◆環境・防災◆  超小型で簡単・迅速な水質分析をめざして
 環境水や排水の水質規制に見られるように、水の成分分析はあらゆる分野で頻繁に行われている。現在は分析対象成分によって定量法や分析操作が異なったりしているが、多成分を同時に簡単かつ迅速に処理できる方法を開発した。1枚のマイクロプレート上に、ある成分に選択的に反応する指示薬を目的成分の種類・数に応じて固定する。そこに測定したい水を注入して、含まれている成分濃度に応じた色の変化を測定する方法である。15分程度で7成分を定性・定量することができ、様々な分野での利用が期待される。
【1P33】   新規水質分析用マルチオプトードプレートの開発

  (慶大理1・ETH2・KAST3)○石原才子1・Daniel Citterio2・山田幸司1・鈴木孝治1,3
  [連絡者:鈴木孝治,E-mail:suzuki@applc.keio.ac.jp]

 現在,環境水や排水の測定を始め,農業や食品などあらゆる分野において,水の成分分析が行われている.それぞれのニーズ応じ,様々な用途に適した水質分析装置が開発されているが,成分ごとの定量法の違いや煩雑な分析操作の必要性などのため,対象となる多成分の分析には多大な時間と手間を必要としている.そこで本研究では,「多成分」を「同時」に「簡単」に,かつ「迅速」に分析できるマルチオプトードプレートの設計と実用化に向けた検討を行った.
 新しく開発したデバイスでは,ある分析成分に対し,高選択的に応答する吸光指示薬と必要な添加試薬が水溶性マトリックスに包括されている(Fig. 1).ここにサンプル水を注ぐと,試薬がマトリックスと共に溶け出し,含まれる成分濃度に応じてその色が変化する.何種類かの応答マトリックスを一枚のマイクロプレート上に並べ,それぞれの色の変化(吸光度の変化)をプレートリーダーにて同時に測定することで,目的とする多成分の同時分析に成功した.

 今回,分析対象は河川水とした.作製したマトリックスのうち,Ca2+,Mg2+,F-,BO33- は水道水への利用,NO2-,PO43-,K+ は農業用水利用,そしてpHは全般的な水質の検査の際に求められる範囲での分析が可能であることが確かめられた.実サンプルの測定では,Ca2+,Mg2+,NO2-,PO43-,K+ の定量,およびF-,BO33-の定性分析を15分以内という短時間で行うことができた.操作手順は,ろ過→サンプル注入→撹拌→測定 という非常にシンプルなステップに統一されており,簡便化が図られている.マルチオプトードプレートは,市販簡易水質分析装置と同等の性能とそれを上回る簡便性と迅速さを持ち合わせており,河川水に限らず,幅広い分野における水の成分分析に応用ができるため,様々な場面での活躍が期待できる.