◆医療・生命◆     血 液 採 取 の い ら な い 血 糖 値 測 定 装 置 の 開 発

 糖尿病患者にとって採血不要の無痛血糖値測定は長年の夢であった。今回、近赤外光を用いた非侵襲血糖分析装置を開発した。この測定方法は、手、腕や指を測定部位にそのままおくだけで迅速に測定可能である。本装置を用いて、15分又は30分間隔で7時間にわたり血糖値を測定した。延べ人数10人について従来の侵襲的な血糖測定法(酵素法)の値と比較したところ、相関係数0.82を得た。今後、さらにデータ数の蓄積や手法の改良を行うことで、無痛血糖値測定法として実用化できるものと期待される。

【P2010】       近赤外拡散反射装置を用いた非侵襲血糖値分析

(日本分光)○神ちひろ 赤尾賢一 川崎雅嗣
[連絡者:神ちひろ、電話:0426-46-4109]

 糖尿病患者にとって採血不要の無痛血糖値測定は長年の夢である。なかでも血糖値の常時モニタリングが必要な患者は痛みの伴う極小針で採血し酵素法による測定は限界がある。近年、種々の測定方法や測定機器が開発されているが、まだ一般的に普及されたという報告はない。今回はより簡便な操作性を目的として近赤外光を利用した非侵襲血糖値分析用拡散反射装置を開発した。本研究は手や腕、指等の測定部位をそのまま試料台に置くだけで迅速に測定可能な分析システムを用いて測定したスペクトルと侵襲型(観血型)による血糖値との相関についてPLSを用い検討した。実験は VIR-9600型ポータブル近赤外分光装置に開発した血糖値分析用拡散反射測定装置を接続して腕や手の定位置の測定を行った。午前中から昼食を挟んで7時間程度の経過測定を15分または30分間隔で行い、スペクトル測定の直後に指先または耳たぶから極小針で採血し酵素法による血糖値を測定した。測定対象者は延べ人数10人で検討した。また、測定部位や個人別、全員での相関等、試料側の条件変更によるPLS解析結果も合わせて検討し、非侵襲型血糖値分析への最適条件を抽出した。

 従来、石英ファイバーによる測定も行われているが光ファイバーを使用した場合、皮膚に接触させる方向や負荷がスペクトルのピーク強度やベースラインの曲がりに影響することが問題となっている。今回、開発したシステムは腕や手、爪等をのせるだけで分析ができる。PLSを用いた手や腕のスペクトルと観血法の相関係数は最適条件の基で0.82程度であった。今後はさらにデータの蓄積や測定手法の改善を行うことで無痛血糖値分析への道が開けると考えている。
図 血糖値の測定(スペクトル測定)