◆生活文化・     ホタテ廃貝殻のフッ素除去剤としての有効利用
 エネルギー◆ 

 カニ殻から得たキトサンの例でも知られるように,水産産業廃棄物の利用は,重要かつ社会的関心の高いテーマである。本研究は,年間20万トンにも達するホタテ廃貝殻の有効利用法を提案するものである。廃貝殻を焼成・微粉砕し,化学修飾を施すことにより,高いフッ素吸着能を有する環境浄化剤が開発された。本剤を被処理水に対して1%添加することにより,排水中のフッ素濃度を5分以内で10 ppmレベルから環境基準の0.8 ppm以下へと低減させることができる。本剤からのフッ素の再溶出は見られず,汚染水・土壌中のフッ素固定化にも有望である。

【P3081】 ホタテ廃貝殻を用いた環境浄化剤の開発( 1 )〜 フッ素の選択的除去剤〜

      ( J F E テクノリサーチ( 株)) ○ 永田昌嗣・小桧山四郎・望月正・吉川裕泰
      [ 連絡者: 吉川裕泰東京営業所TEL:03-3510-3258]

北海道におけるホタテ貝の漁獲高は年間約40万トン、多くはむき身で出荷されるため約2 0 万トンの貝殻の大半が水産産業廃棄物となる。近年ではホタテ廃貝殻の再利用等の研究が進みさまざまな商品や環境改良剤等が開発されてきているが依然として多くの廃貝殻が放置されたままである。そこで当社では新たなホタテの廃貝殻の再利用方法として排水中のフッ素濃度を環境基準( 0.8ppm ) 以下まで吸着除去する環境浄化材を開発した。( 商品名: M G F (ミラクルグレイン-F))
 この浄化材は乾燥したホタテの貝殻を焼成し有機物を分解後、200μm 以下に微粉砕し、貝表面に化学処理を施したものである。( 特許3 6 7 2 8 5 5 )この吸着剤を用いてフッ素の吸着能等について種々の条件で調査した結果、一般的な排水(ph4 〜 ph10) に対してph の調整なしで使用が可能であった。また、吸着反応はすみやかであり、処理水に対し重量比1 % の割合で添加し、5分以内にフッ素初期濃度10ppm から環境基準である0.8ppm以下に低減可能であった。なお最適条件下でのフッ素吸着量はM G F 1gあたり2mgである。
 さらに、フッ素吸着後のM G F を環告46号試験によって溶出試験を行ったところ再溶出しないことからフッ素の吸着・除去・固定化が可能である。

本吸着剤は鍍金廃液中のフッ素低減化や洗煙排水中のフッ素吸着、フッ素汚染土壌中のフッ素固定化に有効であった。