• ホーム
  • 入会案内
  • 規約
  • 運営委員構成
  • 関連企業団体
  • お問い合わせ

第296回ガスクロマトグラフィ研究会開催報告

 標記研究会(前田委員長、産総研)が、2009年6月5日(金)、13時から17時30分まで、株式会社島津製作所の東京支社で開催された。参加者は60名程度であった。今回の主題は「GC/MSの使い方とGC/MSの最前線」である。開催にあたり、前田委員長から今年度で標記の講演会等が300回に達する旨の挨拶があり、改めてガスクロマトグラフィ研究懇談会の諸先輩の継続的な活動に敬意を感じた次第である。

まず、主題講演として「GC/MS初級講座」2演題があった。最初は「初めてGC/MSを購入するときの注意点とGC・GC/MS導入時の失敗例」という演題で(財)自動車研究所の秋山賢一氏に講演していただいた。内容は、秋山氏自身が経験したことや他の人から聞いた多種の分析失敗例であった。最低限の設備投資では必要な分析が出来ないことがありうることや、分析機器購入後は自身の責任であり、可能性をよく考えて購入に漏れがないかを考えるようにとアドバイスがあった。また、購入に関わる文書を残す、機器を試してみる、あまりにも新しいソフトは危険であるなど、メーカー、ユーザーともに心当たりのある内容であり、すぐにでも現場にて活かせる内容であった。

次に、「GC/MSの用語と基本的なイオン化」について、アジレントテクノロジーの代島茂樹氏が講演された。質量の単位など普段聞くことの出来ない話から詳細な説明まであった(内容の一部は分析学会誌2009年2月号p54-60 GC/MSのためのイオン化法-を参照)。また、市販のGC/MSにおけるイオン化と特徴、そして、EI、CI法などを分かりやすく説明された。

その後の15分間の休憩では会場内での協力企業の展示があり、こちらでも活発に質問や情報交換、カタログ紹介等が行われていた。

後半には技術講演5件が行われた。まず、日本電子の生方正章氏に国産唯一の「GC-HRTOFMSを用いた定量分析について」、2番目にLECO社の矢島敏行氏に「GC×GC-TOFMSの網羅的スクリーニング分析への応用」について、3番目にSGEジャパンの藤井大将氏に「Magne-TOF、TOF-MS用の最新高性能マグネティック型イオン検出器について」それぞれ講演していただいた。生方氏は、農薬の事例でGC-HRTOFMSを用いた添加回収結果など詳細なデータを紹介された。矢島氏の講演では、非侵襲的に補集できる呼気サンプルをGC×GC-TOFMSを用いて網羅的な分析に今後の呼気分析の発展が期待できると感じた。藤井氏の講演は新しい技術を採用したTOF-MS用エレクトロンマルチプライヤー(Magne TOF)の原理、飛行時間差で分離するTOF-MSの話であった。いずれも各社の最先端の話であった。4番目に、ゲステルの落合信夫氏が「四重極型GC-MSにおける精密質量スペクトルと最新の2次元GC技術」で話をされた。これは、CERNO BIOSCIENCE社が開発した質量スペクトルキャリブレションソフトの利用方法とビール中の香気成分分析への応用紹介であった。5番目に、アジレントテクノロジ-の穴沢秀峰氏が「GC/MS/FPDを用いる食品中残留農薬の高速スクリーニング分析」を紹介された。リテンションタイムロッキング、デコンボリューションレポーティングソフトウエア(DRS)を使用することによる時間が短縮される事例説明であった。6番目に島津製作所の川名氏が「GC/MSによるアミノ酸の迅速分析法」で講演され、ハイスループット分析を実現するための前処理、分析、データ解析の具体例を説明された。最後に、ジーエルサイエンスの武井義之氏が「ハイスループットアルカリ付加イオン化とキラルカラムの組合せー光学異性体の分離定量での有用性について」講演された。これは、GC-IAMS (Ion Attachment Mass Spectrometry)による光学異性体分析とショートカラム分析の話しであった。いずれも今後の分析に役立つ興味深い内容であった。

講演終了後は、講演者と参加者との恒例の意見交換会が開催されたが、こちらも大変盛況であった。次回の研究会も楽しみである。

最後にこの場をお借りして、講演者の皆様、参加いただいた多くの方々、協賛をいただいた企業の方々ならびにご協力いただいた関係各位に心より御礼申し上げます。

長崎国際大学 佐藤博

ページトップに戻る