◆新素材・    現場測定可能なマイクロ分離・検出デバイスの開発
 先端技術◆
 試料の前処理から検出までの操作を1枚の基板上で行うマイクロ化学分析の研究が盛んに行われている。しかし,前処理,検出などを含むシステム全体では依然大型ものになっている。本研究では,分離・検出系を含めたシステムの小型化に成功した。すなわち,ポリエステルマイクロチップの作製時に青色発光ダイオードの光源と検出用光ファイバーをマイクロチャンネルに埋め込み複合化したマイクロチップデバイスの開発である。蛍光ラベルしたアミノ酸の分離・検出ができ,従来のものよりも小型で再現性のよい検出が行えることが分かった。
【2P15】      ポリエステルを用いたマイクロチップのハイブリッド化

    (都立大・院・工)○邱菁杪,徐偉,下坂琢哉,内山一美,保母敏行
    [連絡者:内山一美]

 近年、試料の前処理、反応、分離、検出など一連の化学操作を数センチ角のマイクロチップ上で行うマイクロ化学分析システムが急速に発展してきた.これにより超小型の可搬性システムの構築も可能である.またマイクロ化によって使用する試薬などは極微量で済むため,環境にやさしい省エネルギー分析法ともなりえる.現在マイクロチップ自身の高機能化・小型化が益々なされ,いろいろなタイプのものが製作されている.しかし試料の前処理や検出システムを含めた分析システムは依然として大きな装置を必要とし,現場に持っていって分析できるものはほとんどなかった.著者らはこれまでポリエステル製マイクロチャンネルチップの開発に成功し,高機能な分離を報告してきた.今回このマイクロチャンネル作成時に必要な分析基材を組み込み,ハイブリッド化することに成功した.即ちマイクロチップの材料ポリエステルが重合する際に光源,光ファイバーなどを配置し一挙にハイブリッドチップを作製した.マイクロチャンネル流路は幅約150μm,深さ45μm,長さ約200mmとした.蛍光励起光源として青色発光ダイオード(最大発光波長476n、半値幅25nm)を用い,発光面をマイクロチャンネル直上(約100μm≧)に設置し、これに垂直に同じくチャンネル直近に光ファイバーを置き蛍光を導き、励起光をフィルタリング後光電子増倍管で検出した。製作したチップを図1に示した。これを用いて蛍光標識したアミノ酸をミセル動電クロマトグラフィーにより分離・検出した.光源のLEDと検出光取り出し用光ファイバーは同時にチップの中に埋め込まれているので、光軸合わせなどの操作が不要で、試料を導入するだけで、分析することができた。励起光源のLD化によりさらに高感度検出が可能であり現在検討中である。