◆環境・防災◆  水中の微量ビスフェノールAを捕集する新たな抽出媒体の開発
 近年,環境汚染が一層深刻になり土壌・水中・空気中に含まれる微量有機化合物の検出・定量が重要視されている。従来,分析対象物質を高感度検出するための抽出・脱着操作は,試料量・溶媒量が多く長時間の煩雑な操作を必要とした。これらの問題を解決するため,従来から用いられているポリマー粒子状抽出媒体に比べて機械的・化学的耐久性に優れた耐熱性細繊維を横穴式ニードルに充填した抽出分離媒体を開発した。ガスクロマトグラフィーにおけるビスフェノールAの分析に応用した結果,分析に必要不可欠な誘導体化の収率向上と共に短時間でのオンライン誘導体化反応を可能にした。

【B1011】         

繊維充填ニードルを用いた水中微量有機化合物の新規試料前処理

(豊橋技科大院工・信和化工(株)1) ○小川満弘・齊戸美弘・和田啓男1・神野清勝
[連絡者:神野清勝, 電話:0532-44-6821]

 近年、様々な化学物質による環境汚染が一層深刻な問題になりつつあり、土壌・水中・空気中に含まれる微量有機化合物の検出、定量は非常に重要視されている、特に、これらを分析する際の抽出・濃縮プロセスは、直接検出が困難である分析対象物質を高感度検出する手段として必要不可欠である。しかしながら従来法の多くは、抽出・脱着の際に使用する試料量・溶媒量が多いのみならず長時間で煩雑な操作を必要としている。
 本研究では、これらの問題点を解決する手段として、過去にガスクロマトグラフィー(GC)用分離カラムの研究開発において、繊維を分離媒体とした際に得られた技術を応用し、新規試料前処理デバイスを開発した。抽出媒体として用いている耐熱性細繊維は、従来から抽出媒体として用いられてきたポリマー粒子状抽出媒体と比べても抽出性能に遜色はなく、また、機械的、化学的耐久性の点ではこれらを上回っていることが明らかとなっている。この抽出媒体を横穴式ニードルに充填し、デバイスとして用いた。本研究では水中に含まれるビスフェノールAを分析対象物質とした。一般的にGCにおいてビスフェノールAの分析を行う場合、シリル化等の誘導体化反応が必要不可欠であるが、反応時の水の存在は誘導体化反応の収率を大幅に減少させてしまう。そこで本研究では抽出操作後にニードル内部に残った水を完全に除去することにより、短時間でのオンライン誘導体化反応を可能とした。