生活文化・    ガ ン コ な 衣 類 汚 れ の 原 因 を 分 析
 エネルギー

 襟や袖口などのしつこい汚れは微量であるにも関わらずやっかいな物質である。このような汚れは皮脂や汗由来の有機物が繊維の上で酸化・劣化して生成するといわれる。汚れの原因である脂質酸化物・劣化物を分析することにより効果的に汚れを落とす洗浄剤の開発ができる。本研究では液体クロマトグラフと質量分析計を組み合わせた装置を用い、汚れの成分の分析を行った。その結果、劣化生成物の種類は非常に多く完全な構造はわからないが、可視域に強い吸収を持つ複数の物質とその分子量情報を得ることができた。洗浄剤開発の基礎データとして期待される。

【P1012】      LC-PDA-ESI/MS法による脂質酸化物・劣化物の分析

(ライオン株式会社)○久永晃資・山田 郁・足立邦明
[連絡者:久永晃資,電話:03-3616-3512]

 衣類の汚れは、様々な界面活性剤を配合した衣料用洗剤によりほとんど除去できる。しかしながら、襟や袖口などのしつこい汚れは、微量にも関わらず洗浄効果に疑問を感じさせる厄介な物質である。このような汚れは、皮脂や汗由来の有機物が繊維上で酸化・劣化して生成すると考えられている。また、お風呂場やキッチンなどの住居の頑固な汚れも、蓄積した皮脂や油脂が酸化・劣化して生成すると言われている。汚れは少しずつ蓄積していくため、洗浄して清潔にすることが快適な生活を送るうえで重要である。しつこい汚れの原因である脂質酸化物・劣化物の詳細な分析により、効果的に汚れを除去する洗浄剤の開発が可能になる。脂質の酸化・劣化は古くから医療・食品分野で研究され、様々な分析方法が提案されてきたが、化学発光や蛍光誘導体化法など煩雑な前処理を必要とする手法が主流であった。近年、質量分析技術の革新により様々な物質の分析が容易になっている。本報では順相モード液体クロマトグラフとフォトダイオードアレイ検出器(PDA)及びエレクトロスプレーイオン化質量分析計(ESI/MS)を直列接続し、汚れを分離後に着色の確認と分子量情報を同時に得る方法を検討した。そして、分離溶媒と質量分析溶媒の相溶性の悪さを噴霧混合することで解決し、再現性の良い分析に成功した。分析の結果、指標脂質のトリオレインは50℃の空気中という穏和な条件下で15日経過することで50%近くが酸化され、ハイドロパーオキシドやエポキシドに変化しており、エピジオキシドや重合などの後続酸化反応も観測できた。また、スクアレンや脂肪酸の共存系や、実際の衣類汚れに関しても同条件で分析できた。観測された酸化物・劣化物の種類は非常に多く完全な構造解明には至っていないが、出発物質よりも可視領域に強い吸収を持つ複数の化学種の分子量情報を得ることができ、洗浄剤開発の基礎データとして期待できる。