生活文化・ 化学指紋の総合的評価によりコシヒカリの産地特定と有機農法判定が可能か
 エネルギー

 元素の安定同位体の存在比は、同じDNA配列を持つ同種の生物であっても、生育した産地・肥料・気象といった生育環境を反映する。そこで、これら安定同位体比の変動は、個々の生物個体に固有の化学指紋になりうる。そのため、化学指紋を総合的に評価して、農水産物の起源を特定するトレーサビリティー分析を行うシステムの確立を目指したものである。本発表では、コシヒカリ中の炭素および窒素の元素分析とこれら元素の安定同位体比分析により、コシヒカリの産地特定と有機農法判定が行える可能性について示唆している。

【E1001】  炭素・窒素同位体比分析によるコシヒカリの産地特定および有機農法判定の可能性

(首都大院理)○鈴木彌生子・須藤理枝子・築山容子・伊永隆史
[連絡者:伊永隆史, 電話:0426-77-2532]

 これまで食品の産地特定・真正評価においてDNA分析や微量金属元素分析が注目されているが、DNA分析では同じ品種で栽培地域が異なるものは見分けらず、微量金属元素は分子間に介在するだけであり、骨格を形成するものではない。そこで、これらの欠点を補う新規の分析法として、生元素の安定同位体比に着目した。安定同位体比は、同じDNA配列を持つ生物でも、産地・肥料・気候といった生育環境を反映する。すなわち、安定同位体比の変動は、生物固有の“化学指紋”と言える。
 現在、多元素の安定同位体比の変動を総合的に評価し、“化学指紋”を視覚化することで農水産物の新しいトレーサビリティ分析システムの確立を目指している。また、アミノ酸の分子レベルについても安定同位体比の解析を進めている。これにより、精米・牛肉・マグロといったあらゆる食品の産地特定やブランド保護が可能となり、多元素安定同位体比の質量分析法として画期的である。