◆環境・防災◆     徳島県と秋田県の名水の起源タイプ別分類と評価
 環境問題や健康への意識の高まりにより,名水として知られる天然水への関心は益々増大している。本研究では徳島県と秋田県の名水を,その分析結果に基づいて4つの起源に分類した。徳島県名水は「地下水タイプ」が85%と圧倒的に多く,秋田県名水では「熱水・化石水タイプ」が70%もあり,次いで「海水タイプ」のものが20%あった。徳島県名水は秋田県名水に比べ,硬度およびpHともやや高く,ナトリウムイオンおよび塩化物イオン含有量は少ない傾向にある。各地の名水の分析報告はしばしば見られるが,起源に基づく分類は珍しく,興味深い試みである。

【P3079】       徳島県名水と秋田県名水の水質特性評価

      徳島文理大工・日本水科研1)○吉田知司・谷川浩司・池田早苗1
      [連絡者:吉田知司,電話:087-894-5111]

 日本は水の豊かな国であり全国各地に名水として住民に愛用される水が数多く存在している.一方,地球環境の汚染によりおいしく安心して飲める天然水が少なくなり,おいしい水についての関心が高まっている.水環境の保全と水資源の確保のために,地域に根ざした生活用水の実態を明らかにするのも意義あることと考え,おいしい水で定評のある四国の徳島県と東北地方の秋田県の名水 (地下水・湧水)を集めて水質解析評価を行った.

 本研究では,イオンクロマトグラフ法で溶存イオン濃度を測定し,化学的酸素要求量(COD)とpHを計測した.これらのデータから当研究室開発の水質評価法により名水の水質を評価した.評価にはCOD(値が小さい程きれいな水),硬度(カルシウムとマグネシウム濃度から計算.値が小さい程軟水),pH,およびトリリニアダイアグラム法(溶存イオン濃度から水の起源を4つのタイプに分類)を用いる.

 両県名水の起源分類結果から,徳島県では,典型的な地下水タイプが85.0%と圧倒的に多く,次いで,熱水・化石水タイプが10.0%,停滞地下水タイプが5.0%であった.海水タイプは存在しなかった.秋田県では,熱水・化石水タイプが70.0%と圧倒的に多く,次いで,海水タイプが20.0%,典型的地下水タイプおよび停滞地下水タイプはそれぞれ5.0%であった.徳島県名水は典型的な地下水タイプを中心とし、秋田県名水は熱水・化石水タイプが中心で、徳島県にはなかった海水タイプの名水もあることが分かった.

 名水のCODを比較すると,両県ともに平均値は小さく非常にきれいな水が多かった.特に徳島県ではCOD値0.2ppm以下の水が95%(秋田県は70%)を占め、きれいな水が多いことが分かった.今回の調査で特にきれいな水は、徳島県では「桐の水」,「のぞみの泉」,秋田県では「くわぞたの清水」,「石巻の清水」であった.硬度は,徳島県:9.1〜115.5ppm,平均値67.7ppm,秋田県:10.2〜89.2ppm ,平均値44.4ppmとなり徳島県の硬度が高かった. pHは,徳島県:6.4〜8.3,平均値7.7,秋田県:5.3〜7.7,平均値6.6となり両県ともほぼ中性であるが徳島県に微アルカリ性の水が多かった.今回の調査では両県ともアンモニウムイオンは検出されなかった.徳島県名水は秋田県名水と比べて一般的にミネラル濃度が高くてカルシウムイオン,炭酸水素イオンの含有量が多く,ナトリウムイオン,塩素イオン,硝酸イオンの含有量が少ない傾向にあった.