生活文化・   メタボリックシンドロームの原因物質の糖を高感度・迅速に測定
 エネルギー

 糖は人間にとって大切なエネルギー源であるが、メタボリックシンドロームの原因とされている。従来、食品中の糖分析には主に液体クロマトグラフィー/示差屈折検出器が用いられてきたが、この示差屈折検出器は感度が低く、糖含有量を抑えた製品については測定できないことがあった。本研究では、この示差屈折検出器の代わりに荷電化粒子検出器を用いた新たな分析法を開発した。荷電化粒子検出器は、糖成分を球状微粒子にした後、プラスに帯電させ、その電荷量から糖成分量を求める方法である。これにより、従来の感度を3〜20倍向上させ、また、分析時間も短縮することができた。

【P2070】      荷電化粒子検出器を用いた飲料中糖分析の検討

(アサヒビール)○田村昌義・北川泰・望月直樹
[連絡者:望月直樹、電話:0297-46-1827]

 糖は我々にとって大切なエネルギー源であるにも関らず、食生活が豊かになるにつれて、高中性脂肪血症や糖尿病などの生活習慣病の危険を高める肥満症、或いはそれらの合併症であるメタボリックシンドロームの原因とされている。昨今の健康志向の高まりもあり、糖の摂取を抑制する意識が高まってきている。このような背景から糖含有量を抑えた製品を手にする消費者が増えている。

 従来、食品中の糖分析には、「液体クロマトグラフィー/示差屈折検出器(LC/RI)」が用いられている。糖は他の汎用検出器(紫外・可視吸光光度計(UV-VIS)、質量分析計(MS))では測定し難いため、これまでRI検出器を用いる方法が主流であった。この検出器は様々な物質が測定できる一方で、感度が低く低濃度まで測定できないため、糖含有量を抑えた製品については測定できない可能性がある。

 そこで本研究ではRI検出器に代わり、荷電化粒子検出器(CAD)を用いた、飲料中の糖の分析法を開発することとした。CADは近年開発され、欧米では医薬品分析などにおいて利用が拡大している検出器である。これは、分析成分を球状微粒子とし、コロナ電極により荷電化されたプラスの窒素イオンと衝突させることで分析成分粒子をプラスに帯電させ、この電荷量を電流値として測定することを原理としている。そのため、化学構造や性質に関わらず不揮発性成分の検出が可能となり、UV吸収を持たない糖類等の検出に適している。

 開発した手法を用い飲料中の糖含有量を測定したところ、RI検出器と比較して3〜20倍程度感度の向上が認められ、高感度分析が可能であった。また、分析時間を短縮することができ、これまでより短時間での測定・分析が可能となった。

 筆者らは、糖の代わりに用いられる甘味成分(甘味料)の分析方法も開発しており、本検討内容と共に、「飲料中甘味成分(人工・天然甘味料、糖類)の高感度分析法の検討」として第93回日本食品衛生学会学術講演会(5/10、11:銀座ブロッサム)においても報告した。