◆環境・防災◆    P C B の 分 析 は こ の 方 法 で 安 心
 底質中のPCBを従来の方法で分析すると,迅速性や精確性の点で,多少劣るところがある。新しく開発した高速溶媒抽出法を用いると,これらの点が克服できる。すなわち,本法では約30分程度でPCBが抽出でき,抽出効率も非常に優れ,更には使用する有機溶媒の量も少なくできる利点がある。又,抽出の再現性も良好であることから,精密な分析や標準物質の値付け等の分析法として,今後大いに期待される。
【1P56】    高速溶媒抽出法を用いた底質中のPCBの測定

         (物質研)○鎗田 孝・仲間純子・高津章子 
          [連絡者:鎗田 孝]

  ポリ塩化ビフェニル(PCB)は難分解性で高蓄積性の化合物であり、環境中に放出されたPCBが我々の健康に深刻な被害を及ぼすことが知られている。そのため、環境中のPCB濃度については様々な規制が設けられており、化学分析によるモニタリングが行われている。しかし、実際のPCB分析では、分析機関によって測定値が異なるケースが多くあり、精密な分析法の開発が求められている。(挿し絵参照)
  そこで、本研究では、近年注目されている高速溶媒抽出法(ASE)を利用した、底質中のPCBの精密な分析方法を開発した。ASEは高温高圧状態の有機溶媒を抽出溶媒に利用した抽出法であり、ソックスレー抽出法などの従来の抽出法と比べ精密な抽出が期待できるだけではなく、使用する有機溶媒量が少ない「環境にやさしい」抽出法としても知られている。
  本研究で開発したPCB分析法は、ASEによる底質からのPCBの抽出操作と、自動化を指向したクリーンアップ操作、及び高分解能質量分析による定量操作とを組み合わせた分析法である。このうち、ASEについては、ソックスレー抽出法との比較や、ヨーロッパ連合標準局から配布されているPCB底質標準物質(BCR536)の分析結果から、従来の抽出法より抽出効率が高いことを確認した。また、抽出に要した時間は30分であり、他法に比べ迅速な抽出が可能であることも示された。さらに、分析法自体の再現性も検討し、良好な結果(0.3-3.3%, n=4)を得た。
  以上のように、本研究で開発した底質中のPCB分析法は従来の分析法に比べ精密な分析方法であり、例えば標準物質の値付けなど、精密な分析が必要とされる分野での適用が期待される。