」では、東京都産業技術研究センターの簡単な紹介の後、コロナ禍での技術相談対応や相談案件を見越しての予備検討の紹介があり、相談件数は対応策ができた後では対策前より増加傾向にあるとの事で、中小企業向けの相談を止めない工夫の成果が出ていました。「コロナ禍における山梨大学の講義・研究活動について(山梨大)植田郁生」では、研究室の研究内容は6月に報告されたので、主に、山梨大学全体の対応や、研究室として可能な限り対面での実習や講義を続ける努力が紹介されました。学外での活動、特に必修となっている学会参加と報告について、2年間リアルな学会開催がなく、従来の学会活動を経験しないまま卒業してしまう学生が出てしまったことは印象的でした。

企業からの、コロナ禍でのラボワークに関連した話題提供として3題が提供されました。「COVID-19がもたらした共同研究などに関わる変化(フロンティア・ラボ)渡辺壱」では、企業の活動紹介の後、研究開発型企業として実施している国際共同研究の変化が紹介されました。ロックダウンが続く中、現地のスタッフが果たす役割や、研究計画そのものの遂行に時間がかかるなかで研究成果を得る事の困難さなどが伝えられました。「コロナ禍でのワークスタイルの変化(アサヒビール)舛田晋」では、管理側からの視点でリモートワークを行う中でのラボ運営やスタッフとのコミュニケーション維持、メンタル面での配慮などメリット・デメリットなど、現場の状況を紹介いただきました。定期的に事務室に集まる時間を作りコミュニケーションを図る取り組みなどの配慮は大切であると感じました。「リモート・ローテーションワークに貢献する前処理自動化技術(アイスティサイエンス)松尾俊介」では、ラボ分析を効率よく行う為に役立つ前処理の自動化技術が紹介されました。時間がかかる前処理を自動化し、処理済みの試料をオンラインで分析に供する事で実験室に滞在する時間を有効に活用する為に役立ち、コロナ禍が収束した後も有効な技術と感じました。

最後の研究活動紹介2として3題提供され、「ガスクロマトグラフィー関連の研究と研究活動紹介(産総研)渡邉卓朗」では、研究室の簡単な紹介の後、組織の対応が研究を実施する現場に大きな影響を与えている例等が紹介されました。国際ビジネスでは日常的であるが、国際会議がオンラインになり移動時間は無くなったが時差のおかげで深夜の会議が増える事でストレスが増いるようでした。「日大生産工学部中釜研究室の研究と研究活動紹介(日大工)中釜達朗」では、Webでの講義資料の作成や受講者の理解度確認のためのレポート提出と確認等、受講の自由度が増した分提出物が増え、教える側も学生側も負担が増えた様子等が紹介されました。役に立つ教材作成と研究概要も紹介され興味深い内容でした。「酒類総合研究所でのガスクロマトグラフィーを活用した技術開発について(酒類研)岸本徹」では、財務省の研究所としての独特な研究について紹介され、研究活動の持続と成果紹介が行われました。将来につながる研究は技術移転が課題で、移転先との交流が回復するのを待つとの事です。

最後に委員長から、講師を含めて約50名の参加があり、参加頂いた方々に謝意を表明して終了しました。 WEB会議システムにご協力いただいた一般財団法人 大気環境総合センター様に心より御礼申し上げます。

ガスクロマトグラフィー研究懇談会 副委員長
((元)産総研) 前田 恒昭


 

 

第373回ガスクロマトグラフィー研究懇談会 研究会 開催報告

日本分析化学会ガスクロマトグラフィー研究懇談会(以下GC懇)は、2021年6月25日(金)に第373回研究懇談会・講演会を開催しました。今回の主題は「主題:ガスクロマトグラフィーの新刊紹介と前処理の新技術」で、基礎を学ぶための教科書として「ガスクロ・ガスマス自由自在」(丸善出版)の出版を予定しており、出版に先立ち紹介する事と、ガスクロマトグラフィーの前処理とその新技術の紹介を合わせて講演会を構成しました。
GC懇としては2月の総会、講演会に引き続き、オンライン形式(Webセミナー)での開催となり、講演者・聴講者ともリモートでの参加となりました。

<基礎講座1> 「ガスクロ・ガスマス自由自在(丸善出版)の新刊紹介」という題で、元産総研の前田副委員長に講演していただいた。内容は2部構成で、最初に、本新刊の構成から簡単な内容の紹介があり、その後監修時の留意したこと等を紹介していただいた。ガスクロマトグラフィー教科書は少なく、貴重な教科書として活用されると思います。秋頃には出版できるようです。

<基礎講座2> 基礎講座の2番目は、「ガスクロマトグラフ分析に活用されている固相抽出法の基礎」という題で、ジーエルサイエンスの三浦様に講演していただいた。固相抽出法の原理、操作例、応用から、SPMEやシリカモノリス固相剤の紹介までわかりやすく、詳細にご説明していただきました。

<主題講演>「ガスクロマトグラフィーの新技術」
講演1は、「固相抽出型デバイスによる空気中VOCとSVOCのGC分析」という題で、山梨大学の植田先生に講演していただいた。研究室の紹介映像が最初にあり目が引き付けられました。、繰り返し使用でき、少量の溶媒で抽出可能な固相抽出捕集デバイスを開発され、適用例を紹介いただきました。大気や室内環境中の多感芳香族、フタル酸エステル類、揮発性抗がん剤等の分析が、簡便かつ安価に実施できるという大変興味深い講演でした。

講演2は「分配型捕集剤を充填したNeedlExによるSVOC分析」という題で、信和化工の藤村様に講演していただきました。 針先内部に微小の吸着剤を充てんし、GCの注入口で熱脱着させる分析法で、従来使用されているメソポーラス吸着剤に代わり分配型捕集剤を充填することで、水中のTexanol、TXIBといったSVOCを捕集、分析する事例を紹介されました。大変面白い講演でした。

講演3は「低温濃縮について」という題で、ピコデバイスの津田様に講演していただきました。低温濃縮の基礎的なお話に続き、少量のガス中のVOCを、吸着材を使わず低温にて濃縮、加熱脱離できるデバイスについて講演していただきました。濃縮するガス量も少量で、濃縮時間も短く利点の多い、非常に面白いデバイスのお話でした。

今回も前回の総会・講演会に続きオンライン形式での開催となりました。80名を超える参加者に出席いただきました。各演題とも短時間の講演でしたが、コンパクトにまとまった、非常に面白い講演会でした。 WEB会議システムにご協力いただいた一般財団法人 大気環境総合センター様に心より御礼申し上げます。

ガスクロマトグラフィー研究懇談会 副委員長
((株)島津製作所) 和田 豊仁


 

第372回ガスクロマトグラフィー研究懇談会 研究会 開催報告
 

日本分析化学会ガスクロマトグラフィー研究懇談会(以下GC懇)は、2021年2月19日(金)に第372回研究会を開催した。今回の主題は「ガスクロマトグラフィーで用いるヘリウムガスの供給に関する話題と技術的対応」であり、ヘリウムの供給の現状から対応策等が紹介された。またGC懇としては初の試みとなるオンライン形式(Webセミナー)での開催となり、講演者・聴講者ともリモートでの参加となった。
基調講演では「ヘリウムの将来と展望」と題して日本エア・リキードの田首裕一朗氏より「ヘリウムの将来と展望」の講演を頂戴した。


ヘリウムは様々な分野で使用されており、ガスクロマトグラフィーに代表されるキャリヤーガス以外に、最近では半導体の製造工程、MRIやNMR測定、宇宙分野におけるロケットなど冷却を目的に使用されており、これらの産業分野で年間に3-4%の需要増加が予想されている。
ヘリウムは世界で産地が限定されており、米国、およびカタールが大部分を占めている。供給が滞る主な原因は老朽化したプラントの定期修理中のトラブル、あるいは米国のヘリウム戦略による備蓄である。2021年にロシアで新しいプラントが稼働して生産が開始される予定で、しばらくは供給が需要を上回ると予想される。これらの理由から、グローバルなヘリウムの調達が重要であり、サプライチェーンの構築が今後のヘリウム安定供給の課題である。
主題講演としては、GCメーカー二社より主に「対策」について講演いただいた。
「GC/MSにおけるHe削減と代替キャリヤーガスについて」 (アジレント・テクノロジー) 姉川 彩氏
「GCにおけるHe削減と代替キャリヤーガスについて」 (島津製作所) 和田 豊仁氏
ともに、日々の分析業務において「ヘリウムガスをいかに節約するか」と、「代替キャリヤーガスを使用する際のポイント」について講演され、姉川氏からは特にGC/MSにおいて代替キャリヤーガスを使用する際のポイント、和田氏からは各種GC検出器における代替キャリヤーガスの影響などについて詳しくご説明いただいた。


技術講演では、
1.キャリヤーガスを変更するとGC条件はどのように変更すればよいのか?
―条件設定とモデルクロマトグラムの確認ができるツールをご紹介―
(Restekコーポレーション) 海老原 卓也氏
ヘリウムガス以外のキャリヤーガスを使用するには、分析条件の最適化が必要となる。その為のメソッド変換ツールとして「EZGC Method Translator」と、データベースを活用したシミュレーションツールとして「
ProEZGC Chromatogram Modeler」が紹介された。
2.He代替水素キャリヤーガス対応、GC/GCMS用高純度ガス発生装置のご紹介
(ピークサイエンティフィックジャパン)鈴木 義昭氏
最新式の高純度な水素ガス発生装置「PRECISION」シリーズ、およびゼロエアジェネレータについて紹介された。
GC,GC/MS分析において、ヘリウムガスは欠くことができず、すべてのGC用ガスをヘリウムから置き換えることは困難である。そのため、今回の発表のあった「ヘリウムガスの節約」と「代替キャリヤーガスへの対応」は、今後も継続的な課題として取り組む必要がある。講演いただいた演者各位には、貴重な情報を共有いただき、感謝いたします。

みとしてオンライン形式での開催となりました。通信環境維持のため、ご案内をガスクロマトグラフィー研究懇談会会員に限定させていただいた事、また質問は講演終了後講師に直接メールにてお問合せいただく形となった事をご報告いたします。通例の集合開催とは異なり、遠方からもエントリーいただくことができ50名超える参加者に出席いただくことができました。今後GC懇の活動としての一つのモデルとすることができ、会議システムにご協力いただいた一般財団法人 大気環境総合センター様に心より御礼申し上げます。

(ガスクロマトグラフィー研究懇談会 副委員長,アジレント・テクノロジー(株))川上肇

 


 

第370回ガスクロマトグラフィー研究懇談会特別講演会開催報告

 2019年11月22日(金)、北とぴあ飛鳥ホール(東京都北区)にて第370回ガスクロマトグラフィー研究懇談会特別講演会が開催された。本研究懇談会では毎年年末近い時期に特別講演会を催しており、今年度は「科学と文化に貢献するガスクロマトグラフィー-人を知る、地球を知る、宇宙を知る-」の壮大なテーマのもと、プログラムは以下に示すように多分野にわたる内容の主題講演5題のほか、装置関連メーカー各社による技術講演5題から構成された。10:00から17:00までと長丁場であったものの、聴衆から高い関心が寄せられていた。

 理化学研究所高橋様による主題講演「極微量の硫黄同位体比分析による、遺跡から出土した水銀朱の産地同定」では、基準物質に対する硫黄の同位体比(34S/32S)の算出をベースとした分析手法が示された。また、特に古代遺跡品のように採取量が限られる試料を分析するための改善策として、2段階のクライオフォーカシングを駆使した高感度化や硫黄を含まないテープを使ったサンプリング方法が紹介された。東北大学古川様による、最近新聞やテレビ他各方面から取材されホットな話題でもある「宇宙有機物と生命分子の起源」の講演では、生命の起源を探る背景や経緯について解説され、生命に関する有機化合物の調査にはクロマトグラフィーが必要不可欠であり、誘導体化法を駆使した解析の他、熱分解GCやGC-燃焼-同位体比質量分析などが試行されている状況を把握することができた。また、現状の課題としてキラル分離が挙げられ、今後のさらなる生命分子の起源解明が期待された。京都大学防災研究所佐々木様による「ドローンを活用した環境計測技術の新展開」では、通常空撮で利用されることの多いドローンを環境測定に応用する取り組みが行われており、従来のラジオゾンデを利用した方法では得難いデータ採取のためのモニタリングについて紹介された。現状では依然としてドローンの性能不足などいくつか課題があるとのことで、ドローンの発展に伴い本分野の発展が予想された。京都大学地球環境学堂田中様より、各方面で話題となっているマイクロプラスチックに関する講演「都市水環境系におけるマイクロプラスチックの挙動と微量有機化合物との関係」がなされ、マイクロプラスチックを取り巻く環境や動向、吸着する化学物質が示されたほか、実際の現場には煩雑で非常に手間のかかる作業が必要であり、調査するうえでの難しさや奥深さが感じられた。本講演会の最後として森林総合研究所大平様による主題講演「健康に役立つ森林の香り・木材の香り -最新の利用技術について‐」が行われた。新聞記事等を通じて森林浴のリフレッシュ効果や抗がん力改善効果が知られており、それには精油に含まれているテルペノイドが関与しているといわれる。森林や建築木材における特徴的なテルペノイド種の違いや健康増進機能への関与、消臭脱臭作用について示された後、環境負荷の小さい精油抽出法として開発された減圧式マイクロは水蒸気蒸留法の紹介がなされた。本抽出法により、これまでほとんど処分されていた植物枝葉は精油や抽出水、抽出残渣に分画され、さらにそれぞれが利用価値を有していて、空気質改善剤や消臭剤への商品化が実現されており、今後の日本の森林資源の利用価値拡大への展望が感じられた。

その他に技術講演においては、GC分析では誘導体化が必要となるアミノ酸や有機酸など極性化合物について、イオン交換固相抽出と誘導体化を組み合わせた固相誘導体化法ならびにその自動化システムの紹介(アイスティサイエンス 松尾様)やカラム用充填材に使用するケイソウ土における供給状況と別途開発されたマクロポーラスシリカの性能(信和化工 藤村様)、テルペノイドの分析方法に関する話題(Restek 岡村様)、大気中の窒素を利用する新規イオン源を用いたリアルタイム分析による長時間モニタリングの試行(エーエムアール 坂倉様)、感知閾値がppt、ppqオーダーとなるカビ臭分析を想定した高感度化のためのテクニック(サーモフィッシャーサイエンティフィク 土屋様)という多岐にわたる話題について新たなアプローチの紹介がなされた。

本講演会を通じて、考古学や宇宙科学、環境科学など広範囲にガスクロマトグラフィーが社会へ貢献している一端を窺い知ることができた。講演会終了後には、講演者を含め意見交換会が行われ、親睦を深めつつ有意義な情報交換がなされた。最後に、本講演会の開催にあたり、ご講演をご快諾していただきました講師の皆様、ご来場いただきました皆様に深く御礼を申し上げます。

〔(地独)東京都立産業技術研究センター 木下健司〕

第370回講演会写真


 

第366回ガスクロマトグラフィー研究懇談会 講演会・見学会開催報告

 2019年7月5日(金),東京都健康安全研究センターにおいて,標題の講演会・見学会が開催された.当センターの都合により参加人数を約30名に限定しての開催となった。

 開会挨拶では,GC懇委員長の佐藤先生(長崎国際大)から当センターとGC懇との関わりについてご紹介があり,元当センター職員の故竹内名誉会員(元委員長)や水石名誉会員(元副委員長)の懐かしい名前が挙がった。

 講演の初めに,当センター薬事環境科学部 守安貴子部長から当センターについての紹介があった。紹介の中で,当センターの前身が東京都立衛生研究所であること,平成15年の組織再編により現在の名称に改称されたこと等が紹介された。これを受けて参加者の方から「昔の都衛研でしたか」とお声がけいただき,改めて「都衛研」の名称が多くの方に親しまれていたことを実感した。当センターの組織及び業務内容は主にDVDで紹介されたが,その業務内容は感染症や食中毒の原因究明から食品・医薬品・環境に関する理化学分析,危険ドラッグやコンタクトレンズ等を対象とした生体影響試験など多岐に渡ることから,参加者からは「色々なことをやっているんですね」という感想の声が寄せられた。DVDによる紹介の他,具体的な危機管理対応事例として平成29年1月に問題となったC型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」偽装医薬品事件が紹介された。事件当時も話題になったが,ハーボニー配合錠1ボトルが150万円の価格であると紹介されると会場内がどよめいた。偽造品の中にはビタミンを含有する錠剤が入れられたボトルもあり,このような問題のある製品を市場から速やかに排除することで,都民の生命や健康を守っていることが紹介された。

 続いて,当センター薬事環境科学部環境衛生研究科 斎藤育江副参事研究員から「空気中のフタル酸エステル類測定法-衛生試験法・注解 空気試験法の改定-」というタイトルで講演があった。講演では,現在,厚生労働行政推進調査事業費補助金で行われている「化学物質リスク研究事業」の一環として取り組んでいる「室内空気環境汚染化学物質の標準試験法の策定およびリスク低減化に関する研究」での検討内容が紹介された.主に空気捕集用サンプラーとフタル酸ジイソノニル(DINP)及びフタル酸ジイソデシル(DIDP)の分離定量法の検討結果について紹介があり,特にDINPとDIDPはフタル酸エステル類の中でも異性体が多く,m/zが共通で,保持時間が一部重なることからISOでも標準試験法が設定されていない難しいテーマであると説明があった。会場内には実際にフタル酸エステル類の測定を経験している参加者も多く,溶媒や装置由来のフタル酸エステル類の低減方法に関する議論や試験法の設定が難しいDINP及びDIDPの分離定量法に関する多くの意見やアイデアが出され,活発な討論が繰り広げられた。

 最後に,当センター薬事環境科学部医薬品研究科 中嶋順一主任研究員から「危険ドラッグ等の行政試験で活用されるGC-MSの分析例」が紹介された。講演では,植物片に合成カンナビノドを混入したいわゆる「脱法ハーブ」に関する分析例が紹介され,規制薬物の構造の一部を変えた未規制薬物が次々と出現する中,NMRや単結晶X線構造解析装置を用いて未規制薬物の構造を決定し,規制へと導いた事例が取り上げられた。また,現在,2,300以上もの規制薬物が存在する中,迅速に規制薬物を分析するためには,GC-MSライブラリーが不可欠であることにも触れられた。最近の事例としては,植物粉末からコウボク(ホオノキの樹皮)が検出された事例が紹介された。これに絡めて生薬に関するクイズが出されるなど,所々に参加者を和ませるようなトピックスが入った講演であった。先の講演の討論が非常に活発で,本講演の質疑応答時間が取れなくなってしまったが,その後の休憩時間中,「このような危険ドラッグはどこで作られているのか?」など演者と複数の参加者との間で熱い議論が展開された。

 講演会が終了した後,環境衛生研究科,医薬品研究科,残留物質研究科の3研究科を3グループに分かれて見学した。各研究科では組織や業務に関する簡単な説明があり,分析装置が置いてある機器室等を見学した。環境衛生研究科では鑑別用に飼育されている蚊媒介感染症を引き起こす蚊が飼育されている様子や2011年3月の東日本大震災以降,注目された空間放射線量を測定するモニタリングポスト,医薬品研究科では生薬切片の顕微鏡画像や生薬保管庫などが紹介された。

 意見交換会は都庁の職員食堂に場所を移して開催された。少し曇ってはいたものの,高層ビルの32階からの眺望は良好で,参加者が大きなガラス窓越しにその眺望を楽しんでいた。見学会場から30分以上徒歩で移動したこともあり,乾杯のビールはいつも以上に美味しく味わうことが出来た。また,東京都の蔵元澤乃井の地酒が人気で,涼しげな水色の瓶が次々と空いた。分析談義も大変盛り上がり,予定の終了時刻が過ぎても続けられる程,有意義な会となった。最後に,この場を借りて,本会にご協力,ご参加いただいた皆様に心より御礼申し上げます。

(東京都健康安全研究センター)坂本 美穂

 

東京都健康安全研究センター見学会

 

第365回ガスクロマトグラフィー研究懇談会 講演会開催報告

2019年5月31日に第365回ガスクロマトグラフィー研究懇談会 講演会が、王子の北トピア 飛鳥ホールにて開催された。

例年、年度初めの講演会は基礎講座を主に行っており、GC分析の基礎や試料調製などの手順について基礎的な知識を深めていただくのが目的である。今回の講演会は、「基礎講座 知っておくべきGC分析の基礎知識」-ガラス器具、天秤の取り扱いと検出器の基礎について-という題で、ガラス器具、天秤の取り扱いからはじまりGC分析の基礎的な話まで多岐にわたる講演を集めた。
参加者は約90名と盛況であった。

最初の講演は「誤解、間違いの多い理化学用ガラス機器の知識と取り扱い」という題で、 柴田科学 坂元様に講演いただいた。ガラス器具の特性や、計量器具の加熱の可否等、普段あまり聞くことのできない話、実験前に知っていなければならない話を分かりやすくお話しいただき、大変ためになる講演であった。

 次の講演は「天秤の取り扱いについて 」という題で、島津製作所 越様に講演いただいた。電子天秤の特性、秤量値に影響を与える要素、校正の仕方、上手に使うコツ等、詳細に説明をしていただいた。実験室に必ず一つはある天秤だが、改めて使い方を聞くことはほとんどなく、非常にためになった。

 3題めは「GC検出器の概要」という題で、アジレントテクノロジー 加賀美様に講演いただいた。最初にHe供給の現状および代替ガス等のお話、その後、検出器の特性について説明いただいた。He供給問題は最近の大きな課題でタイムリーな話であった。検出器の概要は、ほぼすべての検出器をわかりやすく説明いただいた。

 4題めは「大きな声では言えない分析プチ情報」という題で島津製作所 和田(副委員長)が講演した。主にぶんせき誌2007年に寄稿された「入門講座 失敗から学ぶ分析技術のコツ」の一部紹介、「2010年セパレーションサイエンス座談会」の事例紹介、分析プチ情報の紹介を行った。

技術講演2題はいずれも基礎的な内容であった。はじめは「GCカラムの基礎」という題でRESTEKコーポレーションの 内海委員に講演いただいた。キャピラリカラムの基礎的な話を分かりやすくお話しいただいた。次は「GCにおける前処理」という題でGLサイエンスの馬場様が講演された。固相抽出などの前処理法、GCに接続するオプション等をわかりやすく説明していただいた。

いずれの講演も聴講者は熱心に聴講されており質問も活発であった。
講演終了後は意見交換会にて議論を深められた。
年に1回の基礎講座であるが、GC分析にとどまらず、どの分析でも共通する話も多く、満足度の高い講演会であった。

(株)島津製作所 和田豊仁

 

第365回研究会開場風景

 

第364回ガスクロマトグラフィー研究懇談会 講演会・見学会 開催
報告見学場所(独)奈良文化財研究所

「古代史の解明に貢献する分析化学」という副題を付けた標題の研究会が、去る4月19日(金)に同研究所 平城宮跡資料館大講堂で開催された。

古都大和西大寺での開催であり、参加者数が心配されたが、予想に反して約70人と盛況であった。関東など遠方からの参加者も多かった。12世紀半の長きにわたり人々が守り繋いできた正倉院宝物と、天平時代のタイムカプセルである出土品のロマンが、多くの人を誘ったのかもしれない。

オープニングは、(元)宮内庁正倉院事務所長 杉本 一樹先生による「地上の正倉院宝物― 伝世品への多面的なアプローチ 」と題するご講演であった。

杉本先生は東大寺正倉の勅封扉の開閉や、その9000点を超える宝物や記録文書、60種以上の生薬・香料類の管理/調査研究に携わって来られたとのこと。正倉院を語ることのできる最適任者であると感じた。紹介された多くの宝物の写真の中に、光明皇后直筆という美しい国家珍宝帳があった。皇后の姿を写したという仏像や絵画は多いが、その墨筆から相当な才色兼備であることが感じられた。
正倉院宝物は、聖武天皇崩御後の756年6月に光明皇后が最初に献物を入倉したのが始まりとされている。南都焼き打ちなど多くの事件・動乱から守られてきた宝物は、平成の世は杉本氏はじめ15人の正倉院職員で繋いでこられたとのこと、頭の下がる思いがした。

地上の宝物の後は、出土品から古代の生活や文化、交易を紐解く研究のご講演であった。平城宮・京跡は地下水位が高く、粘土質の嫌気状態で遺物が埋没しているため、その保存の状態は良いそうである。

奈文研都城発掘調査部上席研究員神野 恵先生の「古代日本の油・脂・漆・膠ー考古学的手法の限界と化学分析の可能性ー」では、実際の出土土器が会場の後に陳列された。僅かに残る付着物をどの様にすれば分析できるか、参加者とディスカッションするためである。標題の油や漆、膠は税として平城京へ集められたとの事。律令制度が生まれ中央集権が進むとともに、様々な道具の開発や技術・文化の発展が急速に進んだ時代だったのであろう。当時の記録によれば胡麻油、荏油、麻子油、イヌザンショウ油など7種の植物油が用いられていたことが確認され、現代では珍しいイヌザンショウ油は、祭祀の灯明や馬に使用していたのではないかと話されていた。

最後のご講演は、奈文研国際遺跡研究室室長庄田慎矢先生の「クロマトグラフィーが切り開くミクロ考古学の世界」であった。文字通り、顕微鏡レベルを超えたミクロの世界の考古学的研究についての講演であった。たとえば、遺跡から出土した土器の胎土内に残存している有機物を抽出し、ガスクロマトグラフィーによってさまざまなバイオマーカーの検出を試みており、Miliacinというキビに特有のマーカーの検出事例などが紹介された。また、個別脂肪酸の炭素安定同位体比測定をすることにより、土器による調理内容が地域や時期により明確に異なることも示された。現在は、極少量の土器粉末にテトラメチルアンモニウムを添加しての誘導体化熱分解GCと、ほぼ非破壊で測定できるDART-MS法に興味を持たれているとのことであった。休憩中も、土器片を前にしての分析法の熱心なディスカッションが続いていた。

見学は、広大な平城京跡に再建された大極殿から始まった。内部には御簾と高御座が置かれており、ちょうど平成から令和への話題と重なった。その後、大極殿東側の、嵯峨天皇に譲位した後に奈良に戻った平城上皇の住居跡との関連が想定されている発掘現場に案内された。素人には分かりにくいが、僅かな土砂の色の違いなどを解説されるたびに見学者から歓声が上がった。再建中の南大門の工事現場でも、ちょうど巨大な主柱材が重機で吊り上げられており、歓声が上がっていた。晴天にも恵まれた見学会であった。遅咲きの八重桜を散らしていた平城京の南風は心地よかった。

少し汗をかいた後の意見交換会場には、生駒、葛城、春日など奈良各地の蔵元の銘酒が置かれていた。奈良は、日本酒(清酒)発祥の地で、小さな酒蔵が多いとのこと。どれも特長があり甲乙つけがたかった。平城京にも 造酒司(ミキノツカサ)があったとのこと、古代に思いを馳せながらの分析談義は遅くまで続いた。参加者は、警察、大学、国研、受託分析、メーカーなど多岐にわたっていた。

専門の異なる研究者の情報交換やヒューマンネットワークは重要であり、今後も継続したいとGC懇委員長(長崎国際大)佐藤先生は結んだ。世話役の(奈文研)庄田先生、(東京工芸大)秋山委員、(元サントリー生命財団)小村委員にこの場を借りて御礼申し上げたい。

(阪大) 古野正浩

 


講演会場風景


講演会場風景


神野先生の貴重な資料を前にディスカッション


平城京大極殿前


平城京発掘現場

 
第362回ガスクロマトグラフィー研究懇談会特別講演会開催報告

2018年12月5日(水)、北とぴあ飛鳥ホール(東京都北区)にて第362回ガスクロマトグラフィー研究懇談会特別講演会が開催された。本研究懇談会では毎年の年末時期に特別講演会を催しており、今年度は「豊かで快適な生活を支えるガスクロマトグラフィー‐身近なにおいを科学する‐」のテーマが掲げられた。プログラムは以下に示すように主題講演5題や技術講演8題のほか、1題の国際学会報告という盛沢山な内容ということもあり、参加者は215名と盛況であり、中には遠方からの参加者も含まれ、におい関連のテーマへの関心の高さが印象付けられた。

講演題目と演者は、ビールの香り:その‘構造’を解き明かす~76香気成分によるビールの香りの再構築~(アサヒビール)岸本徹、茶製造技術開発におけるGCの利用~香り緑茶の開発~(静岡県農林技術研究所)勝野剛、マンダム社の体臭研究の知見と製品の香りについて(マンダム)澤田真希、食品・農作物の加熱評価としての香気成分分析とメタボローム解析(慶應義塾大学)若山正隆、香りによる柑橘品種の分類 (山口大学)赤壁善彦で、関連する技術講演としてDART-MSを用いたリアルタイムフレーバーリリース/レトロネーザル香気成分分析 (エーエムアール)坂倉幹始、SPME-GC/MSを用いた食品中オフフレーバー分析の紹介 (アジレント・テクノロジー)姉川彩、AEIイオン源における異臭成分の定性感度 (サーモフィッシャーサイエンティフィック)土屋文彦、GC-TOFMSを用いた生活の中のさまざまな臭いの網羅的解析 (LECOジャパン)樺島文恵、新規捕集剤ソルブスター用いた分析事例の紹介 (アステック)中台遼平、イオン液体を液相に用いたユニークなGCカラム(シグマアルドリッチジャパン)植田泰輔 、GC/EI及びGC/ソフトイオン化法を用いた統合解析手法の開発と応用例 (日本電子)生方正章 、食品に関わるにおい分析事例のご紹介(島津製作所)牧岡慎吾が紹介された。

国際会議報告は42nd International Symposium on Capillary Chromatography and 15th GCxGC Symposiumレポート (アナリティクセンス) 羽田三奈子で日本からの参加を呼びかけた。

主題講演においては、新製品開発や品質管理などを目的とした香気成分や臭気成分の研究について具体的な取り組みをご講演いただき、測定結果と官能的結果との複雑な関連性や香気に寄与する化合物を探るうえでの難しさや奥深さが感じられた。また、香りの分析結果が植物の分類やメタボローム解析などとリンクし、さらにそれに基づく商品開発へつながる可能性が示唆され、ガスクロマトグラフィーの社会への貢献の一端を窺い知ることができた。その他に装置関連メーカー各社による技術講演においては、香気成分の経時変化のモニタリング、複雑で多数に及ぶ検出化合物の解析手法、微量成分の追跡のための高感度検出、質量スペクトルライブラリ未登録の化合物の解析、試料濃縮導入方法の紹介など多岐にわたる話題について新たなアプローチ手法の紹介がなされた。講演会終了後には、講演者を囲みながら約80名の参加者のもと意見交換会が行われ、親睦を深めつつ有意義な情報交換がなされた。

 最後に、本講演会の開催にあたり、ご講演をご快諾していただきました講師の皆様、ご来場いただきました皆様に深く御礼を申し上げます。

(地独)東京都立産業技術研究センター 木下健司

 


第24回ガスクロマトグラフィー研究懇談会「キャピラリーガスクロマトグラフィー講習会」開催報告

GC研究懇談会では年次活動の一つとして、キャピラリーGC分析に携わられる方に対し分析技術を習得いただくための基礎講習である「キャピラリーガスクロマトグラフィー講習会(以下CGC講習会)」を実施しております。今年も麻布大学のご厚意で実習会場を提供いただき、8月1日(水)~3日(金)に開催いたしました。

CGC講習会は、「基礎と応用(アプリケーション)」をテーマにキャピラリーガスクロマトグラフィーの基礎項目についての講義と、基礎技術及び実際のアプリケーション実習で構成されます。今回のアプリケーション実習では、近年様々な業界で関心の高まっている「匂い・異臭」をテーマとし、前処理から試料導入、分離、検出と体得いただけるプログラムで開催いたしました。

24回目となる今年は、初日の講義のみに参加された方が5名、実習もあわせて3日間参加された方が19名と、総数24名に受講いただきました。昨年から始めた学生が参加しやすい仕組みも効果を発揮して参加者が増加いたしました。 初日の講義では、保母先生による基礎理論に続き、各委員より分離、試料導入、検出器、GC/MSおよびマススペクトル解析について講演いただきました。副読本として配布いたしました「役に立つガスクロ分析」も参考に、二日目以降の実習に即した内容で行われました。

二日目からは4グループに分かれ、試料注入法、分離の最適化、異なる検出器での異臭成分測定、およびGC/MSによる異臭成分測定について実習を行いました。最近では機器の自動化も進み、注入操作の経験のない方も多数いらっしゃいましたが、基本操作を体験いただくことで一層理解も深まると考え、マイクロシリンジおよびガスタイトシリンジによるマニュアル注入にもトライしていただきました。「自動化」や「省力化」は、これまでも、これからもニーズが高まることは間違いありませんが、機器を正しく取り扱う上で装置がブラックボックス化してしまうのは必ずしも好ましいことではないと考えます。きちんと仕組みを理解した上でより的確な分析を行っていただく意味でも、参加者各位には貴重な経験となったかと思います。

GC懇としては、今後もこの講習会を継続し、GC分析技術の展開と発展を目指したいと考えております。 今回も定期試験中でご多忙の中、麻布大学の高木先生、杉田先生、久松先生には会場準備から各種手配、実施までご尽力いただき、誠にありがとうございました。また、講習会のアレンジをしていただいた杉田先生、講義と実習を担当して頂いた運営委員並びに講師派遣と機材提供頂いた企業の方々の協力に感謝いたします。今回は異常ともいえる猛暑の中、遠方からも多数参加いただけたことに感謝申し上げます。

ガスクロマトグラフィー研究懇談会副委員長
アジレント・テクノロジー(株) 川上 肇

 

 

第358回ガスクロマトグラフィー研究会 講演会・見学会開催報告ー(一社) 日本海事検定協会ー

 今年の研究会/見学会は,一般社団法人日本海事検定協会で開催された。梅雨明けの猛暑にも関わらず,およそ60名の方の参加があった。今回、見学させていただいた一般社団法人日本海事検定協会 分析センターは、横浜市の南端である金沢区に位置し,協会創立100周年記念事業の一環として2014年に新築され,輸出入に係る通関分析をはじめとする検査検定,異物分析,科学的手法を用いたトラブル原因調査,食品中の残留農薬試験や遺伝子検査,衛生ロスプリベンション(衛生管理によるリスクの排除)まで幅広く行っており,普段経験できないような話を聞くことができた。

 講演の部では,藤井健二氏から「ガソリン成分の分析における国内・海外規格の比較」の発表があった。日本は燃料の多くを海外に依存するため,成分の分析は非常に重要であり、ガソリンは200種類以上の炭化水素の混合物であることから,全成分分析に100mの無極性カラムを用いて,1検体3時間かけて分離分析していることに感銘を受けた。軽油中のオレフィンや芳香族炭化水素の分析には,移動相として二酸化炭素を用いた超臨界流体クロマトグラフィーを用いており、最先端のクロマトグラフ手法ルーチンワークに取り入れている高い技術力を感じた。

 引き続き山口範章氏より,「燃料電池自動車の水素燃料規格分析」の講演があった。すでに燃料電池自動車は販売されており,水素はクリーンで環境に優しいガスとして近年注目されている。燃料電池自動車は一回の充填で750kmの航続距離があり、ガソリン車に匹敵する。水素を充填するステーションは現在100ヶ所ほどが日本各地に設置されており,今後さらに多くの充填所の建設が予定されているということであった。水素は様々な方法から工業的に生産されており,99.97%という非常に高い純度が要求されている。このような水素規格を満たしていることを証明するためにも,ガスクロマトグラフィーが役に立っていることもわかった。

 三題目の講演は池谷千栄子氏から,「ガスクロマトグラフィー/安定同位体質量分析計の利用例」と題して,安定同位体分析の食品への応用に関する講演があった。植物の種類により光合成の代謝系において炭素の安定同位体比に違いが生じることから,日本酒に米以外の原料から醸造されたアルコールが添加されたかを同位体分析で判別することができる。この方法を用いると落花生の産地判別などにも応用することができるため,私たちの身近な食品の産地偽装の解明にも一役買っているとの報告があった。

 最後は人見朋子氏による,「GCxGCの分析事例,科学的手法によるトラブル原因調査」の講演であった。スラッジを生成し易い燃料油に含まれる高分子化合物の分子量分布を電界脱離イオン化法によるGCxGC-TOF/MSで測定することで,燃料油によるスラッジ生成特性を明らかにし,さらに原油の分析にも応用していた。また様々なトラブルに対する受託分析も行っており,例えば脱税目的の不正軽油の鑑定,あるいは食品の異物分析による食の安心安全にも大きく貢献されていることが判った。

 講演の後は,安全と利便性を第一に設計された最新の施設を各班に分かれて見学させていただいた。廊下からガラス窓を通して実験室を常時見学することができる構造になっており,開かれた試験所であることがわかった。また,廊下は大型装置の搬入を考慮し幅広く設計され,実験室は自然光を取り込み閉鎖的で暗くなりがちな空間を開放的で明るいデザインにしているなど、環境にも配慮した未来設計をしていることがとても印象的であった。

 ガスクロマトグラフは分析項目毎に整理整頓されて設置されており,分析後のガスは局所排気口に吸引されて外部に排出するなど安全に配慮した設計であった。また、ドラフトチャンバーは異常といってもいいほど多く設置されており,しかも,それぞれに高精度かつ高速で応答できる可変風量制御装置が接続され,室内に導入される空気量とドラフトから排出される空気量を常にコントロールしてバランスを維持しており,安全性の向上,あるいは実験環境の保護を高い次元で実現していることを感じた。ガスを安全に使用するという視点から,特殊ガスの配管は実験室廊下の天井にあえて露出配管させて,配管経路を視覚化することでメンテナンス等の簡便化を図り,さらに必要に応じて配管の延長も簡単に行うことができるという特徴もあり,常に変化に対応できる試験所を目指していることが伺えた。

3時間におよんだ講演会と見学会は瞬く間に終了し,参加者は非常に有意義な時間を過ごすことができた。最後になりましたが,このようなすばらしい機会をご提供して頂いた,(一社)日本海事検定協会様に心より御礼を申し上げます。

[エア・リキードラボラトリーズ 園部 淳]

 

第350回 ガスクロマトグラフィー研究会講演会報告

 2017年5月26日の午後に、第350回GC研究懇談会講演会が北とぴあ15Fペガサスホール、にて開催されました。主題は「いまさら聞けないトラブル解決法 -GCの基礎をもう一度考える-」というもので、GC分析の基礎についての講演でした。様々なトラブル事例等を盛り込まれた実践的な内容で、参加者は約90名と非常に盛況でした。

  最初の講演は「無機ガス分析の基礎」という題で、(株)エア・リキード・ラボラトリーズの園部様に講演いただきました。標準ガスについて詳細に説明、ガス分析の信頼度向上のノウハウを解説いただき、大変有用な講演でした。

 2題目は「前処理装置の基礎」という題でアジレントテクノロジー㈱の中村様に講演いただいた。GCに使用される前処理装置(HS、P&T等)についてわかりやすく解説いただきました。

  3題目は「試料準備(液体)と注入口の基礎)という題で報告者(㈱島津製作所)和田)が講演しました。固体、液体の標準試料調製と、試料注入時にスプリット/スプリットレス注入口で起きている事象を解説、トラブル事例等についてもお話ししました。

  4題目は「分離とクロマトグラムの基礎」という題で、レステックの内海様の講演いただきました。分離に関係する要因からカラムの種類、選択等について、トラブルシューティングを多く紹介いただきわかりやすく、有用な講演でした。

  5題目は「検出器の基礎」という題で西川計測㈱の山上様に講演いただきました。主にFID,ECDおよびMSについて原理から不具合の要因等にも言及いただき非常にためになった講演でした。

  6題目は「定量計算の基礎、分析値の信頼性を確保する不確かさ算出」という題で産総研の渡邉様に講演いただきました。不確かさの見積もり方法について、詳細でわかりやすく解説されました。正確な定量のためには、できる限り不確かさを意識し、試料調製することの大切さがよく理解できました。

  講演会場入り口近くでは関連企業によるカタログ展示も行われ、休憩時間に多くのお客様が来訪されていました。

  講演後の意見交換会は、関係者を含め約40名が参加されました。活発な議論、意見交換がかわされ、あっという間に終了の時間になってしまいました。 今回の講演は年に一度のGCの基礎的な講演でした。トラブルシューテイングを多く紹介いただいた実践的な内容で満足度が高い講演会だったと思います。

(株)島津製作所 和田豊仁

講演の様子 

展示会場の様子

 
第348回 ガスクロマトグラフィー研究会特別講演会開催報告

2016年11月25日(金),北とぴあ(東京都北区)13階飛鳥ホールにおいて,第348回 ガスクロマトグラフィー研究会特別講演会が開催されました。「社会の安全・安心を守るガスクロマトグラフィー」を講演主題とし,薬物関連分析で活躍するGC,GC/MSを副題とした3題の招待講演と5題の技術講演が行われました。日常気づかない様々な分野でGCやGC-MSは利用され,社会の安全・安心を守り豊かな生活を支えています。今回のテーマとして選ばれた分野はとても幅広いものではありましたが,様々な分野で活躍されている第一線の研究者の皆様から興味ある話題を提供頂きました。例年より早い開催となりましたが,100名以上の参加者があり大盛況のうちに講演会が終了しました。

特別講演1題目は山田 雅之先生((公財)競走馬理化学研究所)より「競走馬における薬物検査の現状」と題してご講演を頂きました。競馬レースにおいてレースの公正確保は重要な課題であるため,禁止薬物を検査する業務は大変重要な業務であることが分かりました。薬物検査では,主にGC-MSやLC-MS等が用いられており,同定基準はAORC(Association of Official Racing Chemists)で決められており,多様化する違反薬物の同定基準をAORCで定めているとのことです。また,近年注目されている薬物や分析法のご紹介もあり,測定方法だけではなく,前処理方法についてもご紹介頂きました。

特別講演2題目は辻川 健治先生(科学警察研究所法科学第三部化学第一研究室)より「法薬毒物分野における違法薬物検査の現状」と題してご講演を頂きました。違法薬物についての法規制や取り締まりの現状などの総論を初め,様々な薬物検査の方法についてのご紹介を頂きました。さらに,実際に検査を行う立場からの分析法の弱点や装置についての注意点を教えて頂き,現場に戻ってすぐに活用できると思いました。最後に薬物プロファイリング分析についてのご講演を頂き,今後の課題についても実例を持って紹介して頂きました。

招待講演は植木 真琴先生 (カタールアンチドーピングラボラトリー)より「ドーピング検査の現状」と題してご講演を頂きました。ステロイド薬トゥリナボール®のGC-NPD測定例を初めに,薬物測定のGC,GC-MSへの係わりをお話しいただいてから,世界アンチ・ドーピング機構(WADA)で常時禁止されている化学物質のご紹介を頂きました。新しい測定方法としては,ステロイド由来の薬物を調べるGC燃焼安定同位体比質量分析計の紹介がありました。また,リオデジャネイロ五輪の直前に話題となりましたロシアチームの組織的なドーピング手法の紹介もあり,ドーピングについて様々な側面からのお話しは大変興味深く感じました。

技術講演1題目は佐々野僚一氏((株)アイスティサイエンス)より「固相誘導体化によるメタボローム分析」と題して,アミノ酸を保持させる陽イオン交換樹脂と有機酸を保持させる陰イオン交換樹脂の新しい積層固相カートリッジによるメタボロームの迅速分析とオンライン固相抽出GC-MSのご紹介を頂きました。

技術講演2題目は小笠原亮氏(アジレントテクノロジー(株))より「GC/Q-TOFによる薬物分析」と題して,同社のGC/Q-TOFによる薬物分析のアプリケーションを中心にご紹介を頂きました。 

技術講演3題目は坂井健朗氏((株)島津製作所)より「GC-MSによる生体試料中の短鎖脂肪酸の分析」と題して,生体試料において揮発しやすい短鎖脂肪酸を新しい誘導体化を用いた前処理からGC-MSの測定までのご紹介を頂きました。

技術講演4題目は渡辺壱氏(フロンティア・ラボ(株))より「前処理装置を用いたGC/MS法の法科学への応用例」と題して,前処理装置パイロライザーを用いた法科学分野に対応したGC-MS測定のご紹介を頂きました。
技術講演5題目は土屋文彦氏(サーモフィッシャーサイエンティフィック(株))より「高分解能GC-MSを用いた検体間比較の有効性とワークフロー」と題して,同社の取り扱っている高分解GC-MSのご紹介と今後のGC-MS分析の展望についてご講演を頂きました。

昼食や技術講演の間にありました休憩時間では,関連企業の製品やカタログ展示があり,新製品の情報やアプリケーションの紹介もあり多くの方々が情報収集を行っておりました。

最後に前田恒昭委員長により閉会のご挨拶があり,その後,17階にあるレストラン山海亭に場を移して意見交換会が行われました。大勢の方が意見交換会に参加されて活発な意見が飛び交わされ,参加者の親睦も深められて大変有意義な時間を過ごすことが出来ました。

 (株式会社日立ハイテクサイエンス) 大川 真

 

 

第344回ガスクロマトグラフィー研究会・見学会開催報告

 第344回ガスクロマトグラフィー研究会・見学会は、(株)伊藤園様の御協力を得て、同社の静岡相良工場および併設される中央研究所にお伺いし開催させていただきました。御講演を頂いたあとに研究所と工場の見学をさせて頂きました。

 (株)伊藤園の静岡相良工場と中央研究所は茶処の静岡県牧之原市の茶畑に囲まれた約61000m2の敷地内に立地し、製造部門と研究開発部門を合わせて、約400名の方が勤務されています。1974年に同工場(リーフ茶包装工場)が完成し、その後、2001年に麦茶ティーバッグ工場が完成、2006年に粉末茶包装ラインを導入、2009年にリーフ包装新ラインを導入、2013年にはコーヒー焙煎加工新工場を建設、2016年には抹茶工房の建設と、拡大を続けています。お客様の安心と安全に応えるために2000年にはISO14001認証、2002年にISO9001認証、2013年にFSSC22000認証を取得されています。敷地内に併設される中央研究所は1986年に完成し、2001年には中央研究所第二研究棟が建設されています。

  当日の研究会では、まず(株)伊藤園の中央研究所の岡野谷和則様より「緑茶のおいしさと品質について」という演題で御講演をいただきました。茶の歴史のお話から、茶のおいしさに関わる呈味成分や香気成分、それらの加工工程中での変化、オリなどの品質に関わる物質、官能検査方法について大変興味深い御講演いただきました。 お茶のおいしさの奥深さと、その難解な課題に果敢に挑戦される取組みを学びました。引き続いて品質管理二部の 荒川正人様より「伊藤園の残留農薬分析への取り組み」について御講演をいただきました。年間5000検体の農薬分析に対応するために取り組まれたQuEChERS法や超臨界抽出法についてのお話、感度向上と測定時間短縮のために導入されたLC-MS/MS分析についての御報告があり、同社の製品の安心と安全を守る品質管理体制を学びました。

  中央研究所の見学では、同社の香気分析、味成分、栄養成分、農産物原料を分析するための最先端の分析装置を見学しました。実験室、建物全体の隅々まで非常に整理整頓、清潔感が行き届き、安全と環境にも極めて高い配慮をされていることに大変感銘を受けました。 廊下から大きなガラス越しに実験室内全体を見渡せるようになっており、見学に来られたお客様が、同社の研究開発と品質管理体制に高い信頼を寄せられるであろうと実感いたしました。 その後の工場見学では、心休まるお茶の香りが漂うリーフ茶の包装工場、粉末茶の包装工場を見学させて頂きました。最先端の機械を導入された工場で、衛生面に細心の気配りをし、最高の品質、安心と安全を追求された工場は印象深く感動いたしました。そして「タリーズ」で使用するコーヒー豆の焙煎加工工場を、コーヒー豆の香しさを感じながら見学させて頂き、同社のこだわりの絶品コーヒーが出来上がる所以を知ることができたと思います。

  最後のお茶の試飲では、ミルクを連想させるような甘い香りが特徴の「かなやみどり」を試飲しました。抽出温度、抽出時間、茶葉の量、湯量によってお茶の味が変化することを教わり、特に低い閾値の渋味成分が抽出温度によって大きく異なることを試飲で実感いたしました。

  3時間に渡る講演会・見学会は瞬く間に終了し、第344回ガスクロマトグラフィー研究会・見学会を終えました。今回訪問させていただいた(株)伊藤園の静岡相良工場と中央研究所は,同社の開発と生産の中枢を担う組織であり、同社の商品開発への挑戦、衛生や品質管理に強い責任をもった取り組みに、同じ食品会社に勤務する者として強く感銘を受けました。この地に見学に訪れた方々がより一層益々、伊藤園のファンになって行かれることを感じ、伊藤園の商品が愛される理由を知ることができる訪問でありました。

  最後になりましたが,岡野谷和則様 (ガスクロマトグラフィー研究懇談会運営委員)をはじめ、このような心に残る素晴らしい研究会・見学会を企画してくださりました(株)伊藤園の皆様に心より御礼を申し上げます。

〔アサヒビール株式会社 酒類技術研究所 岸本 徹〕

 



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