◆医療・生命◆ 光で遺伝子操作する新技術の開発

 従来,遺伝子工学をはじめとしたナノバイオロジー技術は主に酵素を用いて行われてきた。このため酵素の持つ至適pHや至適温度の制限があった。そこで酵素を用いることなく光によって遺伝子を操作する技術を新たに開発した。本法は従前の技術よりもハンドリングが容易で,機械化・自動化が容易となり,in vivoでも外部からの操作可能で,ねらった場所にねらったタイミングで操作可能となり,低コスト等の利点がある。DNAチップ上での遺伝子解析に応用したところ,わずか数分の反応時間で高い識別能を示した。酵素を使わない光遺伝子解析法は幅広い分野での応用が期待される。

【?x1049】     光ライゲーションを用いた高感度遺伝子解析法の開発

(北陸先端大マテリアル) ○藤本健造・小笠原慎治
{連絡者:藤本健造、電話:0761-51-1671}

 現在の遺伝子工学、アンチセンス、アンチジーン、DNAコンピューティング法といったナノバイオロジー技術は大部分において酵素の恩恵に預かった技術である。したがって酵素が持つ規約条件(至適pH、至適温度)からくる制限を受けながら技術開発を行っている。そこで、遺伝子操作の「脱酵素化」に取り組み、光応答型遺伝子操作という新しい方法論の開発を行ってきた。核酸塩基を光応答性塩基へと変換することで異なる波長の光照射を行うことで可逆的なDNA同士の光連結が可能であることを見出した。光遺伝子操作は従来の酵素を用いた遺伝子操作と比較して下記の通り利点を多数有しており、革新的な技術のパラダイムシフトを達成できると考えられる。

「光遺伝子操作に基づく新規遺伝子工学の利点」(従来のシステムと比較して)

○ ハンドリングが容易(光を照射するだけ、操作時間も容易)

○ 機械化・自動化が容易(規格化、再現性等の確保)

○ 低コスト(LED光源であれば光源の寿命が平均30,000時間)

○ in vivoでも外部からのリモート操作可能

○ 狙った場所に狙ったタイミングで操作可能

実際に光ライゲーション技術をDNAチップ上での遺伝子解析に応用したところ、僅か数分の反応時間で103-foldという高い識別能を示した。また、変異部位に5パターンの塩基(A, G, C, T, Deletion)を導入し同様の実験を行なったところ、どの塩基に対しても103-foldという高い識別能を示した。この「光を用いた高精度遺伝子解析」については海外からプレス発表を受けており、酵素を使わない光遺伝子解析は幅広い分野での応用が期待される。