◆新素材・  ガスの連続モニタリングによって鉄鋼製造プロセスを監視する
 先端技術◆
 鉄鋼製造など,各種の金属精錬プロセスでは,鉱石や原材料から発生する水分の管理・制御が重要な役割を果たす。しかし,これまで各種反応プロセスにおける水分発生挙動を詳細に検討した例は少ない。製鉄原料である鉄鉱石や石炭から発生する水分について,その発生挙動をモニタリングする技術を検討した。フーリエ変換赤外分光光度計による水分の連続モニタリングを基本とするシステムを考え,検出に際しての様々な妨害要因を検討した。二酸化炭素や他のガス種を同時にモニタリングすることで,精錬プロセスの総合的な反応解析に寄与できる。
【1B01】        ガスモニタリングによる鉄鋼原料の反応解析

           (新日鐵・先端技研) ○西藤将之 齋藤公児 藤岡裕二
            [連絡者:西藤将之]

 製鉄原料である鉄鉱石や石炭にはいくつかの水分発生因子があり、後の各種高温プロセスにおいて、これらが重要な働きをすることが知られている。しかし、各過程における水分発生挙動やその詳細な機構については明らかになっていない。そこで、本研究では各種鉱物中の水分発生の解析を行うため、新たに水分の発生挙動をモニタリングする方法を検討した。
 本研究に使用したシステムは,水分発生部,水分検出部からなる。水分発生部で鉱物試料を石英製のセル内に設置し、窒素ガス雰囲気で管状の電気炉によりこれを加熱した。発生した水分は水分検出部であるフーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)に連続的に窒素ガスで導入し、発生する水分を連続モニタリングした。水分をモニタリングする際、途中のセルや配管に水分が付着し、良好な水分発生挙動を捕らえられないという場合がある。そこで、水分量及びその形態が既知の硫酸銅の五水和物を用いて、本システムによる水分モニタリングの最適条件を検討し、その正確性を検証した。その結果、硫酸銅五水和物中の吸着水および5つある結晶水の脱離温度に対応して水分発生のピークが明確に捕らえられ、これらの面積によりそれぞれの発生量を定量することが可能となった。
 さらに、石炭や鉄鉱石に含まれる水分発生因子の一例としてカオリナイト及びα-水酸化鉄の脱水挙動を調べた。その結果、カオリナイトは400〜550℃、α-水酸化鉄は200〜350℃にそれぞれ水分の発生ピークが得られた。各々の発生温度差から、これら二種類の鉄鋼原料中の水分発生因子の分離評価が可能であり、その量もピーク面積を求めることにより測定できる。
 以上のように、本法によれば、水分の発生を定量的にモニタリングできることから、反応時の水分発生挙動から石炭や鉄鉱石などの鉄鋼原料に存在する水分発生因子を特定することができ、その発生機構を解明することが可能となる。また、鉄鋼原料からは水分以外にも二酸化炭素や他のガス種も発生することが知られており、これらのガスも同時にモニタリングできることから、各工程における総合的な反応解析を行うことができる。