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2014年度

第335回ガスクロマトグラフィー研究会、総会と研究会開催報告
「ガスクロマトグラフ分析に用いる純度管理技術と極微量分析への応用」

2015年2月20日(金)に北とぴあのペガサスホールで,ガスクロマトグラフィー(GC)研究懇談会主催の第335回GC研究会が百名ほどの参加で開催された。

13時からは総会が行われ,2014年度の会計報告と2015年度の予算案,2015年度の実施計画が承認された。 研究会は,大きく二つの主題に分かれており,前半に応用例として安定同位体比関連の講演2件と,後半はガスの純度管理に関する講演という構成であった。

招待講演の一題目は「食物連鎖網は可視化できるのか? ~GC/IRMSを用いたアミノ酸の安定同位体分析でみる生物と生物のつながり~」というタイトルで(独)海洋研究開発機構の力石嘉人氏にご講演いただいた。動植物のアミノ酸を構成する窒素の安定同位体比の計測結果から食物連鎖のカテゴリーを推定する手法の紹介であった.食物連鎖のどの段階にいるかがアミノ酸分析で数値化できるという試みであり,通常の微生物から小魚,大型魚類などへと移行する食物連鎖の紹介から始まり,食虫植物と虫の比較や,その食虫植物を食べる青虫の連鎖カテゴリー分けなど興味深いデータをご紹介いただけた。さらに,綺麗なピークを得ることが難しい安定同位体比計測時のクロマトグラムの美しさにも驚かされた。招待講演の二題目は「環境保全分野のGC/IRMS利用の可能性」を山梨大学の風間ふたば先生と米山由紀先生お二人による,国際流域環境研究センター設立の経緯と,水の安定同位体比計測による起源推定の試みをご講演いただいた。

その後,ガスの純度管理に関する講演に移った。主題講演の一題目は「超高純度ガスの純度の考え方と微量不純物の測定方法」というタイトルで住友精化株式会社の安達 富士夫氏にご講演いただいた。標準ガスのカタログスペックの見方や,各社での表示方法の違いをユーザーの立場でどう判断すべきかなど有益な情報をいただいた。主題講演の二題目は「マイクロGCを活用した各種標準ガスの開発」を産総研の松本信洋氏にご講演いただいた。マイクロGCのような簡易なシステムでもノウハウの積み上げを元に世界水準のデータ取得が可能であるとの趣旨であった。

その後,技術講演として五題の講演があった。一題目は「PDD検出器の直線性」というタイトルでジーエルサイエンスの菅野了一氏にご講演いただいた。検出器の直線性や低濃度の不純物を高い信頼性で測定するためのノウハウが公開された。次に,同様の検出原理のBID検出器を用いた「BIDを用いたガス中不純物の高感度測定」を島津製作所の久保田諒氏にご講演いただいた。燃料電池用の水素燃料の品質規格に即した不純物の高感度測定に関する話で,通常当研究会に縁が無い方々にご参加いただくきっかけとなった講演であった。三題目は「標準ガスの安定化におけるシリンダー内面処理の影響」をエア・リキード・ラボラトリーズの園部淳氏にご講演いただいた。ユーザーが通常目にすることができない標準ガスの安定性など貴重なデータを公開していただき目からうろこであった。ユーザーとしては「標準ガス」という単語に安定性など大きな期待をしてしまうが,現実はそうでも無い場合があることを実感させられる有益な情報公開であった。四題目は「GC用ガスの純度維持に関する減圧弁の機能と影響」というタイトルでユタカの平野耕一氏にお話いただいた。減圧弁の構造から,信頼性を得るための使用方法のノウハウなどなかなか聞けない情報であった。最後は,「GC分析におけるキャリヤーガス純度の重要性とキャリヤーガス精製について」をリキッドガスの重富徹氏にご講演いただいた。純度の低いガスをキャリヤーとして用いたときの具体的な問題点をデータを元に示して,ガス精製器使用の重要性を示していただけた。

今回の講演は自らも講師を務めた園部委員が担当し取りまとめた。キャリヤーガスや標準ガス,そしてガス中不純物の管理など,実際に使用する現場ではその品質のばらつきなどで困っている現状があり,それに対する基本的な知見が得られる貴重な講演会であり,参加者からは好評をいただいた。

今回,初めて講演資料を事前にホームページ上にアップして必要なもののみ印刷して持参していただく方式をとった。準備が大変なこともあり,継続に関しては今後も検討を続けることになりそうである。

((一財)日本自動車研究所、運営委員 秋山 賢一)

 
第334回 ガスクロマトグラフィー研究懇談会

 2014年12月12日(金)、大田区産業プラザ、コンベンションホールにて「安全・安心な生活と豊かな文化を支えるガスクロマトグラフィー」を主題とした講演会が開催され、130名以上の方にご参加頂き、大盛況のうちに終了しました。

開会の挨拶として最初に、前田恒昭委員長((独)産業技術総合研究所)より、ガスクロマトグラフィー誕生60年の歴史と今年度の活動についてご説明がありました。

招待講演1題目は、「室内空気中の有機リン系難燃剤の分析」で、杉嵜佑樹先生(オーヤラックスクリーンサービス㈱)より講演がありました。我々の生活に欠かすことの出来ない難燃剤の話で、室内の空気・ハウスダストを捕集して、その中の有機リン系難燃剤を分析するまでの手法を分かりやすくご説明頂きました。

主題講演1題目は、「GCと農薬分析」で、山上仰先生(西川計測㈱)よりご講演がありました。農薬分析の歴史・基礎から始まり、クールオンカラム注入法、大量注入法やGCで分析困難な農薬を誘導体化して分析する例等ご説明頂き、農薬分析に関する基本から応用までを非常にわかりやすくお話いただきました。

技術講演1題目は、「GC/QTOFが支える安全・安心な生活」で小笠原亮先生(アジレント・テクノロジー㈱ )よりご説明がありました。危険度ドラッグ分析の近況と、標準品は一握りしか入手出来ず、マススペクトルのライブラリ登録されている物質も限られている難しい状況で、EPIC理論を用いた分子構造推定についてご紹介いただきました。

続いて、「QuEChERS法(クエッチャーズ法)を用いるGCによる食品中の残留農薬の分析」が、北見秀明先生(Restek Corporation)よりご説明がありました。QuEChERS法の紹介をされた後、サツマイモをQuEChERS法で前処理したサンプルと未処理のサンプルをGC-TOFMSで分析・比較し、QuEChERS法により綺麗なピークが得られ、同定性能(定性)が向上していることが分かりやすく説明されました。

昼休みを挟み午後より、招待講演2題目として、「清酒の品質と香気成分」が磯谷敦子先生((独)酒類総合研究所)よりご講演がありました。清酒の構成する味と香りの検討、カビ臭、老香(酸化劣化した匂い)についてのご説明がありました。更に、清酒中のカビ臭の原因となる、TCAを測定すると17点中、12点が閾値を越えているという分析結果をご報告されました。また麹菌がTCPからTCAに変換しているという非常に興味深いご説明がありました。

主題講演2題目は、「ビールに特徴的な香りを付与するホップ由来香気成分の解析」で岸本徹先生(アサヒビール㈱酒類技術研究所 )よりご説明がありました。ホップについて、マスカット様香気への寄与成分を特定し、4-mercapto-4-methylpentan-2-one(4MMP)が寄与していることを発見されました。pptレベルの分析をGCMSで分析する必要があり、当初は前処理に非常にご苦労されましたが、試行錯誤の末、簡易前処理法を確立され、高い精度で、容易に定量することが可能なったとのことです。

技術講演2題目は、「ダイナミックヘッドスペースを用いたMulti-volatile Method (MVM)による飲料中香気成分の網羅的分析」で、角川淳先生(ゲステル㈱)よりご紹介がありました。香気成分をそれぞれの性質に合わせて複数の捕集管に分けて連続的に捕集する、 Multi-volatile Method (MVM)を説明され、MVMによるコーヒー中の香気成分分析例について紹介されました。

続いて、「GC/MSによる食品分析手法のご紹介! 産地特定編」が、西村泰央先生(LECOジャパン合同会社)よりご説明がありました。コーヒー豆をGC×GC―TOFMSで分析し産地判別手法の開発例をご紹介されました。このような多変量解析を通じ官能試験や化学分析結果と総合的に評価することで、応用範囲はさらに高まると期待されるとのことです。

続いて、「スローフードとその網羅的分析法」が、宮川浩美先生(ジーエルサイエンス㈱)よりご紹介されました。GCによる代謝物の網羅的分析法、味噌の分析例、糖の含有量の多いサンプルの注意点、前処理法、容器の課題等、幅広くご紹介いただきました。

招待講演3題目は、「ニオイ分析による文化財保存のためのカビ種推定ソフトウェア研究」で、竹内孝江先生(奈良女子大学)よりご講演がありました。土壌由来のカビの揮発性代謝物のGC/MS分析について説明いただきました。更に、Ion Mobility Spectrometer (IMS)でのオンサイト分析および、GC/MS測定スペクトルからのカビ種を推定するソフトウェアMVOC Finderを構築された結果をご紹介いただきました。

技術講演3題目は、「GC/IRMSの基礎」で、秋山賢一郎様(サーモフィッシャーサイエンティフィック㈱)によりご説明いただきました。同位体の基礎を分かりやすくご説明頂き、GC/IRMSによる、メキシコでのテキーラの酸素・炭素の同位体比の例、ウオッカの分析例、覚せい剤の産地判別、バイアグラ偽造品の特定例等を紹介いただきました。

主題講演3題目は、「GC/IRMSによる酒や燃料中エタノールの炭素と酸素安定同位体比の測定による原料植物の分類」で、秋山賢一先生((一財) 日本自動車研究所)よりご講演いただきました。醸造用アルコール、サトウキビから作られたエタノールの炭素安定同位体比分析の比較結果、ビール・ウイスキー・ワインで炭素同位体比を比較しこの結果より、醸造用アルコールを混ぜているかが確認できる大変興味深い分析例を紹介頂きました。

最後に閉会のご挨拶として、前田恒昭委員長((独)産業技術総合研究所)より、会員の募集と、2015年2月20日(金)に研究会開催につての案内があり、講演会は終了いたしました。

 講演会の終了後、意見交換会が開催されました。大勢の参加者があり、活発な意見交換がおこなわれました。参加者の親睦も図られ、有意義な時間を過ごせました。

武守佑典(㈱島津製作所)


 
第20回キャピラリーガスクロマトグラフィー講習会

 麻布大学のご厚意で実習会場を提供頂き、首都大学から会場を移してから3回目、通算で第20回CGC講習会も無事終了いたしました。今回は、実習26名、講義のみ8名で総数34名、これに学生の聴講を加えて昨年より参加者が増えました。講習会初日は実習のテキストとして使われている「役に立つガスクロ分析」の内容に沿った講義を行い、2,3日目は4組にわかれて実習を行いました。実習は、テキストで学んだ事を実際の分析を通じて理解を深める内容でしたが、応用ではトランス脂肪酸を誘導体化して分析する方法、食品関連農薬と食品の匂い分析など最新の話題も取り入れました。講義内容には変更はありませんが、講師も少し入れ替わり世代交代が徐々に進んでおります。今回の講習会では、残念な事に保母先生にお話し頂いた基礎理論の部分の時間が少し短かった事と、誘導体化の実習部分で実際の分析ができなかった事があげられました。運営委員の間ではこれ等の点を反省し、来年はより良い実習にしていきたいとの声があがっており反省をふまえて変更したいと思います。

講習会2日目にはガスクロマトグラフィー研究懇談会恒例の講師と参加者、運営委員を交えての意見交換があり、今後の活動の助けとなるコミニケーションの機会が設けられ、活発な意見交換が行われました。実習参加者からは、参加してよかった、今まで使っていたが何をしているかよくわからなかったが実習がとても役に立ったなどの感想が寄せられました。反省点も含めて参加者の方の意見を取り入れてより良い講習会にしていきたいと思います。

試験中にもかかわらず麻布大学の高木先生、久松先生、兼島先生には大変お世話になり、また、講習会のアレンジをしていただいた代島さん、杉田さん、講義と実習を担当して頂いた運営委員並びに講師派遣と機材提供頂いた企業の方々の協力に感謝いたします。また、杉田委員が10月より麻布大学獣医学部の高木先生の研究室の講師となって着任されることになりました。CGC講習会の継続も含め、GC懇にとり大変うれしいニュースとなった講習会でした。

ガスクロマトグラフィー研究懇談会委員長
((独)産業技術総合研究所)前田恒昭

 


 

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