◆環境・防災◆   クロレラを使ったバイオセンサで除草剤の毒性を調べる
 クロレラ(藻類細胞),アルギン酸,カーボンナノチューブを用いて藻類インクを作成し,スクリーン印刷技術によりクロレラバイオセンサを作製した。藻類細胞に光を照射すると光合成が起こり酸素が発生する。その酸素を電極上で還元し,電流値として検出することが可能である。また,水溶液中の毒物により光合成が阻害されると電流値が減少するため,複数の除草剤の毒性の強さを4分程度で迅速に測定可能であった。 バイオセンサは,生体細胞や生体組織の毒物に対する応答性を利用しているので,災害や事故などによる突発的な水質汚染の際のモニタリングへの応用が期待される。

【Y1066】    光合成活性測定型藻類細胞バイオセンサによる除草剤の毒性評価

      (東理大理工)○四反田功,高松聡之,板垣昌幸,渡辺邦洋
     
[連絡者:四反田功,電話:04-7124-1501]

 突発的な災害や事故による水質汚染は,現在でも数多く報告されている.このような場合,どのような毒性の物質が流入したのか,毒性がどのくらい強いのかを評価することができれば,汚染源の特定や除去法の決定など,初期対応を迅速に行うことが可能になる.また,原因物質の特定や詳細な分析も行いやすくなる.このため,生体細胞や生体組織の毒物に対する応答を利用して毒性を包括的に評価可能な細胞バイオセンサが重要性を増してきている.
 本研究は,藻類細胞(クロレラ)の光合成活性による酸素発生が毒物によって阻害されることを検知するバイオセンサの開発と作製したバイオセンサによる除草剤の毒性評価を行ったものである.藻類細胞バイオセンサは,藻類細胞,アルギン酸,カーボンナノチューブを用いて調製した藻類インクによって,全工程スクリーン印刷で作製した.スクリーン印刷を用いることで,安価で大量に再現性のよいバイオセンサの作製が可能となった.次に,作製した藻類細胞バイオセンサーを用いて,除草剤の毒性評価を行った.水溶液中で藻類細胞バイオセンサに光を照射することで,藻類細胞は光合成を行う.このときに,光合成によって酸素が生成し細胞外に放出される.この放出された酸素を,電極上で還元することで電流値として検出できる(図1左).次に,水溶液中に毒物を添加する.毒物によって藻類細胞の光合成活性が阻害される.このとき,藻類細胞から放出される酸素量が減少するため,電流値は減少する(図1右).この電流の減少量を見積もることで,複数の除草剤の毒性の強さを4分程度で迅速に評価できた.本研究で開発したバイオセンサは,今後更なる検討により実環境中の水質汚染モニタリングシステムへの応用が期待される.