生活文化・     温 泉 の 臭 い も そ の 場 で 極 微 量 ま で 分 析
 エネルギー
 環境汚染の一つである悪臭発生は,不快なだけでなく危険なこともあり,その迅速なオンサイト分析は重要である.本研究では,硫黄系の悪臭成分(硫化水素,メチルメルカプタン,硫化メチル等)に的を絞り,非常に鋭敏な人の嗅覚に匹敵する,ppb〜サブppbレベルの測定が可能な現場分析装置を開発した.悪臭成分は保存や運搬によって消失するため,オンサイト分析が欠かせない.マイクロチャネルによるガスの捕集と蛍光検出を組み合わせた装置や,固体捕集管からの逐次脱離による化学発光検出を組み合わせた装置について検討し,それらシステムの構築に成功した.

【C2012】          悪 臭 の オ ン サ イ ト 分 析
      
−マイクロガス分析システム及び分離カラム・フレームを用いない高感度ポータブルガスクロマトグラフ−

(熊本大学) Md. Abul Kalam Azad・大平慎一・○戸田 敬
[連絡者:戸田 敬,電話:096-342-3389

 土壌汚染・水質汚濁の進んだ環境や,動物の飼育・畑の肥料など様々なところで悪臭が発生する。人の口から発する成分は人間関係にも影響を及ぼす。悪臭成分は不快をもたらすだけでなく,その危険性も高く硫化水素等による死亡事故も起こっている。私たちは,硫黄系の悪臭成分(硫化水素H2S,メチルメルカプタンCH3SH,硫化メチルDMS等)に的を絞り,現場で測定する手法や装置の開発を行っている。人の嗅覚はこれらの成分に対し非常にするどい。従って,悪臭成分の分析ではppb(十億分の一)やsub-ppb(百億分の一)レベルの測定が要求される。ところが,悪臭成分の正確な測定は意外と難しい。現場で容器に空気試料を採り,実験室に持ち帰った後,特殊な低温トラップなどを行いガスクロマトグラフに導入する。ガスクロマトグラフで各成分が分離されその濃度を定量する。操作が煩雑であるばかりか,硫黄系悪臭成分は吸着性・分解性が高く,保存や運搬,ときには分析の際にも消失していく。このようなロスを無くすため,その場で直ちに分析することが望まれる。もちろん,ユーザー側にとっても,その場で測定結果の出る分析が理想である。そのような観点に立ち,高感度でポータブルな分析システムの構築に取り組んでいる。ひとつはマイクロガス分析システム(μGAS,マイクロガスと呼んでいる)で,マイクロチャネルによるガスの捕集とマイクロ蛍光検出器を組み合わせたものである。マイクロチャネル中の吸収反応溶液に捕集することで高い捕集濃縮効果を得,低濃度のH2Sをリアルタイムに測定することが可能となった。もうひとつは,常温で固体捕集管にトラップした目的ガスを,捕集管の温度を上げ脱利しやすい成分から順次放出させる。これをオゾンと反応させると化学発光と言われる光を発し,この光測定により硫黄悪臭成分の分離・分析が可能となった。数mに及ぶ分離カラムが不要で,検出にも燃焼ガスが不要なため現場への携帯も可能となった。