◆医療・生命◆    現 場 診 断 に 一 歩 近 づ い た 超 小 型 血 液 検 査 装 置

 マイクロ化学チップによる分析法は、試料の微量化、自動化、多目的平行処理、システムの小型化のメリットが期待され、さまざまな分野で応用が検討されている。今回、医療でニーズが高まっている現場診断(POCT)用の小型マイクロチップ診断システムを開発した。本装置は、高感度検出が可能な熱レンズ・センシングユニット、微量送液機構、反応温度制御機能を備えたシステムである。本装置を用いて血清中の総コレステロール濃度を測定した結果、検査で要求される濃度範囲で直線性が認められ、実用化が可能となった。さらに現在、多項目同時測定の検討を行っている。

【P1023】       小型多項目対応マイクロチップ分析装置の開発と血液生化学測定

(MCPT1・東大院工2)○岡山 直樹1・小山 竜二1・北岡 光夫1・北森 武彦2
[連絡者:小山 竜二、電話:044−820−8033]

 マイクロ化学チップによる分析はサンプル・試薬の微量化、前処理から測定までの自動化、多項目分析並行処理、システム小型化などのメリットが期待され、さまざまな分野での応用が検討されている。本研究では、医療でニーズが高まっている現場診断(ポイント・オブ・ケア・テスト(POCT))用の小型マイクロチップ診断システムの実現を目指して、多項目分析が可能なマイクロチップ分析装置の試作を行い、その装置を用いて血液生化学測定が実現できた。
試作装置はマイクロ空間で高感度検出が可能な熱レンズ・センシングユニット、マイクロ化学チップの微細流路内でサンプルと試薬を流しながら混ぜて反応させるための微量液送り機構、反応温度制御のための温調機能を備えている。装置の主要機能はA4サイズ(300x202x215mm)のユニット(写真)に収めることができた。熱レンズ・センシングユニットは旭化成(株)の開発技術に基づくもので、マイクロ流路に対する自動位置合わせと複数の測定点をスキャンする機能を持つ。これにより、ディスポーザブルチップの使用、1枚のチップ上での複数の検査項目の同時測定が可能となっている。マイクロチップ内の液送りは液圧送液制御システムという技術を開発し、簡単で小さな機構で多項目反応の複雑な流れを定量的に制御できるようにした。

 本装置を用いて、血清中の総コレステロール濃度測定を行った。現在の検査で使われている反応と同じ酵素反応(コレステロール・オキシダーゼ法)をプラスチック(PMMA)製のマイクロチップ内で行い、青色に発色した反応液の濃度を熱レンズ検出法で測定した。その結果、熱レンズ信号値は、検査で要求される範囲内の総コレステロール濃度に対して、直線関係を示し、本システムにより血清中総コレステロールの定量測定が可能であることが示された。同様の酵素反応で測定できる他の血液生化学検査項目と合わせて、3項目同時測定についても現在検討中である。このようなシステムが完成すれば、診療所等の現場ですぐに検査を行うことができるようになり、医療の向上に貢献することができると期待される。