◆環境・防災◆    シックハウス症候群の原因物質を迅速に測定

近年シックハウス症候群が大きな社会問題となっている。この原因物質として建材中に含まれるホルムアルデヒドが最も問題視されている。これまでのホルムアルデヒドの測定法は,結果を得るまでに長時間を要し,精密な分析装置と高度な技術が必要などの問題があった。ホルムアルデヒド濃度をその場で測定するため,これと特異的に反応する試薬を開発した。本試薬をろ紙に染み込ませ,ホルムアルデヒドと反応させると濃度に応じて黄色に発色する試験紙を作製した。これにより10分程度で厚生労働省の定めたガイドラインの指針値(0.08 ppm)内か否かを判定できた。

色変化によりホルムアルデヒドだけを検出する新規化合物の開発

(KAST地域結集1・慶應大理工2) ○鈴木祥夫1・鈴木孝治1,2
[連絡者:鈴木孝治]

近年、「シックハウス症候群」と呼ばれる住宅内装材の化学物質が原因とされる目や喉の痛み、あるいはアトピー性皮膚炎の悪化といった健康被害が問題にされている。中でもホルムアルデヒドは、シックハウス症候群の原因物質として最も問題視されている。ホルムアルデヒドは、樹脂や高分子合成の原料として大量に使用されると共に、それらの製造工程や製品から大気中に放出され、例えば、新築住宅、リフォーム後の住宅で許容範囲をはるかに超える高濃度のホルムアルデヒドが検出された事例がある。また、ホルムアルデヒドは水に溶けやすいため、降水の酸性化を促進させる物質としても指摘されている。このため、室内空気中および大気中のホルムアルデヒド濃度を正確に見積もる必要がある。
現在利用されている室内空気中の化学物質を測定する方法として、標準的測定法、検知管法、蒸気拡散式分析法、化学発光法、電気化学分析法などが挙げられる。これらの方法は厳密な測定結果は得られるものの、i) 精密な分析装置と高度な技術が必要、ii) 結果検出まで長時間必要、iii) 測定試薬が環境に有害、iv) 妨害物質による悪影響、という問題点がある。さらに、消費者あるいは住宅業者の間では、現場で、すぐ、手軽に知りたいという要求が強い。
そこで本研究では、ホルムアルデヒドと特異的に反応する試薬を開発した。試薬はエナミノン体と呼ばれる化学物質で、粉末の試薬を水に溶かし無色透明の液体か、濾紙に染み込ませた試験紙として検査に用いる。試薬の特徴として、1) 試薬とホルムアルデヒドを室温で混ぜるだけ、2) 結果は無色→黄色へという目視で可能、3) 測定時間は最短で10分、が挙げられる。また、ホルムアルデヒドの濃度によって変色後の濃淡が変わるため、色見本と比べることで濃度を知ることが出来る。以上のことから、今回開発した試薬は厚生労働省の定めたガイドラインの指針値(0.08 ppm)内か否かという検査を、現場で、すぐ、手軽に知りたい、というニーズに十分対応できる性能を持っている。