◆生活文化・     蜂蜜中の防腐剤チモールの残留実態を調査
 エネルギー◆ 

 薬品,農薬等の残留試験は食の安心・安全を確保するうえで非常に重要である。チモールは防腐剤として使われるが,またタイムの精油成分でもある。タイムはハーブの一種であり,タイムを蜜元とした蜂蜜も広く知られている。そこで,蜂蜜から有機溶媒を用いてチモールを抽出し,数種のカートリッジを通して精製後,ガスクロマトグラフ質量分析計で定量する分析技術を確立した。この分析技術を用いて,日本を始め,世界各国の10種の蜂蜜についてチモールの分析を行ったところ,3種からチモールが検出された。また,その検出量は最大で3.4 μg/gであった。

【?o2011】        蜂蜜、蜜蝋及び虫体中のチモール分析法

  (財団法人畜産生物科学安全研究所1,日本農薬株式会社2)○松本和雄1,内田一成1,薄井典子1
   小林久人1,青木葉一1,平山紀夫1,坂井厚志2
   
[連絡者:青木葉一,電話:042-762-2775]

 (財)畜産生物科学安全研究所(略称「安全研」)は、農林水産省・厚生労働省共管の公益法人で、動物用医薬品や農薬等の残留性試験及び食品のポジティブリスト制に対応した残留検査を手がけ食の安心、安全に寄与しています。今回、著者らが報告するのは、多くの人々が日常的に食する蜂蜜中のチモールの残留に関するものです。チモールは、防腐剤、殺菌剤として、歯磨き粉、軟膏及び石鹸等に用いられる医薬品で、タイム(タチジャコウソウ)の精油成分です。タイムは南欧地中海沿岸原産の多年生ハーブで、料理の香りや味付けに用いられています。タイムが蜜元の蜂蜜も広く知られています。このようにチモールはあらゆる生活用品や食品に含まれている可能性があり、特に食品については残留の実態調査を行ない評価する事が急務と考えられます。そこで本研究では、まず蜂蜜中のチモールの分析法(蜂蜜から有機溶媒で抽出・数種のカートリッジで精製後、ガスクロマトグラフ質量分析計で定量)を確立し、この方法で様々な蜂蜜について分析し、評価しました。試料としては、市販の蜂蜜(日本、ニュージーランド、ドイツ、イタリア、トルコ及び中国の原産品)で、アカシア、タイム、マヌカ、レンゲ及び蜜元不明な蜂蜜、計10品について調査しました。その結果、3品でチモールを検出し、最大で3.4μg/gが検出されました。一方、当研究所で養蜂し、チモールを投与した蜂蜜、蜜蝋及び虫体中のその残留性についても検討しました。
(写真は養蜂風景です)