◆医療・生命◆   細菌やウイルスからの生体防御機構の解明に光明

>生体防御機構の一つである好中球のスーパーオキシド(O2−)産生と,これに関与する細胞内Ca2+濃度の変化は,これまで別個に測定されてきたため両者の関連についての詳細は不明であった。Ca2+濃度測定用蛍光指示薬を取り込ませた細胞を用いO2−検出用化学発光試薬を外液に加え,励起光を断続的に照射し蛍光と化学発光を交互に測定し積算することにより,蛍光・化学発光を同時に測定する装置を作製した。この方法を用いて好中球様細胞におけるCa2+濃度とO2−産生の極大には時間的なずれがあることを見いだした。

蛍光・化学発光を用いた細胞内カルシウムイオン・スーパーオキシド同時測定装置の開発

(浜松ホトニクス(株)1・日本たばこ産業(株)2)○數村公子1・岡崎茂俊1・平松光夫1・石橋要2 
[連絡者:數村公子]

好中球は白血球の一種であり,人体に細菌やウィルス等が侵入した際に活性酸素のスーパーオキシド(O2-)を産生してこれらを殺傷することが知られており,生体防御において重要な役割を担っている。この好中球のO2-産生には,細胞内におけるカルシウムイオン(Ca2+)濃度が関与していると考えられているが,その役割については不明な点が多い。これまで好中球におけるO2-産生と細胞内Ca2+濃度の変化は個別に測定されていたため,両者の関連の詳細を検討することは困難であった。
本研究は,O2-産生および細胞内Ca2+濃度変化を同時に測定する方法・装置の開発を行ったものである。 THP-1細胞を好中球様に分化させ,Ca2+濃度測定用蛍光指示薬Fluo-3を取り込ませたものを測定用細胞とした。また外液にO2-検出用化学発光試薬CLAを加えた。この試料にf-MLPを添加して細胞を刺激した際に産生されるO2-を化学発光(385nm)にて,また細胞内Ca2+濃度を蛍光(523nm)にて観測した。測定は図に示すように,励起光を断続的(1kHz)に照射し,励起光が遮断されている時に化学発光を(図上),また励起光が照射されている時に蛍光を観測(図下)することにより両者を時間的に分離し,500回積算して蛍光・化学発光を同時に測定する装置を自作して行った。その結果,好中球様細胞におけるO2-産生と細胞内Ca2+濃度の変化の同時測定が可能となり,細胞内Ca2+濃度の極大とO2-産生の極大に数秒の時間差があることが判明した。(本研究は生研機構「新事業創出研究開発事業」により行った。)