日本分析化学会中国四国支部活動報告(1982年-2001年)

2002年5月

 

1.支部20年間の略史

 

 支部創設期に支部長等役員をされた諸先生が定年等で退官され、世代が交代した。歴代支部長は次の方々である。
  1982年度 今井 嘉彦
  1983年度 木曽 義之
  1984年度 砂原 広志
  1985年度 木ト 光夫
  1986年度 田中 善正
  1987年度 熊丸 尚宏
  1988年度 池田 早苗
  1989年度 橋谷 博
  1990年度 宮田 晴夫
  1991年度 熊丸 尚宏
  1992年度 岩地道 正
  1993年度 木ト 光夫
  1994年度 善木 道雄
  1995年度 河淵 計明(故人)
  1996年度 澤本 博道
  1997年度 前川 尚
  1998年度 本水 昌二
  1999年度 藤原 祺多夫
  2000年度 善木 道雄
  2001年度 小倉 興太郎

 

 支部の事務局は、1968年より16年間広島大学理学部に置かれていたが、砂原広志が支部長になった1984年より広島大学工学部に移された。熊丸尚宏が支部長になった1991年理学部に戻り、退官後の1999年に再び工学部に移され、現在(広島大学大学院工学研究科)に至っている。

 

 当支部は2001年4月現在、正会員452名、学生会員73名、維持会員11口、特別会員55社、公益会員62口でこの20年間ほぼ横這いである。支部役員が瀬戸内海を挟んでいるので役員会を行うにも、どうしても一晩泊まりということにならざるを得ず、交通費、会議費に多額の支出を要していた。しかし、1988年の瀬戸大橋の開通や役員会の回数減等の合理化でそれらの経費を削減し、若手セミナーを1995年より開催の他、講演会等の支部事業の充実に振り向けている。

 

 当支部の創設時から年会、討論会および支部主催の講習会や講演会など、多くの学会の行事を1箇所で行うことなく、各地で順次担当してきた。このように各地で持ち回ることは、 分析化学を通じてその開催地の大学、官公庁、企業などの相互関係を一層深め、その地方の産業や文化に深くかかわるとともに、日本分析化学会の発展に大いに寄与する所があったと思っている。特に、瀬戸内海周辺に限らず、日本海から太平洋にいたる大環状の地域で開催することが長年の懸案であったが、1980年第41回討論会を高知大学で、1989年第50回討論会を島根大学で実現し、1999年より地区講演会も鳥取地区で、2000年には第6回若手セミナ−を高知県で開催した。

 

 この度、日本分析化学会創立50周年記念に当たり、当支部創設時にご尽力いただいた桐栄恭二先輩が本会の名誉会員に推薦されたことを当支部会員一同とともに心よりお喜び申し上げるとともに、今後ますます支部の発展に向かって努力したい。

 

 

2.研究発表・講習会・講演会・見学会等

 

(1)年会および討論会
 この間3回の年会および2回の討論会を開催した。1986年10月11日〜14日には、第35年会が岡山大学で開催され、研究発表510件、展示会、懇親会および見学会が行われた。

 

 1993年10月5日〜7日、第42年会が広島大学総合科学部(東広島市)において開催され、一般研究発表546件、ポスター発表89件、各研究懇談会の招待講演14 件のほか、学会賞、技術功績賞、奨励賞受賞講演各々3件、付設行事として、シンポジウム基調講演3件、ワークショップ講演13件、さらに、展示会、ミキサーおよび懇親会を行った。 2000年9月26日〜28日、第49年会を岡山大学(岡山市)において開催し、外国人講演2件、若手シンポジウム7件、公開シンポジウム7件、一般講演746件、および懇親会を行った。

 

 更に1989年6月3日〜5日には、第50回討論会を島根大学において開催し、研究発表259件、懇親会および見学会を行った。

 

 1996年5月25日・26日の両日、第57回討論会を愛媛大学工学部において、基調講演5件、特別講演13件、研究発表356件、懇親会を行った。

 

 

(2)地区講演会
 中国四国支部では広島・岡山・徳山・新南陽・山口・愛媛・徳島・鳥取・島根・高知の各地区で支部活動を行っているが、主たる活動として地区講演会があげられる。この20年間の実績を表1に示した。これらの講演会・地区での活動は各地区の研究会(広島地区分析技術研究会、岡山地区分析技術懇談会、徳山・新南陽地区コンビナート分析研究会、山口地区分析技術懇談会、山口機器分析研究会、愛媛地区分析技術懇談会、徳島地区分析技術研究会、鳥取地区分析技術研究会など)により支えられている。

 

表1 地区講演会

年度 開催地区 総講演数
1982年度 広島・徳山・岡山・山口 8
1983年度 広島・徳山・岡山・山口 8
1984年度 広島・徳山−新南陽・岡山・山口 8
1985年度 広島・徳山・岡山・山口 8
1986年度 広島・徳山−新南陽・岡山・山口 8
1987年度 広島・徳山−新南陽・岡山・山口 8
1988年度 広島・徳山−新南陽・岡山・山口 8
1989年度 広島・徳山−新南陽・岡山・山口 8
1990年度 広島・徳山−新南陽・岡山・山口 8
1991年度 広島・徳山−新南陽・山口 7
1992年度 広島・徳山−新南陽・岡山・山口・愛媛 12
1993年度 徳山−新南陽・岡山・山口・愛媛 9
1994年度 広島・徳山−新南陽・岡山・山口・愛媛 12
1995年度 広島・徳山−新南陽・岡山・山口・愛媛 14
1996年度 広島・徳山−新南陽・岡山・山口・徳島・愛媛 15
1997年度 広島・徳山−新南陽・岡山・山口・愛媛・徳山 17
1998年度 広島・岡山・山口・愛媛・徳島−新南陽・徳島 23
1999年度 広島・徳山−新南陽・岡山・山口・愛媛・鳥取・徳島 20
2000年度 広島・徳山−新南陽・岡山・山口・愛媛・鳥取・徳島 24
2001年度 広島・徳山−新南陽・岡山・山口・愛媛・鳥取・徳島(予定)

 

 

(3)各種講演会・研究発表会
 表2に当支部でこの間に開催したその他の講演会、研究発表会(共催を含む)を示した。これらの中には18件の外人講演会が含まれている。中国四国支部分析化学講演会は退官される諸先生や各賞を受賞された先生方にご講演いただく講演会として1991年以来継続している。
 表2に示した講演会・発表会のほか、日本化学会中国四国支部大会や九州支部との合同大会が開催された際は共催事業として参画してきた。1994年以降は両支部の合同大会のみの開催となっているが、この間23回開催された。なお同合同大会は2002年度からは日本化学会西日本大会と名称変更されるとのことである。

 

表2 各種講演会・発表会

開催年月日 各種講演会・発表会 会場

一般講演数
(招待講演)

1982年7月23日 高分子分析講演会 倉敷市 3
1983年11月2日 プラズマ分光分析研究会第13回講演会 中国工業技術試験所 5
1984年1月28日 環境化学シンポジウム 広島市 4
1984年4月25日 Kalman Burger教授講演会 広島大学理学部 1
1985年5月30日-31日 第2回イオンクロマトグラフィー討論会 広島大学工学部 20(2)
1985年10月14日  B.F.Myasoedov教授講演会 広島大学総合科学部 1
1986年1月18日 第27回有機試薬研究懇談会 広島大学総合科学部 4
1986年2月13日 R.C.Kapor教授講演会 広島大学工学部 1
1986年3月27日 第47回原子スペクトル分析研究会懇談会 広島大学理学部 7
1986年7月11日 第5回フローインジェクション分析研究会講演会 岡山大学理学部 21
1988年4月9日 M.K.Wong博士講演会 広島大学理学部 1
1989年5月12日-14日 第56回有機微量分析研究懇談会シンポジウム 岡山理科大学 16
1989年10月4日-6日 第33回放射化学討論会 広島大学総合科学部 119
1989年11月11日-12日 第35回ポーラログラフィーおよび電気分析化学討論会 徳島大学大学開放実践センタ  61
1990年5月14日 L.Sommer教授講演会 岡山大学薬学部 1
1990年9月25日 J.Imberger教授講演会 島根大学理学部 1
1991年1月19日 中国四国支部分析化学講演会  エソール広島 3
1991年10月21日 J.Korkisch教授講演会 近畿大学東広島キャンパス 1
1991年11月25日 G.H.Morrison教授講演会 広島大学理学部 1
1992年1月24日 中国四国支部分析化学講演会 アステールプラザ 3
1992年7月10日  第16回フローインジェクション分析講演会  岡山大学 24
1992年7月24日 R.A.Bartsch教授講演会  岡山大学教養部 1
1992年11月26日-28日 第15回溶液化学シンポジウム にぎたつ会館 89(2)
1993年1月23日 中国四国支部分析化学講演会 エソール広島 2
1994年1月22日 中国四国支部分析化学講演会 広島ガーデンパレス 2
1994年3月3日 G.Arrhenius教授講演会  広島大学理学部 1
1994年7月30日-31日 国際配位化学会議のサテライトシンポジウム 岡山大学  20(8)
1994年11月10日-12日 第17回溶液化学シンポジウム 岡山理科大学 89(2)
1995年1月20日 中国四国支部分析化学講演会 メルバルク広島 2
1995年5月17日-19日 第62回日本分析化学有機微量分析懇談会シンポジウム 愛媛大学機器分析センター 16(1)
1996年1月19日 中国四国支部分析化学講演会 広島大学理学部 2
1996年5月30日-31日 第8回金属の関与する生体関連反応シンポジウム 広島市南区文化センター 1
1996年6月21日 K.K.Stewart教授講演会 徳島大学工学部 1
1997年1月24日 中国四国支部分析化学講演会 せとうち苑 2
1997年3月22日 P.R.Haddad教授講演会 近畿大学東広島キャンパス 1
1997年12月8日 第4回広島先端科学技術セミナー 広島市立大学講堂小ホール 2
1998年1月9日 中国四国支部分析化学講演会 広島大学理学部 2
1998年4月3日 R.A.Mathies教授講演会 徳島大学薬学部 1
1998年6月4日-5日 工業技術連絡会議第6回資源環境連合部会研究発表会  米子コベンションセンター 1
1998年9月25日  P.Tasakorn教授講演会 徳島大学工業会館 1
1998年9月26日-28日 第48回錯体化学討論会 高知大大学朝倉キャンパス  
1998年10月13日 E.Bulska教授講演会 広島女子大学 1
1999年1月29日 中国四国支部分析化学講演会  広島大学中央図書館 4
1999年2月5日 第5回広島先端技術セミナー  広島市立大学講堂小ホール 2
1999年3月12日  プラズマ分光分析研究会第45回講演会 中国電力(株)2号館 9
1999年5月27日-29日 第66回有機微量分析研究懇談会 島根大学 28
1999年9月16日-17日 Sergei Sytykov教授講演会  岡山大学理学部 1
1999年11月20日-21日  第9回ヒ素シンポジウム  広島県立女子大学 44(2)
2000年5月19日 H. クロト−教授特別講演会 広島大学理学部 1
2000年11月29日-12月1日  第20回キャピラリー電気泳動シンポジウム 淡路夢舞台国際会議場 100(7)
2001年3月2日 J.Simon教授講演会 岡山大学理学部 1

 

 

(4)講習会
 当支部では最新の分析技術情報を会員に伝達するため毎年分析化学講習会を開催し成功を収めている。表3にこの間の実績を示した。各地区では独自に講習会テーマを決め、招待講演・分析法の講義を行うと共に各種分析機器メーカーの協力による実習・機器や資料の展示を行っている。各地区では修了証を発行するなど独自の運営を工夫されている。本年度は山口地区で「環境計測と材料分析の信頼性」と題して講習会が行われ、基調講演2件、講義3件、話題提供1件、実習6件および懇親会を行った。

 

表3 中国四国支部分析化学講習会

回数 開催年月日 講義/実習/展示 会場
19 1982年8月26日-27日 7 / 7 / 1 愛媛大学工学部
20 1983年8月30日-31日 5 / 5 / 1 徳島大学薬学部
21 1984年8月23日-24日  5 / 5 / 1 岡山大学理学部
22 1985年8月22日-23日 5 / 6 / 1 近畿大学工学部
23 1986年8月21日-22日     9 / 0 / 0 山口大会大学会館
24 1987年8月27日-28日 14 / 11 / 0   愛媛大学工学部
25 1988年8月24日-25日  5 / 6 / 0  徳島大学薬学部
26 1989年8月24日-25日    6 / 5 / 0 岡山大学教養部
27 1990年8月23日-24日   8 / 6 / 0  広島大学医学部
28 1991年8月1日-2日      6 / 0 / 0 山口大会大学会館
29 1992年7月30日-31日 3 / 1 / 4 愛媛大学工学部
30 1993年8月19日-20日 6 / 1 / 1 鳴門教育大学
31 1994年8月18日-19日  5 / 1 / 2 岡山大学
32 1995年8月22日-23日  4 / 1 / 1 近畿大学工学部
33 1996年8月20日-21日 4 / 1 / 1 山口大学工学部
34 1997年8月21日-22日 3 / 1 / 2 愛媛大学工学部
35 1998年8月20日-21日 5 / 1 / 3 徳島大学工業会館・地域共同研究センタ
36 1999年9月16日-17日  5 / 1 / 1 岡山大学理学部
37 2000年9月7日-8日  6 / 1 / 3 広島大学総合科学部・理学部
38 2001年9月19日-20日   6 / 6 / 0 山口大学工学部

 

 

(5)若手セミナー
 学会活動の活性化を図るため若手の育成に力を入れている。1995年から開催し始めた若手セミナーには毎年数十名の参加者があり、しかも徐々に増加の傾向にあることは喜ばしい限りである。表4に開催場所等を示した。

 

表4 中国四国支部分析化学若手セミナー

回数 開催年月日 会場
1 1995年7月22日-23日 岡山理科大学自然科学研究所
2 1996年7月26日-27日 グリーンヒル郷原
3 1997年8月1日-2日 北条青少年スポーツセンター
4 1998年8月7日-8日 山口県セミナーパーク
5  1999年8月9日-10日 国立淡路青年の家
6 2000年8月5日-6日 国立室戸少年自然の家
7 2001年8月30日-31日 島根県立青年の家

 

 

3.出版物

 

 当支部の各種事業を年度末にまとめ、○○年度事業報告として出版している。なお今年度から当支部でもホームページを立ち上げ、行事予定・各種会合のプログラム等を掲載し好評を得ている。今後各年度の事業報告等も逐次ホームページに掲載する予定である。ホームページのURLはhttp://home.hiroshima-u.ac.jp/bunseki/、事務局のe-mailアドレスはbunseki@hiroshima-u.ac.jpである。共に広島大学情報メディア教育センターのサーバーを借用して運用している。記して御礼申し上げる。

 

 

4.賞

 

 支部独自の賞として、前述の若手セミナーの際、優秀なポスター講演に対しポスター賞を授与し、若手の研究奨励につとめている。

 

 

5.特別事業・行事

 

 支部創立30周年および40周年記念行事を行った。支部創立30周年記念行事として1988年9月16日(金)・17日(土)の両日、カルチャーホテルで記念式典、懇親会および見学会を行った。この年度の分析化学講習会および各地区の講演会は支部創立30周年記念行事とした。

 

 支部創立40周年記念行事は、1998年11月13日(金)、主会場(広島市)において式典、記念講演3件および記念祝賀会を行った。その他、各地区において記念講演会を開催した。

 

 

6.支部活動

 

 当支部の活動方針を協議・決定するため、幹事会および常任幹事会を年1回、各地区で開催している。従来常任幹事会は年2回開催してきたが、昨今の経済状況から2回目は必要に応じて臨時常任幹事会として開催することとした。今後も電子メールやホームぺージを有効利用して効率の良い支部運営を行い経費節減に努め、支部活動の基盤である地区講演会、外人講演会や分析化学若手セミナーなどが圧迫されることのないような運営を目指したい。

 

 

(文責)
竹味弘勝(広島国際大保健医療学部診療放射線学科)
廣川 健(広島大学大学院工学研究科物質化学システム専攻応用化学、支部事務局)

 

2002年5月