◆ 生活文化・      有明海ノリの色落ちの原因を探る
 エネルギー◆
 2000年暮に有明海で大発生したノリの色落ちは生産に大打撃を与えた。その原因を各種色素量及び微量元素量の変動という観点から追求した。その結果、色落ちノリは正常ノリに比べて、クロロフィル、光合成色素タンパク質のフィコビリン、更にFe(鉄)、Mn(マンガン)、Zn(亜鉛)などの微量元素が著しく減少していることが明らかになり、これらの欠乏が色素合成並びに色素タンパク質合成を阻害しているのではないかと推測された。
【2P31】  有明海ノリの色落ちに関する分析化学的研究

  (長崎大環境・長崎大水産1・長崎大環境保全セ2)○張 経華・長濱敏子・浦志隆行・藤田雄二1・石橋康弘2・山崎素直
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 現在我が国のノリの生産量は約100億枚、そのうち約4割が有明海で生産される。2000年暮に有明海で大発生したノリの色落ちは生産に大打撃を与えた。閉鎖系水域である有明海では江戸時代から始まった干拓による潮位の減少、造成畑地からの肥料・農薬の流入、排水由来の富栄養化などにより赤潮が頻発するようになり、それによる栄養塩(N,P)の欠乏が色落ちの原因といわれている。しかし、栄養塩の欠乏だけでは色落ちの原因を説明できないことから、本研究では正常ノリと色落ちノリにおける各種色素量および微量元素の変動を測定した。その結果、色落ちノリではクロロフィルの顕著な減少の他に、光合成色素タンパク質フィコビリンの減少、さらに、Fe, Mn, Znなどの微量必須元素の顕著な減少が観測された。陸上の高等植物で見られる葉のクロロシス(白化)は、アルカリ土壌におけるFeを中心とする微量元素の吸収阻害によるクロロフィル合成阻害が原因であるといわれている。ノリの色素タンパクは陸上植物と異なる独自のタンパクであるが、ノリにおいても微量元素欠乏による色素合成ならびに色素タンパク質合成の阻害が色落ちの直接原因ではないかと推察された。