◆医療・生命◆ 細胞の長時間の生命現象を短時間に観察できる
        新たなビデオ顕微システムを製作
 細胞分裂,組織分化,再生などの長時間にわたる細胞の時系列生命現象を短時間に観察できるシステムを開発した。本システムは,顕微鏡に時間軸を圧縮できるタイムラプスビデオを組み合わせ,さらに複数のサンプルを同時に観察できるように1台の顕微鏡の中に複数の対物レンズと光源とインキュベータを設けて,同一培養条件下で複数の細胞の動態様子を比較観察できるようにした。このシステムにより,創傷治癒機構のような長期にわたる生命現象の解析が効率よく出来るため,幅広い分野での貢献が期待できる。
【D2020】    長時間生命現象解析のための新ビデオ顕微システムの開発

(広島大院医歯薬)○川内健嗣・入谷陽子・正岡宏美・平川靖之・升島 努
[連絡者:升島 努、電話:082-257-5301]

 細胞分裂、組織分化、再生などの生命現象の多くは、長時間にわたってゆっくり変化しているので我々の眼では捉えにくい現象である。その長時間の現象を開花過程の撮影のように時間圧縮した映像で捉えることで、我々は今まで知り得なかった生命活動として認識することができ、映像から多くの情報を得ることができる。その方法として、時間軸を圧縮できるタイムラプスビデオと顕微鏡を組み合わせたタイムラプスビデオ顕微法を用いた。これにより、長時間の生命現象解析が可能となった。
 一方、培養細胞は日によって状態が変わるので、細胞の動きを比較する場合、培養条件を揃える必要がある。しかし、従来の顕微鏡では1台に対して1サンプルの観察しかできないので、同じ日の細胞同士の比較ができない。そこで、本研究では同じ日の細胞を長時間、同時に追跡できる新タイムラプスビデオ顕微鏡の開発を行った。(図)1台の顕微鏡の中に対物レンズ、光源を複数とインキュベータを設けることで、長時間一定培養条件で複数のサンプルを同時に観察することができる。これにより、従来困難であった同じ日の細胞同士の比較実験が可能になり、細胞動態解析が明確になる。
この開発の成果として、創傷治癒機構のような長期にわたる生命現象の解析がより効率よく行われ、基礎研究から臨床応用まで幅広い分野に大きく貢献できることが考えられる。この顕微鏡は今夏から大学発ベンチャーHUMANIXから発売される予定である。