◆新素材・         痛みのない血糖値の連続モニター
 先端技術◆

 血糖値を連続的に監視することは糖尿病を始め各種疾患の管理に重要であるが、現状は針を皮膚に突き刺したり、電極パッドを貼り付けたりと侵襲的な計測が多く問題がある。本研究では、グルコース及び電解質濃度変化に応じて色が変化する複数のセンサーを組み込んだ微小オプティカルセンサーアレイを開発した。これを皮下に埋め込んでおけば、体外からCCDカメラで読み取ることで非侵襲的な測定が可能になる。カリウムイオン、pHおよびグルコースの測定が一度に可能な、幅 0.5 mm、長さ 2 mm、厚さ 160 μm のセンサーアレイを試作したところ、溶液中での可逆的な応答に成功した。 

【H2005】    皮下埋め込み型微小オプティカルセンサーアレイの開発研究

(富山大院理工・ケースウエスタンリザーブ大1) ○遠田浩司・Miklos Gratzl1 
[連絡者:遠田浩司,電話:076-445-6864]

 近年,血糖値を連続的にモニターできるグルコースモニターが開発されている。これらは針状のセンサーを皮膚に突き刺すことにより血糖値を測定するもので,皮膚を貫くワイヤーのために感染症を引き起こし,またセンサー表面に繊維皮膜を生じるため,三日以上の連続使用はできない。そこで本研究では,グルコース及び電解質濃度変化に応じて色(吸収スペクトル)が変化する複数のオプティカルセンサーを一つの基板に組み込んだ微小オプティカルセンサーアレイの開発を試みた。このセンサーアレイを皮膚直下に完全に埋め込み,間質組織液中のグルコースや電解質濃度変化の情報を基板上の各センサーの可逆的な色変化の情報として対外におかれたカラーCCDカメラで上皮層を介して読み取ることにより非侵襲的に血糖値や電解質濃度を連続的にモニターすることが可能になるものと考えられる(図1)。
 試作したセンサーアレイは幅0.5mm,長さ2mm厚さ160mmの透明なプラスチック基板に極小型のオプティカルカリウムイオン,pH,グルコースセンシングカプセル及び光学参照カプセルを組み込むことにより構成されている。イオンセンシングカプセルは対応するイオン濃度に応じて色が変わるセンシングビーズを,グルコースセンシングカプセルはpHセンシングビーズとグルコース酸化酵素(G0X)固定化ビーズを混ぜ合わせ,これをハイドロゲル薄膜で覆うことにより構築した。グルコースはこの薄膜を透過しGOXにより酸化されてグルコン酸を生じることにより局所的pHが変化し,センシングカプセルの色変化をもたらす。図2にシャーレ中に置かれたセンサーアレイのグルコースに対する応答を示す。グルコースセンサーの色はグルコース濃度の増加に伴ってオレンジ色から青色ヘと変化し(図2a-f),グルコースを含まない溶液でセンサーを洗うともとのオレンジ色に可逆的に戻る(図2g)。
 このシステムが開発できれば、皮膚を貫くワイヤー等が無いのでセンサー挿入時の傷が癒えた後は感染の恐れが無く,しかも極小型なのでセンサー装着時の患者の負担の少ない診断分析法となる。