◆環境・防災◆  生活圏のNOx,SOxの濃度を見張る迅速分析技術
 大気中のNOx濃度は主にディーゼル車の通行量に,又,SOx濃度は燃焼排ガスに関係しており,健康と深い関わりがある。そのため発生源及び居住地域で,これら濃度を随時監視する必要がある。公定法は定点測定であり,高価な設備を必要とする。開発したシステムでは,パッシブサンプラーで大気中のNOxとSOxをろ紙に捕集し,フローインジェクション法により30〜50試料を1時間程度で定量できる。公定法に比べ,迅速・安価で試薬の使用量も数10分の1で済む。又,本システムは病態診断として血清中の鉄や銅イオンの測定にも利用できる
【1A01】       環境汚染物質と生体微量金属の自動分析システムの設計


  (愛知工大工,エフ・アイ・エー機器(株))○手嶋紀雄,樋口慶郎,柳澤亜希子,酒井忠雄
   [連絡者:酒井忠雄]

一般的排ガス中のガス濃度は次のようである。
NOxの排出源:ディーゼル機関 700〜1000 ppm
       重油燃焼に由来  60〜80 ppm
       焼成炉 20〜40 ppm
SOxの排出原:ボイラー燃焼排ガス100〜400 ppm
       ディーゼル機関  90〜130 ppm
従って由来源はかなり限定できる。NOxは暖房用ストーブ,湯沸かし器,ガスコンロなどからも排出される。
NOxとSOxによる大気汚染は気管支炎,喘息を引き起こし,また酸性雨の原因ともなり,継続的に観察・監視する必要がある。
 NOxとSOxの捕集剤
 図1にパッシブサンプラーの構造を示す。径は2×5 cmで道路面から1.5 m高さの随意の場所に設置する。NO2とSO2は,トリエタノールアミンを染みこませたろ紙に捕集される。NOx(NO + NO2)は,NOをNO2に酸化する試薬PTIOとトリエタノールアミンを染みこませたろ紙に捕集される。
 分析システム
 公的機関でモニター用に用いられている装置は定点測定用であり,しかも高価な設備を伴うが,我々が提案しているフローインジェクション分析装置はかなり安く組み上げることができる。また,試薬の消費量は従来の方法と比べ1/10〜1/50で済む。また,サンプル注入にオートサンプラーを用いれば,他の仕事をしながらデータ出力を待てばよい。最近ポータブル形の装置が安価で市販されており,これを用いればon-site(その場で測定)ができる。この方法はサンプリング地点を任意に設定でき,測定も容易なので利便性は極めて高い。
 一方,臨床化学の分野で病態診断の一つとして血清中の鉄イオンや銅イオンの計測が重要視されている。我々の分析システムによれば,安価で迅速な計測が可能である。

図1 パッシブサンプラーの構造.
1:キャップ;
2:ステンレス網;3:NO2及びSO2捕集ろ紙;
4:テフロンリング;5:テフロン板;
6:本体;
7:NOx捕集ろ紙.