◆生活文化・     お茶の品質をカテキン類の量から簡単に評価する
 エネルギー◆ 

 お茶の品質は主として味覚や外観によって判別されているが、個人差や経験によるところが多い。一方,その評価のひとつにカテキン類の量から行う方法がある。本研究ではお茶の抽出液に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を添加して、その色の変化を追跡することによりお茶の品質を評価した。すなわち、お茶抽出液は茶中に含まれているカテキンが次亜塩素酸ナトリウム水溶液のアルカリ性により一旦褐色となるが、さらにその漂白作用により退色するため、その色変化からカテキン量が分かる。家庭でも塩素系漂白剤を用いることにより、簡便にお茶の品質を評価することができる。

P3096】 次亜塩素酸ナトリウム水溶液による呈色現象を用いた緑茶葉の簡易品質試験法

      (金沢大院自然1・金沢大理2)○吉野由理1・平山直紀1,2・松本 健1,2
        
[連絡者:平山直紀,電話:076-264-5692]

 お茶は昔から我々の生活に深く根をおろし,嗜好に適う飲み物として愛飲されてきたが,近年,老化防止や肥満予防,虫歯予防,高血圧症などに有効であると言われ,様々な種類の茶に関心が集まっている。茶葉の品質は主として味覚と外観によって判別されているが,味覚にはかなり個人差があり,また外観による判別にはかなりの経験が必要である。これに対し,もし茶葉の品質を客観的に判断できる簡単な方法があれば,生産者と消費者(特に消費者)は手軽に茶葉の品質を調べられると考えられる。
 お茶に水酸化物などを加えてアルカリ性条件にすると褐色に呈色し,この色はさらに漂白剤(酸化剤)を添加すると退色する。そこで,次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)水溶液というアルカリ性でかつ漂白作用を有する薬剤を添加することにより,この色の変化を簡単に追跡できるのではないかと考えた。お茶にNaClO水溶液を添加したときに起きる色変化のプロセスを図に示す。NaClO水溶液を添加していくと,まずその強アルカリ性の性質が優勢に作用し,お茶は褐色となった。さらに添加すると,今度は漂白作用が現れ,色は消えていった。詳しい検討の結果,この色の変化は,お茶に含まれる各種カテキンの分子内にあるカテコール骨格がもたらしたもので,褐色はプロトンの電離放出,退色は褐色種の酸化分解に由来することが確かめられた。
 発色−退色のプロセスに要するNaClO水溶液の量から,お茶に含まれるカテキン類の量を目視で簡易的に評価することができた。家庭にある塩素系漂白剤はNaClOを主成分とするアルカリ性水溶液であることから,これを用いて同様の実験を手軽に行うことも可能である。

図 次亜塩素酸ナトリウム水溶液を添加した際のお茶の色の変化