3.11から考える分析化学 ー復興・研究・教育ー
趣旨
福島第一原子力発電所の事故によって放出された放射性物質による汚染が、福島県を中心にして広い範囲で今なお継続しており、今後も長期にわたってその影響が続くことが予想される。
このような汚染に対してこれまで分析化学が果たしてきたものは非常に大きいように思われる。しかしながら、汚染状態の修復は遅々として進んでおらず、地域住民の生活と健康についても十分安心できるところまで回復していないのが現状である。これらのことから本シンポジウムでは、3.11以降の様々な復興への対策の中で、分析化学が果たしてきた役割、また今後果たさなければならない役割について、これまで実際に様々な活動を行ってこられた研究者の講演を聞きながら考えてみたい。
依頼講演講師:講演題目
渡邊 明 (福島大):「大気環境放射性物質の動態理解と放射性物質分析の課題」
森田 貴己 (水産庁):「放射性物質の水産物への影響」
佐藤 正知 (福島高専):「福島県における除染と発生する廃棄物の管理」
藤吉 亮子 (北大院工):「3.11から始まった北大における人材育成」
宇宙と生命の謎に迫る ー分析化学の挑戦ー
趣旨
無限に広がる宇宙の一つである地球では、人類をはじめとする様々な生物が今日まで活動を続けてきた。しかし、我々は他の天体にも生物がいるのか?あるいは、自分たちの起源が何でありどのように進化してきたのか?十分な理解を得るには至っていない。
はやぶさが持ち帰った宇宙塵、他の天体の鉱物、そして隕石のような試料には、それら疑問に対する回答を得る手がかりが隠されていると思われる。しかし、これらの試料は稀少であるだけではなく、生命と関連のある有機物の含有量も少なく、多くの情報を得る上で分析化学の発展と進歩は欠かせない。本主題は、宇宙と生命の謎を解明する分析化学が担うべき役割について討論したい。
依頼講演講師:講演題目
小林 憲正 (横浜国大工):「宇宙に生命の起源を探る」
藪田 ひかる(阪大理):「サンプルリターンにおける放射光軟X線分光分析の役割:
惑星物質探査から将来生命探査まで」
圦本 尚義 (北大理):「はやぶさとその先ー分析化学の発展に期待することー」
大竹 翼 (北大工):「縞状鉄鉱層の微量元素・同位体分析によって紐解く地球と生命の共進化」
マリンサイエンス ー分析化学からのアプローチー
趣旨
海洋生物資源の生産の場である海洋環境を分析化学の手法を用いて総合的に解析し、生物生産との関係を明らかにする必要がある。また海洋における多種多様な生物には、陸上生物にはみられない貴重な成分を含むものがあり、それらの物質がもつ機能を利用する科学技術を発展させるため、分析化学からのアプローチが欠かせない。
本主題は、海洋環境中の化学成分測定および海洋生物がもつ機能性物質の解析とその利用などに関わる分析化学の果たす役割について討論を行いたい。
依頼講演講師:講演題目
宗林由樹 (京都大学化学研究所):「現代海洋の生物活性微量金属のマッピング」
渡邉 豊 (北大地環研):「分析化学的アプローチによる海洋炭素循環の時空間変動の把握」
宮下和夫 (北大水産):「藻類脂質の機能性解析」
鈴木敏之 (中央水研):「微量海洋生物毒の探索,監視における分析化学の役割」