◆新素材・     脳 内 神 経 伝 達 物 質 の オ ン ラ イ ン 計 測 法
 先端技術◆
 脳の基本機能単位である神経細胞間では神経伝達物質を介して情報伝達を行っている。グルタミン酸は興奮性神経伝達物質の一つで,学習や記憶,アルツハイマー病などに関与すると言われている。本研究では,流路内にグルタミン酸酸化酵素を修飾したものと修飾しないバイオセンサーを並列に集積化して,グルタミン酸の濃度変化のみに応答するオンライン型微小フローシステムを開発した。これを用いて,それぞれの信号の差をとることによりノイズをキャンセルすることができ,ラット培養大脳皮質細胞からのグルタミン酸を連続測定できた。
【2G01】  マイクロ化マルチチャンネルを有する差分検出型フローシステムを用いた、
      ラット培養大脳皮質細胞からのグルタミン酸連続測定

      (NTTアドバンステクノロジ1・NTT生活環境研2・NTT物性基礎研3
       ○栗田僚二1・田部井久男1・林 勝義2・鳥光恵一3・丹羽 修2
      [連絡者:丹羽 修]

 近年、脳神経系の機能解明を目的とした研究が、個体レベルから、組織、細胞、分子レベルに至るまで幅広く研究されている。脳という極めて複雑な構造と機能を持つ器官も、基本機能単位である神経細胞間では、神経伝達物質と呼ばれる比較的単純な化学物質を介して情報伝達を行っている。興奮性神経伝達物質の一つであるグルタミン酸は、長期増強・減少、学習・記憶に深く関わっているだけでなく、アルツハイマー病、ハンチントン舞踏病等の疾患への関与も報告されている。グルタミン酸の測定には、従来液体クロマトグラフィが用いられてきたが、細胞活動に伴う濃度変化を測定するため、近年はバイオセンサを用いた測定手法が開拓されつつある。しかしながら様々なバイオセンサが報告される中で、バイオセンサの応答が目的とする物質の濃度変化に伴うものであるのか確認するのは極めて困難であった。今回我々は、流路内にグルタミン酸酸化酵素を修飾したセンサと、これを修飾しないセンサを並列に集積化し、センサ応答の差分を測定することにより、グルタミン酸の濃度変化のみを選択的に検出可能なオンライン型微少量グルタミン酸連続フローシステムを開発した。本システムを用いることにより、薬物添加時等のノイズをキャンセルすることが出来、神経細胞から放出されるグルタミン酸のみを選択的に検出することが出来た