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2010年度

Separation Sciences 2010開催報告書

Separation Sciences 2010-安全安心と快適を支える分離と検出の科学-(実行委員長:産総研 前田恒昭)が、8月31日(火)と9月1日(水)の両日にわたって、幕張メッセ国際会議場で開催された。
Separation Sciences は、分離分析関連の研究懇談会の情報交換を目的として、1993年に開催された分離科学関連研究懇談会連合発表会に端を発する日本分析化学会の本部事業である。翌年からSS○○(略称;○には年度が入る)とし、幹事役を各研究懇談会の持ち回りにして研究発表と招待講演を組み合わせた研究発表会形式で開催が続いている。1996年からの数回は、分析科学の啓蒙の為に市民講座やワークショップを併設したり、招待講演に工夫をこらして会を盛り立ててきた。しかしながら設立当時は200名程度の参加者があったのに対し、近年は減少傾向が続いておりSS2009では70人程度であった。都心の便利な会場の確保が難しくなってきていることも要因として考えられるが、SSの他に年会、討論会、東京コンファレンスなど発表機会が増えていることも挙げられるであろう。また、分析機器や試薬の開発者は別にしても、環境や食品、医薬の分析研究者は、自分の専門分野での発表を好むことは否めない。さらに分析機器のユーザー層が望むところは、敷居の高い学会よりも手っ取り早く新人を教育してくれて、ノウハウを提供してくれるところにあるのが最近の風潮のようである。
そこでSS2010では、幹事役のGC研究懇談会が主体となり、研究懇談会間の情報交換に加えてユーザー層が参加しやすい形式での開催を試みた。分析展に合わせての開催である。周知のように分析展では、付設の新技術発表会/JAIMAコンファレンスや東京コンファレンスが同時開催されている。前者がメーカーや分析機器工業会からの情報発信、後者が将来の分析化学会会員への活動アピールや学会と分析機器工業会との連携協力という位置づけである。そこで、SSは講習会、座談会、招待講演と特別講演、一般発表等によるユーザーからの情報発信と意見交換を中心にプログラムを組み立てた。開催も分析展の1日前と初日の午前中とし、会員及び将来会員になる方へのサービスとして東京コンファレンスへの参加登録の相互乗り入れ、講演要旨集の合冊を実施した。SS2010ではイオンクロマトグラフィー、フローインジェクション分析の講習会、東京コンファレンスではガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、高分子、質量分析の講習会が開催されるので、参加登録の相互乗り入れによりこれ等の講習会にも参加できるよう便宜を図った。

SS2010の参加登録者は約150人で久しぶりに100名を越えた。口頭発表 13件、ポスター発表 25件(一般 16件,技術紹介 9件)、招待講演 4件、特別講演 3件、名誉講演 1件、座談会 6テーマ、IC研究懇談会とFIA研究懇談会による講習会が実施された。要旨集広告は27社であった。写真は、山岡亮平先生による名誉講演の風景である。プログラムの中から幾つかを選んで以下に紹介する。

  招待講演1「薬物動態分析の最近の状況」では、曽根原和彦先生(住化分析センター)から、①マイクロドーズ試験、②Incurred sample reanalysis、③代謝物の検索、④バイオ医薬品の免疫原性評価の4つのトピックスに関して紹介があった。それぞれ医薬品の開発スピードアップ、測定値の信頼性、安全性や毒性と目的は異なるが、分析法の信頼性向上や改善/改良が必要であることを強調されていた。招待講演2「残留農薬分析の信頼性確保」は、坂 真智子先生(残留農薬研究所)からの信頼性確保と問題点に関する話であった。前処理での抽出効率の評価が難しいこと、また、農薬の登録の際の作物残留性試験では、安定同位体標識試薬を使用しても代謝試験での妥当性の証明が難しいことなどを交えながら、信頼性確保のポイントを説明していただいた。宮崎良文先生(千葉大)の招待講演3「自然セラピーと快適性」と、馬場健史先生(阪大院工)の招待講演4「メタボロミクスのデータ解析」は、話題を変えた生理活性や有効成分探索の方法に関する話であった。実際に森林浴をしなくても、森林の写真を貼った部屋にいるだけで、ストレスマーカーの唾液中のコルチゾール濃度が下がるという宮崎先生の事例の紹介は、著者にとっては驚きであり、味覚、臭覚や聴覚なども合わせたときの人の生理活性の複雑さを改めて認識させられた。
  31日の13時から15時までは、午前中の関連研究講演を受け、同時に二つの教室でイオンクロマトグラフィー(IC)研究懇談会とフローインジェクション(FIA)研究懇談会の運営委員による講習会が行われた。講習の演題と演者は次のとおりである。
<役に立つイオンクロマト分析>
1) 最新のICの動向、田中一彦先生(広島大院国際)
2) ICの基礎技術、関口陽子先生(日本ダイオネクス)
3) ICの基本操作、家氏 淳先生(島津製作所)
4) ICの実際分析への応用、野々村 誠先生(環境技術評価研)
<役に立つフローインジェクション(FIA)分析>
1) FIAの基礎技術、酒井忠雄先生(愛知工大)
2) FIAを用いる実際分析、小熊幸一先生(千葉大院工)
3) 化学分析の全自動化、本水昌二先生(岡山大院自然)
4) FIAを用いる環境分析、手嶋紀雄先生(愛知工大),樋口慶郎先生(小川商会)、朴善姫先生(相馬光学),大野慎介先生(三菱化学アナリテック)
  どちらも入門から実際の使用法までの詳細な解説があり、さらにFIAは簡単な実験基材までを持込んでの有意義な講習会であったが、参加者が少なめであったのが残念である。31日は分析展前日でユーザー層の来場が少なかった。開催日時や会告の宣伝不足が反省点である。講習会の後は、ポスター発表が15時15分から17時、これと少し重なって16時より19時まで座談会が行われた。ポスター発表では事前に各1分程度の簡単な紹介もあり、活発な意見交換が行われた。座談会は、進行役の数人の識者とユーザー層とが、日頃抱える問題点に関してディスカッションを行えるようにした新しい企画であった。どのテーマも30名ほどの参加者があり白熱した議論が交わされていたが、ユーザー層の参加は少ない感じがした。座談会のテーマと進行役は次のとおりであった。
1) 残留分析のデータの信頼性:坂真智子先生(残研)、杉田和俊先生(三菱化学アナリテック)、神山和夫先生(ハウス食品)、永山敏廣先生(都健康安全センター)
2) LCMSのイオンサプレッションを考える:鎌倉重雄先生 (住化分セ)、大津義明先生(アステラス)、高橋 豊先生(日本電子)、滝埜昌彦先生 (アジレント)
3) 微粒子カラムとモノリスカラムを使いこなす:須藤良久先生(CERI)、佐々木俊哉先生(ウォーターズ)、柴田 亮先生、清 晴世先生(メルク)、田中信男先生(京都工繊大)
4) キー成分の効率の良い見つけ方/データ解析の工夫:馬場健史先生(阪大院工)、小村 啓先生(サントリー)、秋本 智先生(ジーエルサイエンス)、宮野 博先生(味の素)
5) GCのトラブル解決法:和田豊仁先生(島津製作所)、安藤 晶先生(ジーエルサイエンス)、中村貞夫先生(アジレント)
6) GC/MSでの回収率の異常を考える:秋山賢一先生(日本自動車研)、山上 仰先生(西川計測)、佐々野僚一先生(アイスティサイエンス)
  開催に先立ち、座談会と講演会の要旨はGC懇のホームページに掲載され東京コンファレンスへの参加登録の相互乗り入れと共に参加者への便宜がはかられた。
翌 9/1は、各研究懇談会の特別講演と名誉講演が開催された。最初の講演は、IC研究懇談会からの「EANET活動を通じた東アジアにおける酸性沈着の現状把握」と題する大泉 毅先生(日環センター・アジア大気汚染研究センター)の東アジア酸性雨モニタリングネットワークに関する活動報告であった。地球レベルの気象条件に左右される酸性雨の問題は、広域での統一方法による観測が重要であり、2001年からの測定データが蓄積されているとのことであったが、欧州に比べて酸性雨による硫酸イオンの沈着が数倍も多いことは、国レベルでの早い解決が望まれるところである。FIA研究懇談会からは、「流れ分析の規格化」と題する中村栄子先生(横浜国大)のJIS化の進行状況の話があった。すでに通則はJISとされているが、工場排水試験法(JIS2010)や環境分析の実試料に対応するため、個別の分析種毎の規格を提案中との事である。対象分析種が多いだけに、関係者にとっては大変なご苦労であろうと思う。LC研究懇談会からは、本会会長でもある中村 洋先生(東京理科大)から「日本分析化学会分析士資格認証制度の創設について」の話があった。LC研究懇談会が先頭を切って、10/19に液体クロマトグラフィー分析士初段認定試験を実施するとのことで、趣旨に同調して他の研究懇談会も認定試験の準備をするよう依頼があった。
  SS2010の締めくくりとして、京都工芸繊維大学名誉教授の山岡亮平先生による「GC/MSでみた昆虫フェロモンワンダーランド」と題する名誉講演が行われた。山岡先生がアリのフェロモンを利用して、黒沢 明監督の映画に協力したことやテレビで「アリのサッカー」が放映されたことは有名である。アリが特有のフェロモンでなく、比較的に単純な炭化水素の組成のパターン比で<好き・嫌い>や<仲間>を認識しているというのは驚きであった。

学会/講習会/シンポジウムなどの催しは、その時代に応じた役割を担い、それなりの位置づけで会に参加される方へのサービスやメリットを提供してきた。上述したように、SSは研究懇談会間の情報交換、ユーザー参加の情報交換という形式を保ってきたが、変化対応が求められているのかもしれない。今回の運営は、試行錯誤の一つであるが、分離科学関連研究懇談会に他の研究懇談会の協力も得られる事となれば、今後大いに発展する事が期待できると考えている。
今回の新しい試みに快くご協力下さった(社)分析機器工業会、分析化学会本部及び東京コンファレンスの実行委員の方々に感謝するとともに、SSの各研究懇談会と広告提供の各社のご理解とご支援に厚く御礼申しあげます。

[産総研 前田恒昭、ジーエルサイエンス 古野正浩]


 

第305回ガスクロマトグラフィー研究会見学会報告

今年(2010年)の見学会は8月20日金曜日にアサヒビール(株)茨城工場と研究開発センターに伺いました。つくばエクスプレス 守谷駅より15分程で研究開発センターに到着。研究開発センターではビールに関する研究・開発を幅広く行っており、鰐川氏のアレンジにより田頭素行様(アサヒビール食の基盤技術研究所)より「ポリフェノール成分の分離精製と活性評価」、尾崎一隆様(アサヒビール酒類開発研究所)より「ビールの官能評価とおいしさ追求の取り組み」の講演を頂きました。講演終了後、再びバスに乗りビール工場へ。ビールの製造過程に沿って工場を見学させていただきました。工場見学では運が良いのか悪いのか、年に1回のメンテナンス(清掃)に当たっており、箱詰めなどのラインは休止中。少し残念でした。しかし、最上階の試飲室(一般の試飲室ではありません)で、マイスターたちの注ぐビールを飲んだら、気分は最高!黒ビールもあり、時間を忘れての懇親が続きました。日が落ちかけた頃、試飲会は終了。話したりないのか、飲み足りないのかは分かりませんが、一部の方たちは更に懇親を深めるために・・・。今回は同業他社の方々にも多数ご参加頂き、定員40名いっぱいでお断りしなければならない状況でした。ご迷惑をおかけした方もいらっしゃるかと思いますが、参加された方々にとっては暑い夏に最高の見学会でした。

(文責:三菱化学アナリテック 杉田和俊)


 

第304回ガスクロマトグラフィー研究会 参加報告

6月11日に「水と安全に関わる分析技術」と題してオルガノ株式会社(江東区新砂)にて第304回(社)日本分析化学会ガスクロマトグラフィー研究懇談会主催で講演会が開催され約60名の参加があった。

招待講演として、原田雅美様(サントリービジネスエキスパート(株)品質保証本部安全性科学センター)より「食品企業における品質保証現場の分析技術」、その他、高橋あかね様(オルガノ(株)機能商品事業部)より「微量有機物分析に最適な超純水システム」、基礎講座として、安藤晶様(ジーエルサイエンス(株))より「ヘッドスペース分析法初級講座」についてのご講演を頂いた。原田様からは自社製品の品質保証としてペットボトルの異臭の話や製品に用いる原水の品質管理など、日頃手にしているペットボトル飲料に関する話題を提供いただいた。高橋様からはあのカミオカンデの中に実際に入られた体験を話していただいた。カミオカンデ中には純水が満たされていたのですね!皆様はご存じでしたでしょうか?安藤様からは、基礎講座として水中のVOCを測定する代表的な手法のヘッドスペース法(スタティック、ダイナミック、パージ・トラップ)について原理などの説明を判りやすく解説していただいた。

その他にも、島津製作所、日本電子、金陵電機、テクノインターナショナル及びジーエルサイエンス殿から水の中の有害成分について、最新のヘッドスペース手法やパージアンドトラップ手法、抽出などの前処理方法や自動化、現場測定になどについて技術講演があり、活発な意見交換が行われた。また、実際の現場測定車がオルガノ様の駐車場に来ており、現場測定の一端を垣間見ることができた。

講演会終了後も懇親会にて、ガスクロ談義で大いに盛り上がり、話は尽きなかった。

文責 三菱化学アナリテック 杉田和俊

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2009年度報告書