◆新素材・    DNA を 金 に 貼 り 付 け て 新 し い セ ン サ ー を つ く る
 先端技術◆

 DNAは生命の遺伝を司る重要な高分子であり,二重らせん構造を有しているが,これを材料としてさまざまな用途に利用しようとする研究が進んでいる。本研究では,DNAを用いて特定の遺伝子や発ガン性物質を検出できるようなセンサーを開発するため,新たなDNAの固定法を開発した。金の表面に一定の方向に吸着する性質をもつ有機分子(ソラレン化合物)を利用して,これをまず金に吸着させ,さらにDNAの二重らせんの「はしご」の部分を有機分子に結合させた。その結果,DNA分子を金表面にしっかりと固定することに成功した。

【C2003】   DNAコンジュゲート形成を利用したDNA二重らせんの配向固定化と
        修飾電極のバイオセンサ応用

(九大院工)○中野幸二・松永英士・佐井啓介
[連絡者:中野幸二,電話:092-642-4128]

 DNAの化学が自然科学のさまざまな局面で重要になっている。ゲノム計画に象徴されるような、生命の遺伝現象を司る鍵物質としてだけではない。DNA二重らせんを使ってナノスケールの構造体をつくるとか、DNAの電気伝導性を利用して分子配線するとか、さらにはDNAコンピューター等々、本来の働きとは全く関連のない研究が話題をさらっている。私たちは「DNA=材料」ととらえ、バイオセンサーに応用する研究を行ってきた。例えば一本鎖の状態にあるDNAは、それ自身と相補的な関係にあるDNA鎖を認識し、互いに結合して二重鎖を形成する。二重鎖になったDNAには、特定のタンパク質が取り付いたり、あるいは天然・非天然を問わず平面的な構造の分子が埋め込まれるようにして結合したりする。これらは、DNAが遺伝子として働く基本のプロセスであり、ひいては薬剤の薬効や発ガン・変異原性などとも密接に関連がある。そこでDNAを使ってバイオセンサーを作れば、特定の遺伝子を検出したり、あるいは薬剤や発ガン性物質を調べたりすることが可能になるだろう。
 この目的には、センサー素子にDNAを固定して使いやすくする必要がある。私たちは、1992年に世界に先駆けてDNAの固定化法を開発した。これは、DNA本来の反応を損なうことのないよう、DNAの「はし」の部分だけを足掛かりにする方法であった。その後の研究で、私たちは、DNA分子が互いに絡み合ってネットワーク状の高次構造をつくる現象を見つけた。これは「DNA配線」としても興味深いと考え、図の新しい固定化法の研究を行った。