◆新素材・    ナ ノ テ ク に 応 用 可 能 な 超 微 粒 子 温 度 計 の 開 発
 先端技術◆

 温度の変化を蛍光放射により計測する蛍光性分子温度計は、原理的に1分子でも測温が可能である。熱を感じて構造の変わる特殊な高分子とその構造変化を感じて発光する低分子化合物を組み合わせて6℃の温度変化で12倍以上の蛍光強度変化が得られる温度計を開発した。化合物の構造を変えて18℃〜54℃まで測温が可能である。この蛍光性分子を基に直径200ナノメートル程度の球状微粒子を開発した。この微粒子温度計により今まで測温が出来なかった細胞やICの温度測定の可能性が開かれた。

【D2016】       蛍光性分子温度計の創製

(奈良女大理1・クィーンズ大化2) ○内山 聖一1,2・河合 成美1・松村 有里子1・A. P. de Silva2
岩井 薫1[連絡者: 内山 聖一(現東大薬) 電話: 03 - 5841 - 4731]

 温度は私達の生活にとって最も重要な環境要素の一つであり、それゆえ温度を測るために体温計をはじめとする様々な温度計が開発されている。中でも、温度の変化を蛍光の放射によって知らせる「蛍光性分子温度計」は、原理的にわずか一分子でも測温が可能であることから、微小空間の温度測定に特に有効であると考えられてきた。我々の研究グループは、熱を感じて構造の変わる特殊な高分子と、その構造変化を感じて発光する低分子化合物を組み合わせることにより、わずか6?C(31?C→37?C)の温度上昇で12倍以上も強く光る蛍光性分子温度計の開発に成功した。さらに化学構造を変えることによって、測定可能な温度を18?C~54?Cの範囲で自由に変えることにも成功している。これらの結果に示される感度や応用性の高さは、蛍光性分子温度計の実用化に必要不可欠であると思われる。
 これまでに我々のグループは、単純な鎖状の高分子構造をもつ蛍光性分子温度計を報告していたが、今回新たに、同様の機能を示しかつ耐久性に優れた温度計として、直径200ナノメートル(2×10?7m)程度の球状微粒子(右図:体積はサッカーボールの約100京 = 1,000,000兆分の1)を開発した。
 以上のように、我々が創製してきた蛍光性分子温度計は、用途に合わせて適用可能温度や形状を自由に選択できるとても小さな温度計である。将来これらの長所を生かして、既存の温度計では測温が困難であった微小空間、すなわち細胞やIC(半導体集積回路)の温度測定に挑戦していきたい。

私達は・・・          蛍光性分子温度計は・・・
温度計の機能を示す
球状微粒子
  4℃     40℃      4℃   40℃