◆環境・防災◆   高速でプラスチックの種類を識別してリサイクル
 プラスチックのリサイクルにおける課題は,その種類や用途が多彩で,分別に労力を要することである。現状ではプラスチックの種類の識別は容易ではなく,手作業で識別を行うか,筐体からの部材回収後は破砕されて,低品位プラスチックの原料としてリサイクルされるに過ぎない。本研究では,ラマン分光法により,ベルトコンベア上を連続して移動する廃プラスチックを1秒間に数百個という高速で識別・選別できるシステムを開発した。研究室での測定が主であったラマン分光法を現場に適用したことで,廃プラスチックを高品位の再生原料として利用する道が開けた。 

【P2016】    高速ラマン分光識別によるプラスチックリサイクル

     (近大産業理工・(株)サイム1)○河済博文・土田保雄1・有方和義1・土田大哲1
    
[連絡者:河済博文,電話:0948-22-5655]

  家電リサイクル等の政策的なリサイクルシステムでは,目標となるリサイクル率(再商品化率)が設定されており,実用的でかつ有用な新規のリサイクル方法が強く求められている。プラスチックは金属等と異なり,種類や用途が多く,筐体の分解・取り外しといった部材回収の後は,まとめて破砕され大量のプラスチック片として回収される。これには多種類のプラスチックが混ざっており,低品位プラスチックの原料としてリサイクルするのがやっとである。大量の廃プラスチックの選別には,主に比重が利用されてきた。

一方,プラスチック成分を分光法により識別し,種類別に回収することができれば,高品位の再生原料として利用の拡大が期待される。我々は先に,光熱変換分析により従来技術では困難な黒色プラスチックや高・低密度ポリエチレンの識別技術[1]やプラスチックに適した圧縮梱包装置[2]を開発してきた。今回,研究室での特殊な測定と考えられてきたラマン分光により,破砕プラスチック片を高速(一秒間に数百個),高精度(官能基ピークにより判定)に識別・選別できるシステムを開発した[3]。

[1] 特許公開2005?283497「プラスチックの識別方法および識別装置」
[2] 特許公開2004?181488「廃材圧縮装置」
[3] 地域新規産業創造技術開発費補助金(九州経済局,平成18-19年度)「超高速識別による廃プラスチック資源化システム技術の開発」