生活文化・     注射のいらない新しい健康診断に道
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呼気や皮膚ガスなどの生体ガスの一部成分が生活習慣に相関して放出されることがわかってきた。生体ガスは、注射などの痛みを伴わない採取が可能なため、子供やお年寄りに対して優しい医療につながる。今回、生活習慣の一つである喫煙-禁煙行動が生体ガスに及ぼす影響について検討した。その結果、呼気中の一酸化炭素の変動が大きく、禁煙により急激に減少して二日間でほぼ非喫煙者レベルまで低下し、喫煙再開後は12時間以内に急激に上昇し、ほぼ禁煙前のレベルに戻ることがわかった。更に研究を進めることで簡便な診断・カウンセリングが可能となると期待される。

【F2017】      喫煙と禁煙行動の生体ガス動態に及ぼす影響

(国立循環器病セ)○野瀬和利・下内章人
[連絡者:下内章人,電話:06-6833-5012(内線2430)]

 呼気やヒト皮膚表面から放出されるガス(皮膚ガス)などの生体ガスは,痛みを伴わずに採取することができるため,子供やお年寄りに対しても安心して適用できるという利点がある.一方,病気は体内代謝だけではなく,飲酒や喫煙習慣,薬物や食物摂取などによる日常生活行動と密接に関連しているため,病気のスクリーニングや診断などに生体ガスを用いることを考えると生活習慣に関する検討が必要となる.そこで我々は禁煙と喫煙行動が生体ガスに及ぼす影響について検討した.
 健康成人の喫煙者において,2日間の禁煙期間中の呼気と皮膚ガスを数時間おきに採取し,続いて喫煙を再開して同様に2日間のガス成分の変動を検討した.その結果,呼気中一酸化炭素(CO)の変動が最も顕著であり,禁煙により急激に減少し2日間でほぼ非喫煙者レベルまで低下した.喫煙再開後は12時間以内で急激に増加し,ほぼ禁煙前のレベルまで上昇した.他の成分に関しては本実験のように比較的短い期間では急激には変動せず,またその変動に一貫性がみられなかったため,さらに長期間の調査を検討する必要がある.しかしながら,食事摂取などの様々な生活行動を伴うにも関わらず呼気と皮膚ガスとが有意に相関している成分もあることがわかった.
 呼気や皮膚ガスなどの生体ガスに関する研究が進めば,簡便に病気の診断を行ったり,健康状態をモニタリングすることができるようになるであろう.