◆医療・生命◆     活性酸素の抗酸化性の簡易評価法の開発
 活性酸素は,食品の品質を損なうだけでなく,発がん性が懸念されており,活性酸素の発生を抑える新たな抗酸化剤の開発が望まれている。しかし,抗酸化性能を簡単に評価する方法はこれまで知られておらず,煩雑な操作や高価な装置が必要で,評価には時間もかかっていた。本研究では,専門技術や知識を必要としない簡便な方法で,これまでの抗酸化性評価法と同等の精確さをもつ評価法を開発した。すなわち,プレート上に複数の試薬を滴下し,その発色時間や発色の度合を目視で確認する方法である。本法により,食の安全や健康管理に必須な抗酸化剤の開発が促進されるものと思われる。 

【P3058】            抗酸化成分の簡易検出・評価法の開発研究

             (東北大院生命科学) 赤坂 和昭
           [電話:022-717-8804]

 食品中では食品の安全性・品質を大きく損なうことなどから、活性酸素の生成を抑制する抗酸化化合物への注目が高まってきている。活性酸素の標的の一つである脂質の酸化反応は誘導期の後、ラジカル連鎖反応により急激に進行する。この誘導期の長さは系内の抗酸化成分の効力や濃度に依存して延長されることから、抗酸化化合物の効果を、「誘導期の長さ」により評価することができる。
 本研究では、試料(抗酸化剤)溶液に、試薬を含む脂質溶液を加えて放置し、脂質の酸化とともに急激に生成する試薬の酸化生成物(濃いオレンジ色)による発色から、誘導期の長さを求め、試料の抗酸化性を評価する方法について検討した(図1)。試料としてビタミンEであるα- 及びδ-トコフェロールなど8種のフェノール性化合物を用い、これをミクロプレートに一定量ずつとり、プレート上で順次希釈した。これに試薬溶液を加えて、室温で放置し、1時間ごとに写真を撮影すると共に、490nmの吸収を測定した(図2)。抗酸化性は、(1)一定の試料濃度において吸光度が1.0を超えたときの時間、及び(2)3時間後に発色が目視により確認された最大の試料濃度により評価した。脂質過酸化物の生成量測定により抗酸化性を評価した結果と上記?@及び?Aの方法による結果を比較したところ、いずれのも非常に高い相関性を示した。この方法は、多数の試料の抗酸化性を、簡便に評価・スクリーニングすることを可能とするもので、特に目視検出も可能で、装置も必要としないことから、予備的検討や1次スクリーニングに特に有効と考えられる。