◆ 生活文化・      厄介者のクラゲも栄養満点の肥料に
 エネルギー◆
 窒素やリンの陸上からの多量の流入によりクラゲが大量発生することで、クラゲは漁業や発電などに被害をもたらす厄介者として扱われ、これまで回収された後,焼却や埋め立てにより処理されてきた。そこで循環型社会への転換という観点から,このクラゲを生物資源として再利用できないかを検討した。クラゲを分析すると,窒素,リン,カリウム,マグネシウム,カルシウムといった肥料の五要素のすべてを豊富に含み,これを肥料として野菜の生長促進を観察したところ、特にミズクラゲとアカクラゲは、チンゲンサイの栽培には有効に働いていることが分かった。
【2P63】   クラゲの肥料としての潜在的有用性に関する基礎的研究

  (神戸商船大・日本分析専門1・キソー化学工業(株)2)
   ○福士惠一・石尾暢宏1・
辻本淳一2・濱武輝伸・曽我部博弥・鳥屋賢一・二宮月美
   [連絡者:福士惠一,E-mail: fukushi@cc.kshosen.ac.jp]

 最近,我が国や世界各地の沿岸海域ではクラゲが大量発生し,漁獲量の減少や漁網の切断などの漁業被害をもたらしている.また,火力発電所等ではクラゲが冷却水取水口を詰まらせ,冷却水不足を起こすため,出力低下を余儀なくされる事態も生じている.クラゲの大量発生の原因として,窒素,リンなどが陸上から多量に流れ込むことにより,クラゲの餌となる動物プランクトンが増えたことなどが指摘されているが,不明な点も多いようである.発電所ではクラゲを機械的に回収し,産業廃棄物として焼却あるいは埋め立て処理している.
 我々は,厄介者扱いされているこれらクラゲも貴重な生物資源の一つであり,有効利用することが循環型社会にふさわしい処理法であると考えた.有効利用法として過去にミズクラゲの食品化についての研究例があるが,あまり良い結果は得られなかったようである.そこで,クラゲを野菜等の肥料として有効利用できないかと思い,以下のような実験を行った.上記被害をもたらすクラゲは主としてミズクラゲ(及びアカクラゲ)であり,これらを本学周辺海域で採取した.クラゲは簡単に液体状になるのでこれを試料とし,各種成分を調べたところ,クラゲは肥料の五要素であるマグネシウム,カルシウム,窒素,リン,カリウムを多く含むことがわかった.さらに,プランターを用い,クラゲを肥料として用土に混ぜて野菜(チンゲンサイ,エダマメ,シソ)を栽培し,その生育状況を観察するとともに収穫された野菜の重さを測定した.その結果,ミズクラゲ,アカクラゲとも特にチンゲンサイに対して生長促進効果が大きく,クラゲは肥料として有効利用できる可能性を持っていることがわかった.