◆環境・防災◆  クリーンルーム内の人体ダストを迅速かつ高感度に検出

 半導体や精密機械,医薬品などの製造においては,空気中の塵(ダスト)の混入が大きな問題である。このため,作業はフィルターでダストを取り除いた清浄な空気で満たした「クリーンルーム」内で行われる。しかし,その中で働く人の皮膚や汗,呼気などからもダストが発生することが知られている。これまで,これらのダスト物質の特定には多大なコストや時間がかかった。本研究では,人体ダスト中に含まれるタンパク質と結合して発色する色素を用いることにより,人体ダストを高感度かつ迅速簡便に目視検出できる方法の開発に成功した。

【E3001】      クリーン生産プロセスのための人体ダスト簡易分析

           (東北大院工)森田啓介,磯江準一,○金子恵美子
           [連絡者:金子恵美子,電話:090-7560-5042]

 近年,電器電子産業・精密機械・製薬・食品工業などクリーンな環境を必要とする生産現場が急増し,製品の品質と歩留まり向上のために発塵を防止してクリーン度を維持する技術が重要視されている。微細なダスト物質の中で,特に人体は「動く発塵源」と呼ばれて,皮膚の剥離に由来する人体ダストが各種クリーン生産プロセスに共通の問題となっている。クリーンルーム内で稼働中に部品の補充や装置点検のために人間の出入りは不可欠であり,また,常時人間による作業を必要とする生産現場も少なくない。従来,ダスト物質を特定して発生源を突き止めるためには大型の分析機器が用いられているが,装置およびランニングコストともに高価であり,また熟練したオペレーターによる長時間の操作を必要とする。このような現状の中,現場で迅速簡便にダスト物質を特定できるオンサイト分析法に対するニーズが高まっている。
 我々の研究グループは,これまで臨床,環境,工業分析の各分野において高い感度と優れた特異性を持つ新しい化学分析法の開発に携わってきたが,本研究では,タンパク質と結合する色素ブロモクロロフェノールブルーを用いてクリーンルーム内で生じる微細な人体ダストを鮮明な黄色に染色し,顕微鏡下で迅速簡便に目視検出できる方法を開発した。

        図 人体ダストの現場分析