◆環境・防災◆  公定法と相関が高いダイオキシン類迅速測定法を開発
                  −現場でのモニターが可能に−

 酵素免疫測定法(ELISA法)により、ダイオキシン類を常時監視可能とする測定系を開発した。開発した測定系では、4時間で多検体が一度に測定でき、環境試料の排出規制値レベルの測定が可能な測定感度を有し、公定法との相関性も排ガス、飛灰、土壌とも高い相関性を示し、競合用抗原と標準物質にダイオキシン類を使用しないため、作業時の安全性も確保できる。更に簡易な排ガス採取法、抽出、クリーンアップ工程の迅速化など、サンプリング、前処理の簡素化により全測定時間の短縮化が期待される。
【2P36】   免疫化学測定法を用いたダイオキシン類迅速測定法の開発

  (東洋紡績(株)敦賀バイオ研究所1、(株)タクマ 環境・エネルギー研究所2 ) ○西井重明1、藤平弘樹2、松井一裕1、中谷康平2
   [連絡者:西井重明、E-mail:shigeaki_nishii@bio.toyobo.co.jp]

 2002年12月から本格的に実施されたダイオキシン類対策特別措置法により、地方自治体や事業者に年1回以上のダイオキシン類の測定が義務付けられている。ダイオキシン類の排出量を常時監視する目的においては、測定頻度を上げることが望ましいが、現行の公定法 (HRGC/HRMS法) による測定を頻繁に行うことは分析費用の面からも困難である。そこで我々は、簡易かつ安価にダイオキシン類を測定することを目的として、酵素免疫測定法 (ELISA法:Enzyme-Linked Immuno-Sorbent Assay) による迅速かつ高感度なダイオキシン類測定法の開発を試みた。本研究では、ダイオキシン類毒性等量(TEQ)の指標物質として期待される5〜6塩素化ダイオキシン類に高い反応性を有する抗ダイオキシン抗体と、毒性係数を持たない2,4,5-Trichloro phenol(2,4,5-TCP)誘導体を競合免疫反応用の抗原に用い、ダイオキシン測定系の構築を行ったところ、以下の特徴を有する測定系の開発に成功した。

1. 多検体の同時測定が可能 多検体が一度に測定でき、測定時間は約4時間と短時間。
2. 高い測定感度 検出感度は五塩素化ジベンゾフランで0.15ng/ml以下であり、環境試料の排出規制値レベルの測定が十分可能。
3. 公定法との高い相関性 公定法との相関性は、排ガスR2=0.98、飛灰R2=0.99、土壌R2=0.97と高い相関性を有する。
4. 作業時の安全性 競合用抗原及び標準物質にダイオキシン類を使用しないため、作業時の安全性に優れている。

 我々が開発したELISA法は安価で多検体処理が可能であるため、燃焼施設の日常管理や汚染された土壌のスクリーニングに適したものである。また、焼却施設の性能評価試験や排ガス処理装置の性能確認試験の場合等、早急にダイオキシン類濃度が知りたい場合にも本測定法の適用が有効である。
今後は、簡易な排ガス採取法や、抽出、クリーンアップ工程の迅速化の検討を行い、サンプリングから測定結果が出るまでのトータル測定時間を更に短縮する予定である。