◆医療・生命◆ 細胞1個を分析する多機能デバイスの開発

 化学の分野で物質の最小単位が「原子」であれば,生物化学では「細胞」である。これまで,細胞を培養し,その生理学的機能を解析する場合には,細胞の集まりである細胞群を単位に行われてきた。しかし,細胞1つ1つの生理学的機能は必ずしも一致しないことが予想される。そこで,細胞1つ1つを独立したチャンバーに捕獲し,破砕(内容物の解析),培養するマイクロ流体デバイスを開発した。このデバイスを用いれば細胞1個1個を個別に機能解析することができる。近い将来,新しい機能をもった細胞が発見され,医療分野に革新をもたらすかもしれない。

【I1029】  細胞1個のマイクロ流路内での捕獲、破砕、培養デバイスの開発

   (早大科健機構,早大理工1)○山口佳則・荒川貴博1、庄子習一1、武田直也1、枝川義邦
    [連絡者:山口佳則,電話:03-5272-1206]

 細胞1個の内部の成分を測定及び細胞1個から発生する機能を解析するには、培養装置から浮遊化させた細胞の細胞懸濁液から細胞1個を個別に捕獲し、さらに個別に破砕した後、分析システムに導入することのできるシステム、及び生きたままの状態で個々に捕獲された細胞を培養できるシステムが不可欠となる。本研究では、細胞懸濁液から細胞1個を個別に単離、捕獲することを可能にし、加えて、捕獲した単一細胞を個別に破砕、または、個別に培養する多機能を持つ細胞捕獲、破砕、培養デバイスの開発を進めてきた。この細胞1個を個別に捕獲、破砕または培養できる多機能マイクロチップは?浮遊化した多くの細胞混濁液から細胞一個を特定位置に連続的に配列し、?配列された個々の細胞を適当なタイミングで破砕することができる、または?捕獲した細胞1個からいくつかの世代に渡って細胞培養することのできる統合型マイクロチャネル流路システムを持つ。このデバイスを利用して、細胞1個成分のサンプル前処理、細胞1個から発生しうる細胞集団の機能解析などの『細胞1個』の分析のための多機能デバイスとして展開が可能である。