◆生活文化・    化 粧 品 の 成 分 名 表 示 と 含 有 量 を は っ き り と
 エネルギー◆ 
 化粧品の新製品は,国内だけで毎年1万種類も創出されている。化粧品の種類や機能が増すにつれ,防腐・殺菌剤などの添加物が原因と思われる皮膚のトラブルも増えてきている。皮膚の健康管理や安全性の観点から,少なくとも表示指定成分や毒性が危惧される化合物に対しては,現行の成分名表示だけに留まらず含有量の表示も行われるべきであろう。本研究では,国内外9社のファンデーション中に含まれる防腐・殺菌剤を分析し,製品間における成分の種類,量の差異や安全性を調査した。
【2A03】   化粧品中のパラベンおよびイソプロピルメチルフェノールの定量

        (明治大理工・東京家政大家政1) ○阿部とも子・吉原富子1・石井幹太
          〔連絡者:石井幹太〕

 近年、男性も化粧に興味を持ち始めるなど化粧指向は広範になり、新製品が日本だけでも毎年約1万種創出されている。
化粧品が高度化するに伴い化粧品添加物も多岐に亘り、殺菌・防腐剤、こうヒスタミン剤等が使用されている。化粧品は多種多様であることから、化粧品に対する皮膚へのトラブルも後を絶たなくなっている。化粧品添加物で安全上問題がある成分(皮膚毒性、発ガン性等)を表示指定成分と呼び、化粧品に表示する義務があるが、それ以外は表示しなくても良い。例えば、微生物による化粧品の変臭、変質、カビ発生などの品質低下防止のために防腐・殺菌剤が添加されている。パラオキシ安息香酸エステル類(パラベン:表示指定成分:PB)やイソプロピルメチルフェノール(チモール:非表示指定成分:TM)などが代表例である。製品中には成分名は表示されても含有量表示がない場合も多い。化粧品成分が複雑になってきた現在、皮膚の健康管理や安全性の観点から、少なくとも表示指定成分や毒性などが危惧される化合物に関しては成分名表示にのみ留まらず、含有量も表示すべきと考える。
 本研究では、国内外9社のファンデーション中の防腐・殺菌剤含有量を測定し、製品間の差異や安全性を調査した。分析法は高性能液体クロマトグラフィーを用いた。成分含有量は製品100g中のJ単位で表示した。各種防腐・殺菌剤の含有量はすべて120mg以下であったが、メーカー間では大きな差異があった。p‐ヒドロキシ安息香酸エチル(PBの一種)は数社の製品にのみ検出されたが、他のPB成分は全てのメーカーで検知された。使用状況の差異は防腐性能が低いことによる。PB量が少量のため表示のないメーカーもあったが、規約を遵主することが望まれる。TMは全てのメーカーが使用しているが、非表示指定化合物であるため表示をしていないメーカーもあった。TMは各社とも50mg以上含有されており、TMの皮膚毒性を考慮すると、表示指定はもとより、今後の安全性に関する監視も必要と思われる。PBは若干のメーカーを除き、総量的には大差はないが、構成成分は各社とも製品に特徴を持たせるために大きな違いが認められた。メーカーによっては防腐剤を複数組み合わせることで製品に特徴を持たせていることも検知できた。化粧品の購入に臨んでは、メーカー間に大きな違いが認められるので、ブランド名や流行などに左右されず、使用している資材や添加物を吟味して、使用者の特性にあった製品を選ぶことが好ましい。防腐・殺菌剤などは成分名の表示に留まらず、成分含有量も同様に詳細に表示すべきと思われる。