60年会シンポジウム企画案

 

2011513日現在

1.ソフト界面を活かした分析化学(9/14日・午後)

オーガナイザー:前田瑞夫(理研),吉本敬太郎(東大院総合文化)
「概要」
 分析化学における界面の重要性は改めて指摘するまでもないであろう。イオンセンサや逆相クロマトグラフィーなど、界面での分配現象に依拠する分離・計測手法は、現代科学・技術の基本中の基本である。生体素子を固定したバイオセンサやバイオチップ、生体成分分離のための微粒子・ナノ粒子やミクロ流路デバイスなど、先端バイオ計測の「現場」もまた、水と固相との界面である。ところが界面という言葉は本来、文字通りの2次元的な「面」を意味している。その点、バイオ計測の「現場界面」は少々事情が違っている。ここで、生体分子・高分子などのソフトマターがつくる界面をソフト界面と定義したい。ソフト界面は、3次元的に厚みのある空間領域であること、そのなかには水分子やイオンや基質分子などが介在していること、そしてこれら水やイオンならびにゲスト分子との相互作用を通じて、構造や性質が動的に変化すること、を特徴としている。この動的変化が意味のある「仕事」となる。つまり分子鎖が仕事をするという点が重要である。本企画では、ソフト界面の特性を活かした分離・計測手法に焦点を当てつつ、分析化学の新しい様相・方向性を紹介したい。

「講演題目および講演者」

「趣旨説明」 ソフトな界面の特性(理研)前田瑞夫
1
)非特異吸着をゼロにするソフト界面(東大院工)高井まどか
2
)分子認識の選択性を高めるソフト界面設計(東大院総合文化・筑波大院数理物質)○吉本敬太郎・長崎幸夫

3)ソフト界面の動的特性を活かした分析化学(慶大薬)金澤秀子
4
)ソフト界面の特性を解明する先端計測(物材機構)野口秀典

 

2.工業分析最前線 〜分析は生産技術の要だ!〜(9/15日・午前)

オーガナイザー:野呂純二(日産アーク),火原彰秀(東大)

「概要」

 「ものづくり日本」を作り上げ、支えているメーカー企業の中で、「分析」が占める位置はどのようなものでしょうか。企業・業界の置かれている市場形態や規制などにより、状況は異なると思いますが、「分析は生産技術の要だ!」という想いは共通ではないでしょうか。本シンポジウムでは、工業分析の最前線で研究開発に従事されている講師陣から、具体的かつホットな「分析」について御講演頂きます。「何を分析しなければならないか」「どのように分析したか」「どんな分析が必要とされているか」が講師陣から示されます。「自分の分析が使える」「ココは協力できる」など、活発な議論を期待します。

「開催挨拶」 「工業分析最前線」シンポジウム開催にあたって(ブリヂストン中研)加藤信子

「講演題目および講演者」

1)鉄鋼業における分析・解析技術〜NMRを中心に〜(新日鐵先端研)金橋康二

2)非鉄工業製品における環境負荷物質の管理(古河電工環境エネ研)久留須一彦

3)電子部品業界におけるLA-ICP-MSの活用(TDK大石昌弘

4)自動車関連材料におけるラマン分析の可能性(豊田中研)加藤雄一

5)水処理装置における分析技術(オルガノ)梅香明子

 

3.NMRによる定量分析がもたらす新たな機器分析の可能性(9/15日・午前)

オーガナイザー:加藤尚志(産総研),井原俊英(産総研)

「概要」
 これまで核磁気共鳴装置(NMR)は、主として定性的な手段に用いられてきたことから、分析センター等で汎用される定量用の分析機器としては活用されてこなかった。ところが、原理的に信号強度が測定核種の数に比例するという特徴を生かし定量性を向上させることで、実用上十分な分析精度が得られることが最近の研究で明らかとなってきている。本技術は分子構造が異なる物質間でも定量性が確保されることから汎用性が極めて高く、新たな定量用の分析機器として様々な分野での活用が期待される。

「講演題目および講演者」

1定量NMRの食品添加物分析への応用(国立衛研)大槻 崇

2)定量分析のためのNMR技術(JEOL RESONANCE)末松孝子

3)定量NMRによる標準物質の品質向上(和光純薬試薬研)坂本君江

4)定量NMRによる界面活性剤の一斉迅速分析(花王解析研)堀之内嵩暁

5)定量NMRの多核種への応用−19Fへのアプローチ(産総研)山崎太一

 

4.キャリアパスシンポジウム 企業や研究所でプロフェッショナルとして活躍する分析化学者の昔・今・そして将来の夢

9/15日・午後)

オーガナイザー:由井宏治(東京理科大),野呂純二(日産アーク)

「概要」

将来、分析化学のプロフェッショナルを志している皆さん!皆さんは将来どのような分野で、どのように活躍していきたいと思っていらっしゃいますか?そして今自分が大学で学んでいる分析化学がどのように産業を推し進め、広く社会に貢献しているのか見てみたい、聞いてみたいと思いませんか? また就職活動に向けて自分のこれからの進路や、活躍したい産業分野にあれこれ思いを巡らせている方もいらっしゃるではないでしょうか?本シンポジウムでは分析化学を通じて産業を推し進め社会を豊かにされている、各分野の第一線で活躍されている企業や研究所の分析化学研究者をお招きして、なぜその分野に進まれたのか、そして今どのようなことに取り組んでいらっしゃるのか、そして将来その分野の最前線でどのような分析技術の発展が待ち望まれているか、分析化学にかける夢を熱く語っていただきます。夢の実現に向けて、第一線で活躍されている先輩の姿が、分析化学を志す皆さんにとって自分の進む職業人としての路−キャリアパス―を切り拓く上で、大きな参考になることを期待しています。

「講演題目および講演者」

1)新しい装置が教えてくれる新しい世界に魅せられてJEOL寺本華奈江

2)企業の研究開発における分析化学の重要性(日産化学工業)松原功達

3)企業における分析技術の役割、夢と期待(東芝)竹中みゆき

4)分析化学と犯罪捜査の架け橋(科警研)鈴木康弘

5)企業分析室における技術伝承と組織力の強化(SIIナノテク)川田 哲

6)キャリアを活かした食の安全における分析化学最前線(Asahiビール食の安全研)望月直樹

 

5.最先端医療を支える分析化学(9/16日・午前)

オーガナイザー:石濱 泰(京都大学)、金澤秀子(慶應義塾大学)

「概要」

 プロテオーム、メタボロームなど最新の分析技術を使って生命現象の解明を行う分析科学の新しい潮流の中において、分析科学の進歩が最先端医療においても重要な役割を担っているといっても過言ではない。本シンポジウムでは、再生医療や難治性疾患治療など医療の最前線にいる医師および医師と連携し最先端医療を支える分析を行っている分析化学の研究者をシンポジストとし、分析化学の医療への貢献をアピールするとともに今後どのような分析技術が最先端医療に必要になるかについて展望する。

「講演題目および講演者」

1)リン酸化プロテオーム変動解析とがん分子標的治療(京大院薬)石濱 泰

2)メタボローム解析による新規バイオマーカー探索(慶大先端生命研)曽我朋義

3)光機能性プローブによるがんの検出・診断・治療(東大院医)浦野泰照

4)神経外傷に対する多角的再生戦略(慶大医)岡野ジェイムス洋尚

5)難治性造血器腫瘍治療の現状と問題点(慶大院薬)服部 豊

6)細胞シートによる再生医療と幹細胞分子マーカー(東女医大先端生命研)大和雅之

7)総括 最先端医療を支える分析化学(慶大院薬)金澤秀子

 

6.宇宙と生命をつなぐ分析化学 −顕微鏡で宇宙を探り、望遠鏡で生命を探る−

9/16日・午後)

オーガナイザー:小林憲正(横浜国大)

「概要」

 はやぶさの小惑星からのサンプルリターン成功など、宇宙をめぐる話題、特に宇宙と生命の関わりが関心を集めている。宇宙を見るには、物理学の目とならび化学の目の重要性が認識されている。惑星探査機には数多くの観測機器が搭載されているが、質量分析計や赤外分光計などの分析化学機器が不可欠であり、また、地球に持ち帰られた試料の分析には各種顕微分光装置が用いられている。さらに、近年、太陽系外にも数多くの惑星が発見され、中には地球に似た惑星も見つかり始めた。次のターゲットはそのような惑星に生命が存在するかどうかに注目が集まっている。このように、顕微鏡を用いて太陽系の起源の謎に挑んだり、望遠鏡を用いて太陽系の外に生命の兆候を検出しようとする最新の研究成果を第一線の研究者がやさしく解説する。

「講演題目および講演者」

「趣旨説明」 分析化学で解き明かす宇宙と生命のつながり(横浜国大院工)小林憲正
1
)はやぶさとはやぶさ2:小惑星のかけらから太陽系と生命の起源を探る(阪大院理)土山 明
2
)生命の素は、隕石によって運ばれてきた:最先端の宇宙有機物分析手法(阪大院理)藪田ひかる

3)何を見つければ生命といえるか−火星生命の検出をめざす分析化学−(東薬大生命科学)山岸明彦

4)望遠鏡で探す太陽系外惑星と生命(国立天文台)田村元秀

 

7.若手シンポジウム「ヒラメキをユーザーへ  〜産学官連携物語〜」9/13日・午後)

オーガナイザー:大橋朗(茨城大),加藤尚志(産総研)

「概要」

 分析化学研究の出口の一つは、分析機器としての製品化にあります。しかしながら、新しいアイデア・創案が分析機器として市場に登場し、ユーザーの手元に届くまでには多くの時間と労力が必要であることは言うまでもありません。本シンポジウムでは、産官学共同研究により製品化に至った研究例について、主にメーカー側(産業側)の立場からご紹介頂きます。特に本会若手会員の参加と積極的な議論を期待します。

「講演題目および講演者」

1)北陸から世界に発信する新しい元素分析手法(マイクロエミッション)山本 保

2)連携による大気圧走査電子顕微鏡の開発と製品化(日本電子経営戦略室)須賀三雄

3)大学発ベンチャーがものづくりを行う意義(MSI.TOKYO)三木伸一

4)九州大学との産学連携による「味のものさしづくりの世界標準化」(インテリジェントセンサーテクノロジー)池崎秀和