◆環境・防災◆  自動車内のホルムアルデヒドを全自動で分析

 自動車の内装品などから発生する揮発性有機化合物が人体に与える影響が問題になっている。特に、ホルムアルデヒドはシックハウス症候群の原因物質と考えられており、自動車内の濃度は精度良く迅速に測定する必要がある。しかしながら、これまでの分析法は、煩雑な操作が必要であり、測定の精度にも問題があった。そこで、試料の採取から分析までを全自動で行える装置を開発した。測定部にフローインジェクションシステムを用いることで、再現性の良いデータを迅速に得ることが可能になった。本装置は,自動車屋内環境のモニタリング装置として広く普及するものと期待される。

【J1017】 自動車部品材料から放出される極微量ホルムアルデヒドの全自動分析装置の開発

    (アクア・ラボ・ポリプラスチックス・鳥取大地域)○島田勝久・風間秀幸
     下田徹郎・中野恵文
    [連絡者:島田勝久,電話:042-548-2878]

 自動車室内にはシート,フロアカーペットなどの部品材料並びに接着剤が使われているが,これらの材料から放出されるホルムアルデヒド(HA)などの揮発性有機化合物(VOC)がシックハウス症と同様に問題となっている。現在,体に対するアレルギーを未然に防止するため,原材料に含まれるHA量の基準値が設定され,自動車の室内におけるVOC放散量の測定が行われている。その測定の多くは手分析によるもので,蒸留水分注,加熱処理,冷却,分注,発色試薬(アセチルアセトン)の添加,放置,冷却,分析といった時間を要する行程がある。この操作は非常に煩雑であり,測定の精度も劣っている。そこで,本研究では,検体の前処理からHAの定量に至るまでの工程を完全に自動化した測定装置の開発をめざした。
 本研究で開発した自動測定装置は,分注部,加熱部,冷却部,測定部および計算部から構成されている。分注部は,試料数および分注量を可変できるようにした。加熱部には,循環式ウォーターバスを用いて温度を一定にし,加温による水量の減少を補うため自動給水とした。冷却部には,ペルチェ式ク−ラーを配置し,一定条件下で冷却した。HAの測定はアセチルアセトン吸光法を採用し,測定部には迅速分析が行えるようにフロ−インジェクション(FI)分析装置を用いた。試料をFI装置に吸引する前にはエアーによる攪拌を行い,抽出された試料の均一化を図った。計算部には,各ユニットの制御及び専用データ処理機能を有するソフトを開発した。本装置を用いたHAの検量線は,0.01〜2 ppmの範囲で直線性を示し,検量線の傾きの相対標準偏差(n=3) は1%程度で再現性は満足いくものであった。また,本装置により得られた値は,バッチ法による値と良好な相関関係を示した(r = 0.9986)。バッチ法の操作に比べて本自動測定装置では人為的に行う作業時間を大幅に短縮することができ,また,低濃度領域での誤差が小さくなった。