◆新素材・    消 毒 薬 の 濃 度 を 目 視 で 簡 便 に 測 る
 先端技術◆

 医療現場で使われる消毒剤の濃度を簡便に目視で測定する方法が開発された。ヒビテン液の名称で知られ医療機関でもよく使われるグルコン酸クロルヘキシジン濃度を、振動応答性のゾル-ゲル現象を利用した抽出システムを使い、高感度、高精度に測定した。この方法は固液系と液液系を上手に組み合わせた手法であり、水相から1分間振り混ぜて色をみるという迅速、簡便なその場測定法である。この方法は適正濃度の確認、誤使用の防止、廃棄による浄水施設や水環境への影響を防ぐためのチェック体制の構築に役立つと考えられる。

【E1020】   振動応答性チキソトロピーゲルによる医療用消毒剤の簡易色彩計測
       

(神奈川工科大工) ○斎藤貴・山田丈志
[連絡者:斎藤貴,電話:046-291-3113]

 消毒剤は医療現場や家庭で広く利用され,特に医療分野では日常的に多量に消費されている。これを背景に医療現場で医療に携わる医師や看護者への長期に渡る薬剤暴露は,米国でケミカルスープとも呼ばれ話題になった経緯がある。また誤使用による点滴や経口製剤への混入事故も報告され,また消毒剤廃水の浄化施設や環境水域への流入により生態系への影響も懸念される。それゆえ使用現場でのチェック体勢が重要となり社会的要求も高まりつつあるが,これに対応するには簡易迅速な計測システムが必要となる。本研究はグルコン酸クロルヘキシジンCHG(外皮用殺菌消毒剤)を対象に,その薬剤の存在と濃度を色として視覚的に捕らえ,目視で簡易計測できる方法を検討した。なお水中からの消毒剤の抽出において,振動応答性チキソトロピーゲルを用い振動の有無によるゾル-ゲル現象を抽出システムに組み込んだ。この抽出系では,化学物質の水相から有機相への抽出時は抽出効率の高い液液抽出系,抽出前後は相分離の容易な固液系となる従来の両抽出法の利点を併せ持つ抽出法を達成できる。

 外的な振動エネルギーにより分子間でゾル−ゲル相転移を生じるアミド系ゲルに試料水溶液を加え,緩衝溶液(pH8.5),テトラブロモフェノールフタレインエチルエステル塩(TBPE)を加える。1分間振り混ぜると液状となったゲル相に消毒剤が会合体(CHG:TBPE=1:2)の形で抽出され,消毒剤濃度に応じて青く着色する。この色をもとにCHG 濃度とゲル色の関係を表した色彩表を参照し目視により概算的な濃度を知ることができ,さらに目視計測したゲルを吸光光度分析することで精度の高い濃度の測定(測定濃度範囲 0.21〜5.4mg/L)にも対応でき,状況に応じた計測ができることが明らかとなった。