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2009年度

ガスクロマトグラフィー研究懇談会 300回記念特別講演会
(第302回ガスクロマトグラフィー研究会)開催報告書

2009年12月11日、江戸東京博物館ホールにて「安心・安全と快適な生活を支える分析化学」の題名で、標記特別講演会が開催されました。あいにくの冷たい雨にもかかわらず、予想を上回る200名に及ぶ参加者を得て、大盛況のうちに終了しました。
最初に開会の挨拶が前田恒昭委員長((独)産業技術総合研究所)より行われました。これまでのガスクロマトグラフとGC研究懇談会の変遷や、海外交流も踏まえた、明るい未来に向けた展望のお話がありました。
主題講演1の1題目は「ビール中の香気成分分析 ~ビール中で効いている香気成分~」で、鰐川彰氏(アサヒビール株式会社)より講演がありました。ビールの香気成分は全て解明されておらず、ホップの香り成分(マスカット様の香り)だけでも産地差があり、鮮度低下(酸化臭)による変化もあるそうです。また、必ずしも、成分と匂いは1対1に対応しておらず、各成分が総合的に影響しているため、香気成分の解明は慎重に行う必要があるとのことでした。分析手法は固相マイクロ抽出(SPME)やスターバー抽出によるGCMS分析の他、匂い嗅ぎGCが主流との内容でした。
主題講演1の2題目は「気になる体臭とニオイ抑制技術」で、田中孝祐氏(ライオン株式会社)より講演がありました。制汗剤開発の経緯を説明されました。性別により不快と感じる成分や強度が違い、加齢臭以外にも年代によって臭いの違いがあるそうです。その臭い成分を特定し、抑制する植物エキスを選定し、その後商品化を行われているとの話でした。また、官能試験と、匂い嗅ぎGCは必須ですと話されていました。
主題講演1の3題目は「食品用容器包装の有害化学物質分析について」で、金子令子氏(東京都健康安全研究センター)より講演がありました。食品衛生法による器具や容器の検査規格のお話で、市場に流通している、皿、コップ、レンゲ、鍋、容器、フィルム、ボトルなど食品に直接接触する全ての物が対象で、規制成分の分析紹介でした。
午後からは、主題講演2として「ヘプタクロール・ディルドリン等のリスク管理」で、清家伸康氏(独立行政法人農業環境技術研究所)より講演がありました。有機塩素系農薬(OCPs)、残留性有機汚染物質(POPs)や国際条約で指定されている成分の話をされました。ヘプタクロール・ディルドリンは既に使用禁止になっているが、土壌に残留していて、ウリ科作物のみに吸収濃縮され、基準を超えてしまう場合があるとのお話でした。
主題講演2の2題目は「環境化学と分析化学 -有機塩素系環境汚染物質を中心として-」で、宮田秀明氏(摂南大学・大阪工業大学)より講演がありました。有機塩素系環境汚染物質として、ダイオキシン、ポリ塩化ビフェニル(PCB)などの有害性、廃棄状況(管理不十分)の紹介をされました。また、異性体分離のカラムの話や有効な方法として、包括的二次元ガスクロマトグラフ(GC×GC)の話もされました。
主題講演2の3題目は「科学捜査とテロ対策」で、瀬戸康雄氏(科学警察研究所)より講演がありました。
科警研の紹介と、和歌山毒カレー事件、新潟アジ化ナトリウム事件、松本・地下鉄サリン事件等からの教訓を元にした現状の毒物分析体制についてお話がありました。また、毒物や合成麻薬の不純物分析を行い、出所を明らかにするお話もありました。
その後は、招待講演で「化学物質の安全性管理の取り組み」と題して、北野大氏(明治大学)より講演がありました。化学物資による有害な影響として、ジクロロジフェニルトリクロロエタン(DDT)、ポリ塩化ビフェニル(PCB)、フロン(CFCs)の事例を紹介されました。また、化学物質の有害性は、暴露と影響の関数であり、暴露と影響の両面からの規制を行う方向に向かっているとのことで、化学物質審査規制法の成立と改正へも言及されました。
招待講演の2題目は「分離科学のさらなる発展」で、中村洋氏(分析化学会会長、東京理科大学)より講演がありました。日本におけるLC、GCの発展に貢献された諸先生の紹介や、LC研究懇談会やGC研究懇談会の歴史の概要説明のお話がありました。今後も、人材育成が重要性であることのお話がありました。
  最後に、閉会の挨拶として、招待講演の3題目は「懇談会の明るい未来」で、保母敏行氏(東京都立大学名誉教授)より講演がありました。今後のガスクロマトグラフの発展する手法や、GC研究懇談会のありかたなど、今後のあるべき姿の方向性を示していただきました。
  講演会の終了後、意見交換会が開催されました。大勢の参加者があり、楽しいイベントも行われたため大いに盛り上がりました。参加者の親睦も図られ、楽しい時間を過ごせました。

吉岡節男(株式会社島津製作所)

講演風景 講演風景

企業展示風景 企業展示風景


 

ガスクロマトグラフィー研究懇談会 第15回キャピラリーガスクロ講習会開催報告

首都大学東京の工学部学生実験室をお借りして開催している本講習会は15回目を数え、3日間の講習(講義1日、実習2日)を行った。首都大学の内山先生、香川先生、日大の中釜先生と研究室の学生の協力を得て、アジレントの代島副委員長が実行を指揮し、運営委員の企業(島津、アジレント、GLサイエンス、フロンティアラボ、東京化成工業、テクノインターナショナル)がトレーナーと機材を提供し講習に当たった。受講者25名(内講義のみ2名)で、1日かけて分離の基礎理論、試料導入、各種試料導入機器、検出器、GC/MSの基礎、スペクトルの読み方などの講義を行い、その後2日間の実習に入った。キャピラリーガスクロの全体を理解するための基礎講習であり、普段使っている装置の中で何がおこっているか、教科書に書いてあることと実際に得られる結果とのつながりなどが理解される内容で、受講者らにも満足いく講習会であった。講義1日はちょっと短く、もう少し詳細な内容を知りたいという要望や、東京以外でも開催できないかといった要望もあり、これからの講習会を考える参考となった。学会ならではの講習内容を15年間維持し、それなりの効果も得られており、この講習を基に実習用のテキストを編纂中であり、間もなく出版する予定である。
本年の実習にご協力いただいた首都大学の内山先生、香川先生、日本大学の中釜先生並びに企業の方々、運営委員の方々の多大なるご支援に深謝いたします。
前田 恒昭((独)産業技術総合研究所)



第296回ガスクロマトグラフィ研究会開催報告

標記研究会(前田委員長、産総研)が、2009年6月5日(金)、13時から17時30分まで、株式会社島津製作所の東京支社で開催された。参加者は60名程度であった。今回の主題は「GC/MSの使い方とGC/MSの最前線」である。開催にあたり、前田委員長から今年度で標記の講演会等が300回に達する旨の挨拶があり、改めてガスクロマトグラフィ研究懇談会の諸先輩の継続的な活動に敬意を感じた次第である。
まず、主題講演として「GC/MS初級講座」2演題があった。最初は「初めてGC/MSを購入するときの注意点とGC・GC/MS導入時の失敗例」という演題で(財)自動車研究所の秋山賢一氏に講演していただいた。内容は、秋山氏自身が経験したことや他の人から聞いた多種の分析失敗例であった。最低限の設備投資では必要な分析が出来ないことがありうることや、分析機器購入後は自身の責任であり、可能性をよく考えて購入に漏れがないかを考えるようにとアドバイスがあった。また、購入に関わる文書を残す、機器を試してみる、あまりにも新しいソフトは危険であるなど、メーカー、ユーザーともに心当たりのある内容であり、すぐにでも現場にて活かせる内容であった。
次に、「GC/MSの用語と基本的なイオン化」について、アジレントテクノロジーの代島茂樹氏が講演された。質量の単位など普段聞くことの出来ない話から詳細な説明まであった(内容の一部は分析学会誌2009年2月号p54-60 GC/MSのためのイオン化法-を参照)。また、市販のGC/MSにおけるイオン化と特徴、そして、EI、CI法などを分かりやすく説明された。
その後の15分間の休憩では会場内での協力企業の展示があり、こちらでも活発に質問や情報交換、カタログ紹介等が行われていた。
後半には技術講演5件が行われた。まず、日本電子の生方正章氏に国産唯一の「GC-HRTOFMSを用いた定量分析について」、2番目にLECO社の矢島敏行氏に「GC×GC-TOFMSの網羅的スクリーニング分析への応用」について、3番目にSGEジャパンの藤井大将氏に「Magne-TOF、TOF-MS用の最新高性能マグネティック型イオン検出器について」それぞれ講演していただいた。生方氏は、農薬の事例でGC-HRTOFMSを用いた添加回収結果など詳細なデータを紹介された。矢島氏の講演では、非侵襲的に補集できる呼気サンプルをGC×GC-TOFMSを用いて網羅的な分析に今後の呼気分析の発展が期待できると感じた。藤井氏の講演は新しい技術を採用したTOF-MS用エレクトロンマルチプライヤー(Magne TOF)の原理、飛行時間差で分離するTOF-MSの話であった。いずれも各社の最先端の話であった。4番目に、ゲステルの落合信夫氏が「四重極型GC-MSにおける精密質量スペクトルと最新の2次元GC技術」で話をされた。これは、CERNO BIOSCIENCE社が開発した質量スペクトルキャリブレションソフトの利用方法とビール中の香気成分分析への応用紹介であった。5番目に、アジレントテクノロジ-の穴沢秀峰氏が「GC/MS/FPDを用いる食品中残留農薬の高速スクリーニング分析」を紹介された。リテンションタイムロッキング、デコンボリューションレポーティングソフトウエア(DRS)を使用することによる時間が短縮される事例説明であった。6番目に島津製作所の川名氏が「GC/MSによるアミノ酸の迅速分析法」で講演され、ハイスループット分析を実現するための前処理、分析、データ解析の具体例を説明された。最後に、ジーエルサイエンスの武井義之氏が「ハイスループットアルカリ付加イオン化とキラルカラムの組合せー光学異性体の分離定量での有用性について」講演された。これは、GC-IAMS (Ion Attachment Mass Spectrometry)による光学異性体分析とショートカラム分析の話しであった。いずれも今後の分析に役立つ興味深い内容であった。
講演終了後は、講演者と参加者との恒例の意見交換会が開催されたが、こちらも大変盛況であった。次回の研究会も楽しみである。
最後にこの場をお借りして、講演者の皆様、参加いただいた多くの方々、協賛をいただいた企業の方々ならびにご協力いただいた関係各位に心より御礼申し上げます。
長崎国際大学 佐藤博


 

ガスクロマトグラフィー研究懇談会活動報告
【ガスクロマトグラフィー研究懇談会総会および第295回ガスクロマトグラフィー講演会報告】

矢島 敏行 LECOジャパン(株)

2月27日、独立行政法人産業技術総合研究所臨海副都心センターにて総会および研究会が開催された。
総会では、2008年度事業報告及び2009年度の事業計画が前田委員長より示され、了承を得た。次いで2008年度会計報告及び2009年度予算案が金子委員より示され了承された。
講演会では、「ガスクロマトグラフの多様性と可能性」をテーマに主題講演、技術講演1、2の構成で講演が行われた。主題講演では、「スプリット・スプリットレス導入は正しく使われているか?」と題し和田委員による講演が行われた。本講演では、最も基本的な試料導入法であるスプリット/スプリットレス法の説明と関連データが、「CGCにおける試料導入技術ガイドブック(GC研究懇談会訳,丸善出版)」をもとにして分かりやすく紹介された。技術講演1では、「ガスクロの多様な前処理方法、試料導入システムと使い方」と題し、松浦氏(信和化工㈱)、武井氏(ジーエルサイエンス㈱)、家田氏(ゲステルKK)、大橋氏(SGEジャパン)による講演が行われた。本講演では、様々なデバイスを用いた最新の濃縮・加熱脱着による試料導入法や大量注入法が紹介された。技術講演2では、「ガスクロの多様な選択性検出器と使い方」と題し、豊浦氏(ジェイ・サイエンス・ラボ)、田中氏 (テクノインターナショナル)、関口氏 (アジレントテクノロジー)による講演が行われた。本講演では、GCに用いられる新旧様々な特異的検出器について紹介された。
当日は、雪がちらつく悪天候にも関わらず約80名の参加者を得て活発な質疑応答が行われ、寒さを感じさせない研究会となった。講演会終了後の懇親会にも多数の方々の参加をいただき、講師の先生方をはじめ本研究会に出席された方々にこの場を借りて深く感謝を致します。

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