◆生活文化・   産 業 廃 棄 物 焼 却 灰 の 中 に は 有 用 な 資 源 が 沢 山
エネルギー◆  
 産業廃棄物中の元素は,様々な元素と関連しながら,複雑な挙動をとる。我が国では廃棄物の中間処理には焼却処理が行われている。焼却灰中の主成分元素(%)から超微量成分元素(ppmレベル)の幅広い濃度範囲の50数元素を定量し,多元素間の相関関係を見出し,化学的特徴付けを行なった。産業廃棄物焼却灰の大きな特徴としては,親銅元素(銀,カドミウム,銅,インジウム,鉛,アンチモン,スズ,亜鉛など)が地殻中より高濃度に含まれていることが分かり,焼却灰は再利用可能な有用資源であることが示唆された。
【1A08】     ICP-AES/ICP-MSによる産業廃棄物焼却灰の多元素相関解析

  (名大廃棄物処理施設・名大院工1)○藤森英治・岩田聖子1・皆本和亮1・浅井勝一・千葉光一・原口紘き1
                                     [連絡者: 藤森英治]

 現代社会における便利で豊かな生活は、様々な工業製品の利用なくしては考えられないものである。そこでは、鉱物資源として種々の元素が大量に採掘・利用され、最終的に廃棄物として環境中に排出されている。その結果、近年では地球規模の元素循環に対して、人間活動の与える影響が無視できないものとなっている。廃棄物中の元素は、様々な元素との相互作用によって複雑な挙動をとることが知られており、廃棄物の環境影響評価、無害化処理、再資源化技術の開発などのためには、主成分元素から超微量成分元素にいたるできるだけ多くの元素について分析を行い、廃棄物の化学的な特性を明らかにすることが必要不可欠である。
わが国では、廃棄物の中間処理法として一般的に焼却処理が用いられていることから、本研究では産業廃棄物焼却灰に注目し、多元素相関解析法を用いて化学的キャラクタリゼーション(特徴付け)を行うことを目的とした。試料はアルカリ融解法により溶液化し、ICP発光分析法(ICP-AES)及びICP質量分析法(ICP-MS)を用いて主成分元素から超微量成分元素の測定を行った。
 本分析法により、産業廃棄物焼却灰中に%からppm (ppm=1 μg/g: 1 g中に100万分の1グラム)レベルで含まれる50数元素について定量値が得られた。産業廃棄物焼却灰の大きな特徴としては、イオウと親和性の大きい親銅元素(Ag, Cd, Cu, In, Pb, Sb, Sn, Znなど)が特に高濃度で含まれることが挙げられる。親銅元素は、地殻中の平均存在度に比べて工業的利用度が高く、産業廃棄物焼却灰の元素存在度には、人間活動による元素の使用が色濃く反映されていた。この結果は、産業廃棄物焼却灰が環境に対して大きな影響を及ぼすものであることを表すだけでなく、有用資源として十分再利用できることを示すものである。
多元素分析で地球を・・きる!!