生活文化・     二種類ある皮膚の老化度を区別してはかる
 エネルギー

 皮膚の老化は,主に生理的な加齢(生理老化)と紫外線等の光(光老化)とによる老化が組み合わさって起こっていることが知られている.その老化度や原因を解明する方法としては,バイオプシーなどによる侵襲的な組織抽出法がある.今回,近赤外分光法を用いて,皮膚をそのままの状態で測定できる新たな手法を開発した.この方法は,皮膚への透過性が高く,生体の化学変化を捉えることができるため,老化の原因である生理老化と光老化を区別することが可能で,ヒト皮膚の老化度測定への応用が期待でき,今後の老化度の新しい評価法になりうると思われる.

【E2004】     近赤外分光法による皮膚老化度の非侵襲評価

(ポーラ化成工業(株)・関西学院大学理工学部
○山川 弓香・土屋 順子・岸 真理絵・宮前 裕太・尾崎 幸洋
[連絡者:
山川 弓香、電話:045-826-7222

 同一人物において、左右の顔で肌の状態が全く異なる、タクシードライバーの非常に興味深い写真をここに示す。より光に当たっていた左顔は、右顔に比べて、紫外線に曝されており、皮膚としての老化が進行していることがわかる。
 私たちの皮膚の老化は、生理的な加齢(生理老化)と紫外線による光老化が組み合わさったもので、 日常の化粧品などによるお手入れや紫外線暴露量の差により、個々の老化状態は異なってくる。肌の老化は、表面ではたるみやシワなどとして現れる。一方、肌の内部でも、コラーゲンやヒアルロン酸等の質や量の変化が生じているが、生理老化と光老化が引き起こす変化はそれぞれ異なると言われている。すなわち、肌表面ではシワと一言で言い表す現象であっても、肌の内部では、異なる変化が絡み合っているのである。生理老化と光老化により引き起こされた皮膚内部の変化を、簡単・非侵襲で区別することは、それぞれの老化進行状態がわかり、さらに顧客ごとに適切な改善方法を提案することができるため非常に重要である。しかし、現状では組織摘出法であるバイオプシー等の侵襲法以外に老化原因を区別する方法は存在しない。
 
そこで、本研究では、皮膚への透過性が高く、生体化学変化を捉えることが期待される近赤外分光法を用い、老化の原因を非侵襲で区別できる評価法の検討を行った。検討の結果、我々は,何の前処理もせず,肌をそのままの状態で測定するだけで,生理老化と光老化という2種類の老化状態を把握できる新しい評価法の可能性を見出した.今後は、本評価法の精度を高め、人への有用な評価法としたいと考えている。

Photo-Aging:Taxi Driver, South of France,

life-long habit to drive with open car window

S ? FW-Journal, 127. Jahrgang, p20 7-2001