◆新素材・      フ ィ ル ム の 色 で ア ン モ ニ ア を 測 定
 先端技術◆ 
 生活環境におけるアンモニアは,主にタンパク質の分解から生じている。体内においては毒性を呈し,肝機能の障害や精神障害を引き起こすことが知られている。又,河川水等の環境でも悪臭や水質汚染を発生させるので,測定・監視が求められている。本研究では,体液あるいは河川水等の中のアンモニアを,簡便にその場で測定できるフィルム状のセンサーを新たに開発した。開発したフィルムには,アンモニアの濃度で赤―黄―緑―青と色変化する機能性の分子を結合させてあるので,だれもが目視で容易に測定できるようになっており,多方面の利用が期待される。
【1P29】    目視定量型イオンセンシングフィルムオプトードの開発
  
    (慶大理工1・KAST・科技団・東亜ディケーケー4)○遠田利明1・岡部浩昭1,2,3・遠藤亜紀1
     Daniel Citterio1,3・鈴木孝治1,2・加藤明彦4・相川克明4・本橋亮一4
         [連絡先:鈴木孝治]

 人間の体において、口から摂取されたタンパク質は、主に大腸内の細菌によって分解され、アミノ酸を経てアンモニアを生ずる。このアンモニアは人間にとって毒性が非常に強く、肝機能の低下、腸内におけるNH3産出の増加により血中アンモニア濃度は増加し、肝硬変や劇炎肝症などの重度の精神障害を引き起こすことが知られている。また、河川などの水中のアンモニアは、動物のし尿などに含まれるタンパク質の分解に由来し、水質汚染の指標となっている他、不快な臭いの原因となり生活環境を損なうおそれのある悪臭物質でもある。このように人間と係わりの深いアンモニアを測定する方法はいくつか知られているが、様々な試薬や測定機器を使うなどの簡便さに欠ける。そこで本研究では、その場で誰でも簡単に測定でき、かつ迅速にアンモニアの濃度を色変化により判定できる材料(機能性分子)及び目視定量型イオンセンシングフィルムオプトード(変色フィルム)の開発を行なった。
 開発した変色フィルムは、高分子膜中にアンモニウムと高選択的に結合できる分子(TD19C6)、赤〜黄と変色する色素及び黄〜緑〜青へと変色する2種類の色素(KD-M13及びKD-C4)を包括し、これを透明なプラスチック板上にコーティングすることにより作成した。このセンシングフィルムをアンモニウムイオン溶液に浸すと、濃度が増加するにつれて赤〜黄〜緑〜青と多色の色相が観察される。しかも開発したフィルムは、10秒ほどでアンモニウムイオン及びアンモニアガスに応答する。
 今後、この変色フィルムを用いる事により、その場で迅速かつ簡便に色変化でアンモニアを測定することができ、精神障害における疾患や環境汚染などの早期発見、予防などに応用できると期待される。