◆環境・防災◆       家庭の寝室にこもる臭気の解明を図る

 住居空間の臭気は非常に微量であり、この分析のために吸引ポンプ等を備えた大型機器の輸送や操作の煩雑さがあり多くの家庭の臭気を捕集することは困難であった。本研究では、固相マイクロ抽出(SPME)という方法を採用し、大型の装置を必要とせず目的の場所に設置するだけで臭気を捕集し、SPME とガスクロマトグラフィー-質量分析計を組み合わせて分析できる簡便法を開発した。種類の異なる 4 種類の SPME により網羅的に家庭の臭気物質(脂肪酸、アルデヒド、ケトン類、アルコール類)を分析できた。この方法により家庭の寝室に漂う臭気物質の推定が可能となった。

【P1064】      SPME-GC-MSによる住居空間の臭気分析法の開発

           (ライオン) ○埴原鉱行、五十嵐章紀、藤原正美
           [連絡者:埴原鉱行、電話:03-3616-3308]

 住居空間に漂うニオイ(臭気)は非常に微量であり、これを分析するには、一般的に吸引ポンプ等を備えた臭気捕集器により大量の臭気を集める必要がある。しかし、この捕集方法は、装置の輸送や操作に手間がかかるため、多くの家庭で臭気を捕集することは困難である。
一方、最近、シックハウスの原因物質を捕集する器具として、目的の場所に静置するだけで吸引ポンプなどの大掛かりな装置を必要としない捕集器がよく用いられている。中でも、固相マイクロ抽出(SPME)は、臭気を捕集するファイバーの種類が多く繰り返しの使用も可能であり、多くの家庭で同時に臭気を捕集することができる。
 そこで、本研究では、4種類のSPMEとガスクロマトグラフィー-質量分析計(GC-MS)を組み合わせ、より多くの実家庭の寝室にこもるニオイを調査できる臭気分析法の開発を行った。
 検討の結果、4種類の極性の異なるSPMEを家庭内の目的の場所に静置するだけで、住居空間に漂う臭気物質を同時に網羅的に捕集して分析できる簡便な手法を開発することができた。更に、この検討から、8家庭の寝室に存在するニオイの共通臭気成分として、C2-9脂肪酸、C9-10アルデヒド、メチルケトン、C8分岐アルコールを検出した。一般に、住居空間で感じるニオイを生活者は、「老人臭い」「生臭い」「腐敗臭」などと具体的に表現しており、その特徴成分としてノネナール、トリメチルアミン、メチルメルカプタンなどがよく知られている。
 しかし、今回調査した寝室にこもるニオイでは、「もわっとしたニオイ」のような曖昧な表現が多いことから、この臭気の実態は、多数の家庭で共通に検出される右図中の共通臭気成分が空間に漂っているものと考えられる。