◆医療・生命◆   NMRを用いたメタボノミクスによって脳卒中を解明する
 生命活動では代謝物の種類や量は絶えず変化している。それゆえ,代謝物の変化が生体の異常を示すこともある。メタボノミクスは,生体の代謝物を網羅的に検出し,そのデータをパターン化して疾患との関係を解明するものである。バイオマーカーの探索や疾患の予防・診断および治療法の開発へ応用でき注目されている。今回,高血圧症ラットと高血圧+脳卒中発症ラットを用いて,NMRによる代謝プロファイルを作成してメタボノミクス解析を行った。その結果,高血圧+脳卒中発症ラット群と高血圧発症ラット群(対照群)との間に,明らかに異なる成分を特定することができた。 

【E2005】      NMR−メタボノミクスによる
         脳卒中易発症高血圧自然発症ラットの代謝プロファイル解析

          (松山大薬)○明楽一己・見留英路・橋本美穂
         [連絡者:明樂一己,電話:089-926-7097]

 生体内では様々な物質が複雑な経路で代謝されて生命活動が営まれているが,健康でない状態では代謝が乱れ,生じる物質(代謝物)の量や種類が変化する。すなわち,代謝物の変化は生体の異常を示し,それを解析すれば原因の解明や治療法の開発に結びつくと考えられる。そのため,近年では代謝物を網羅的に検出して解析する「メタボノミクス」による研究が活発に行われてきている。メタボノミクスでは,個々の生体試料から代謝物を検出したデータをパターン化して代謝プロファイルとし,それらを比較することで生体の異常により変化する代謝物を特定することが可能である。その結果をもとに,生体の異常に関する指標物質(バイオマーカー)の探索や予知・診断への応用および変化が見られた代謝物の代謝経路を考慮することによる原因解明や予防・治療法開発への貢献などが期待される。
 我々はこれまで,メタボノミクスの有用性を示す基礎検討として,正常血圧ラット(WKY)を対照として高血圧自然発症ラット(SHR)および脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)について,代謝物の検出に核磁気共鳴スペクトル(NMR)を用いたメタボノミクスを行い本態性高血圧症に特徴的な代謝変化に関する種々の知見を得てきた。本研究では,脳卒中に特徴的な代謝変化を明らかにする目的で,SHRを対照としてSHRSPについて尿のNMR-メタボノミクスにより代謝プロファイルを比較検討した。その結果,SHR群とSHRSP群は明瞭に識別されることがわかり,詳細な解析により識別に寄与する主な成分を特定することができた。