運営委員長挨拶

2025年9月11日 本WEBサイト上に掲載

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安心安全な食・農・生活を支える分析技術

運営委員長顔写真

表示・起源分析技術研究懇談会は2008年度に「起源と表示」をテーマに2回の勉強会を開催し,参加者の関心の高さを受けて「分野・分析手法を横断し,起源と表示に関する分析科学的研究を行い,学問の振興及び社会における利用を図ること」を目的として2008年12月に(社)日本分析化学会の13番目の研究懇談会として発足しました.その後も年2回の講演会を実施し18年目を迎えています.その間,社会的には食品の信頼性を揺るがす「表示」偽装事件が発生し,その都度,分析技術の重要性が認識され,多様な技術が開発され社会実装されました.そしてこれらの技術は表示偽装の抑止力となっています.

もうひとつ本懇談会では「起源」をキーワードとした法科学分野の異同識別,薬物・ドーピングなどに関する代謝物判断,文化財の産地推定などの研究も重要なテーマです.このようにユニークで幅広いディスカッショングループの形成を通じて,科学技術のイノベーションを起こしていきたいと考えます.今後も,規制行政機関はもとより,食品・医薬事業者の皆様との意見交換がますます重要となってくるでしょう.多様な分野からの積極的な参画をお願いする次第です.

最近の話題として,国内外のスタートアップ企業による培養肉やフードプリンターなど新たな食材や加工技術の開発が盛んとなっています.そして世界規模では,食料安全保障や食品の輸出入に関心が集まっています.今後は,国際的な視点で,表示・起源の課題を議論していく必要もあるでしょう.そして何よりAIの急速な普及も技術として取り込んでいく必要があるでしょう.

このように,食・農・生活を取り巻く環境が急速に変容しようとしていることは,皆さん日々感じておられることと思います.変化の激しい時代だからこそ,確固とした分析技術を基盤とした本懇談会の活動がますます重要となってくるのではないでしょうか.「表示・起源分析技術研究懇談会」は,これからも,分析技術で世界規模での食・農・生活の安心安全に貢献してまいります.

表示・起源分析技術研究懇談会  委員長 中野明正
千葉大学 大学院

(2025年9月1日)